「美容室を開業したい」という夢を抱いたものの、費用の目途がつかず、断念してしまう人も少なくありません。 今回は、美容室を開業するのにかかる費用と捻出方法について、詳しく見ていきましょう。自己資金が少なくても、憧れの美容室を自分で開業する道はいくつもあります。成功させるためには、時間をかけて準備することが大切です。
本記事は起業コンサルタント®であり、V-Spiritsグループ創業者でもある中野 裕哲様に監修いただきました。ぜひご参考にしてください!
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目次
美容室の開業費用はどれくらいかかるの?
これから美容室を開業しようと考えている人は、まず開業費用がいくらぐらいかかるのかを調べることが重要です。開業する場所や美容サロンの規模によって、かかる費用は違ってきます。 どのぐらいの大きさの美容室なら自分でも開業できるのか、小さい美容室なら資金的に開業が可能なのかどうか、目途を立てることも大切ですね。 ここでは、美容室を開業するのにどのくらいの費用がかかるのかについてご紹介します。
開業にかかる費用の相場は約1,000万
2023年6月のデータのため少し古いですが、日本政策金融公庫が美容業創業者向けの「創業の手引+(プラス)」にて、美容室の開業にかかる費用の相場を発表しています。その相場は、1,000万円前後です。決して安い費用とはいえません。
開業費用は上昇傾向にある?
日本政策金融公庫が2023年に公表した「2023年度新規開業実態調査」には、美容業に限らない一般的なデータが掲載されています。 それによると、2023年の開業費用は平均で約1,027万円、中央値は550万円であるにもかかわらず、500万円未満で起業する人がもっとも多いという結果になっています。 ですから、必ずしも1,000万円なければ美容室が開業できないというわけではありません。
開業にはどんな費用が必要なの?
ここでは、開業にかかる費用の内訳を「創業の手引き」に沿って詳しく解説します。どんなところにお金をかけるべきなのかを把握し、美容室の規模を決定しましょう。
工事費用|内装・外装
費用のなかで、もっとも高額なのが内装や外装などの工事費用です。美容室開設費用1,000万円のうち、工事費用にかかる平均金額は600万円。全体の60.0%を占めていることになります。
美容器具の購入費用|スタイリングチェア・シャンプー台など
スタイリングチェアやシャンプー台といった施術に必要な美容器具の購入費用は、導入規模にもよりますが70~100万円程度が目安です。クオリティの高い美容器具を導入して高級感を出そうと思うと、それだけ費用がかかります。
設備費用|美容器具以外の備品など
美容器具以外の什器や備品などは、100〜200万円が目安。施術に使うさまざまな薬剤やシャンプー・トリートメント剤などのクオリティは落としたくないという人は、設備費用で調節を取るのがおすすめです。 アウトレット品などを丹念に探せば、設備費用を抑えることができます。
物件取得費用|店舗の家賃など
物件取得費用も、大きな割合を占める項目です。店舗を借りる場合にはテナントの月々の賃貸料や敷金・礼金が必要になります。物件取得費用は、店舗の立地と面積に大きく左右されます。
広告・宣伝費|WEBサイト制作・ショップカードなど
美容室を開業するからには、たくさんのお客様に来てもらわなければ意味がありませんので、広告・宣伝費にも、ある程度のお金をかけることが大切です。 WEBサイトの作成やショップカード・チラシの製作などにかかる費用のほかに、集客システムの利用も考慮したいものです。効率のいい集客システムとしては、美容業に特化した多彩な機能が使えるリザービアがおすすめです。
運転資金|公共料金・スタッフの給料など
お店を開業しても、その後の光熱費やスタッフのお給料などを払っていける余力もなければいけません。開業してしばらくの間は収入が不安定ですので、多めに運転資金を準備しておくことをおすすめします。
自己資金ゼロでも開業できるの?
「美容室は開業したいけれど、自己資金ゼロでもだいじょうぶ?」という人も、なかにはいるものです。自己資金ゼロでの開業は不可能ではありませんが、リスクがかなり高いことは覚悟しておきましょう。 ここでは、自己資金ゼロでも開業できるのかについて具体的にご紹介します。
資金調達額の内訳|自己資金の平均額はどれくらい?
資金調達額のなかで、自己資金が占める金額は全業種で280万円、美容業では268万円ですから、他業界と大差ないことがわかります。自己資金以外の調達先は、金融機関が65.1%で平均768万円、親族では7.4%(87万円)です。 なおこの数字には、開業にあたって不動産を購入したケースは含まれていません。
自己資金ゼロでも開業はできる?
自己資金を充分に用意している場合と、自己資金がゼロの場合とでは負担がまったく違います。自己資金がゼロだから開業が不可能というわけではないのですが、たとえ開業はできたとしても、安定した経営を続けていくのはかなり困難といえるでしょう。 開業はしたいけれど自己資金がないというのでしたら、開業を少し先に伸ばしても自己資金を調達しておくのが得策です。
一般的な借り入れの方法
地方銀行や信用金庫などで融資を受ける場合
地方銀行や信用金庫で融資を受ける場合には、信用保証協会の保証を受けて融資を受けるケースが多いです。開業時から信用保証協会の保証を受けないプロパー融資を銀行から受けることは難しいです。
信用保証協会とは?
中小企業や事業の貸し倒れに際する保証をすることで、融資を行う金融機関に対して信用力の補完を行ってくれる機関です。
▶近くの信用協会を探す:http://www.zenshinhoren.or.jp/others/nearest.html
こちらの審査内容は開示されていませんが、売り上げや利益などの収益計画、事業全体を説明する事業計画書などの情報を緻密に整理した上で申し込みをする必要があります。
日本政策金融公庫で融資を受ける場合
▶日本政策金融公庫>新規開業資金
https://www.jfc.go.jp/n/finance/search/01_sinkikaigyou_m.html
開業資金の融資を受けるにはどうすればいいの?
自己資金調達だけでは足りない分に関しては、開業資金の融資を考えてみる必要があります。日本政策金融公庫に融資を申し込んでから入金までの流れと必要事項について詳しく見ていきましょう。
創業計画書を作成しよう
日本政策金融公庫で創業融資の申し込みをするためには、「創業計画書」を提出しなければなりません。創業計画書とは、起業する際に事業の概略や計画などをまとめた書類のことです。 ここでは、以下に創業計画書の概要と計画書作成のポイントをご紹介していますので、参考にしてみてください。
必要な資金|設備資金と運転資金
創業計画書はむずかしい書類ではありませんが、充実した内容にしないと、審査に通らないこともあります。 計画書のなかでもっとも重視されるのは「7 必要な資金と調達方法」です。「必要な資金」の項目は店舗、工場、機械、備品、車両などの内訳を記入する「設備資金」と、商品仕入、経費支払資金などの内訳を記入する「運転資金」のふたつの欄にわかれています。設備資金については見積書を添付しなければなりません。
調達の方法|自己資金や借入金を記載
「調達の方法」には、自己資金額、親・知人・友人などからの借入額、日本政策金融公庫 国民生活事業からの借入額、そしてそのほかの金融機関からの借入額を記入する欄があります。借入予定がある場合でも記入は必須です。
事業の見通し|返済計画を立てよう
「8 事業の見通し」の項目には、月平均の売上高や売上原価を記入します。事業の見通しで出た利益から、借入金の元金が支払われることになります。
融資を受ける手続きの流れを紹介
実際に融資を受けるまでには、どのような手続きが必要なのでしょうか。ここでは、手続きの流れについてご紹介しましょう。
不安な場合はまず相談|電話・インターネットでも申し込みOK
手続きや申請方法について不安や質問がある場合には、まず一度相談をしてみることをおすすめします。電話(「事業資金相談ダイヤル」)のほかに、インターネットでも相談の申し込みが可能です。
必要書類をそろえて申し込む
相談をして不明点が解決したら、必要書類をそろえて、いよいよ申し込みです。 必要書類は創業計画書のほかに本人確認書類(顔写真付き)、法人であれば履歴事項全部証明書なども必要となります。設備資金を申し込む場合は見積書、担保を希望する場合は登記簿謄本、もしくは登記事項証明書も必要です。申し込みはインターネットでもおこなえます。
面談を受けよう
書類提出が終わったら、次は面談です。事業計画の内容などについて細かく質問を受けます。面談のときには、事業計画に関する資料や資産・負債のわかる通帳や返済明細表などの書類なども用意しましょう。
融資実行
無事決裁が下りた場合は、借用証書などの必要書類が支店から送られてきます。契約の手続きを終えると、希望の銀行口座に融資金が振り込まれます。
金融機関はどこをチェックする? 融資を通りやすくする3つのポイント
日本政策金融公庫から受ける融資のほかに、地元の地方銀行などの金融機関から融資を受ける際には、審査に通りやすくなるようなチェックポイントを押さえておくことが重要です。 融資に通りやすくなるポイントを、以下に3つご紹介します。
1. 勤続経験|年数+身につけたノウハウ
金融機関では、融資を申し込んだ人の勤続経験を重視します。「○年以上の経験がなければダメ」という決まりは明確にありませんが、美容師としての技術力があるかどうか、美容師として働いた勤続年数と身につけたノウハウなどがチェックされます。 これまでにどのような実績を残してきたのか、ほかの美容室に勤務していたときの個人の売上表などがあれば、資料として提出しておきたいところです。また、美容サロンを経営していくことになるので、マネジメント経験や店舗運営実績もアピールするとよいでしょう。
2. 自己資金|計画性の高さをアピール
自己資金の比率が多いことも、融資に通りやすいポイントのひとつです。自己資金をコツコツと貯めていたということは、計画性が高く、資産の管理能力にも長けていることになりますので、アピール性抜群です。
3. 日ごろの支払い状況|堅実な返済は高い信用力に
日ごろ、公共料金やクレジットカードなどの支払いなどを延滞なくおこなっていると、信用力が高まることも忘れてはいけません。逆に支払いが遅れがちな場合は、信用力が低下しますので、将来独立して開業したいと考えている人は、日ごろの支払い状況にも気を配るようにしたいものです。
- サロンのリピート率を増やしたい
- クーポンサイトを脱却したい
- LINEでの予約管理が大変
- 予約はリザービアで一元管理
できるだけ自己資金を準備して安定した経営を目指そう!
美容室の開業を支援する融資制度は複数ありますが、できるだけ自己資金をたくさん準備しておけば、安定した事業を経営することができます。 自分が将来なにをしたいのか、どんな風に自己を実現したいのかをよく考えて、無駄遣いは極力控えることが大切でしょう。 夢を実現するためには、旅行や外食を控え、明日に向けてのたゆまない努力を続けることが必要です。
美容室に限らず、新規事業立ち上げの融資を受けるのは簡単なことではありません。しかし、自己資金を適切に準備し、日本政策金融公庫からの融資を受けることで、新規開業の可能性が高まります。
美容室を開業・運営する上での計画をしっかりと立てた上で、これならうまくいく、という自信が持てたら、日本政策金融公庫や民間金融機関の融資にチャレンジしてみましょう!