美容師として経験を積んだあと、独立を考える人は多いでしょう。特に1人美容室での独立は、スタッフの管理や人件費の心配がない分、独立に対する心理的なハードルが低く感じられる選択肢です。
1人で独立した美容師の収入は、給与ではなく「売上から経費を引いた所得」で決まります。スタッフの人件費がかからない分、売上のうち手元に残る割合は大きくなりますが、1人で受けられる客数には上限があります。
本記事では、月の売上ごとの所得の試算と収入を上げる方法、1人で独立するメリット・デメリット、開業届や青色申告の期限を含む開業までの流れを紹介します。
この記事でわかること
- 1人美容室のオーナーの収入は「売上-経費」で決まる。スタッフの人件費がかからない分、売上のうち手元に残る割合が大きい
- 経費を売上の45%と置いた本記事の試算では、月の売上70万円で年間の所得は約460万円、100万円で約660万円(税金・社会保険料を払う前の金額)
- 1人で受けられる客数には上限があるため、収入を上げる手段は客単価とリピート率の向上、経費の見直しが中心になる
- 開業届の提出期限は事業を始めた年分の確定申告期限まで、青色申告承認申請書は事業を始めた日から2か月以内(1月16日以後に始めた場合)
目次
1人美容室の開業資金の内訳
1人美容室の開業資金は、立地や店舗の規模、どの程度内装に手を加えるかによって大きく変動します。物件取得費や保証金、内装工事費や設備・備品購入費に加え、開業後の運転資金や広告宣伝費も準備しておくことが必要です。
独立にかかる費用や独立の際に必要なものについては、下記の関連記事で詳しく解説していますので参考にしてください。
1人で独立した美容師の年収はどれくらい?
一般的に、美容室のオーナーの収入は「売上-経費」で求めることができます。
経費には材料費や店舗家賃などがあり、スタッフを雇っている美容室では人件費も加わります。本記事の試算では、スタッフを雇う美容室の経費を売上の80%程度、そのうち人件費を35%程度と置いています。人件費のかからない1人美容室では、経費が売上の45%程度、オーナーの手元に残る所得が売上の55%程度になる計算です。
実際の割合は、家賃や材料費、客単価によって大きく変わります。この前提をもとに、下記で実際の数字を当てはめてシミュレーションをしてみます。
一人サロンの具体的な売上事例や収入シミュレーションについては、関連記事で詳しく紹介していますので参考にしてください。
年収のシミュレーション
前述の前提で計算すると、1人美容室で月の売上が70万円なら、年間の所得は460万円程度です。売上が100万円なら、月55万円、年間660万円程度になります。
ここでの所得は、税金や国民健康保険・国民年金などを払う前の金額です。会社に勤める美容師の給与の年収とは、そのまま比べられない点に注意しましょう。
月間売上50万~100万円でのシミュレーション結果は下記の通り。
1人美容室の収入を上げる方法
1人美容室のオーナーが収入を上げるためにはどうすればいいのでしょうか。ここでは、3つの方法を提案します。独立後の成功確率を少しでも上げるために、しっかりと準備をしましょう。
経費を削減し、利益率を上げる
1人美容室のオーナーが収入を上げる方法のひとつに、水道光熱費や材料費などの削減があります。
材料費は、同じものでも複数の業者から相見積もりを取って比較検討することで、価格を抑えることができる場合があります。
どうしても削れない内容もありますが、適切なコストカット策によって利益率向上を目指しましょう。
積極的に集客を行う
お客様が増えれば、当然売上も上がり、結果的にオーナーの年収も増えやすくなります。そのため、集客をしっかり行ってたくさんのお客様に来店してもらいましょう。継続的に集客することで、リピートのお客様がつきやすくなり、安定した売上にもつなげられます。
客単価を高める×リピート率を向上
1人で対応できる客数には上限があるため、収入を上げるには客単価の向上が不可欠です。高付加価値のメニューを提案したり、店販商品の販売を強化したりすることで単価アップを目指しましょう。
さらに、マンツーマン接客の強みを活かして顧客満足度を高め、リピート率を向上させることも、1人美容室の成功率を高めるための重要なポイントです。
美容師が1人で独立するメリット
1人美容室での独立には多くのメリットがあります。ここでは、7つのメリットについて詳しく解説します。
1.自分好みのサロンを作れる
1人美容室の最大の魅力は、サロンのコンセプトから内装、メニュー構成まで、すべてを自分の理想通りに設計できることです。雇われている立場では実現できなかった独自のサービスやこだわりの空間づくりが可能になります。
2.自分が理想とする接客ができる
お客様一人ひとりとじっくり向き合い、カウンセリングに時間をかけたり、リラックスできる雰囲気作りに注力したりと、自分が理想とするサービスを提供することも可能です。
また、技術的にも自分の得意分野に特化したメニュー展開で、差別化を図ることもできます。
3.収入がアップする可能性がある
1人美容室では、自分の技術力と営業努力が直接収入に反映されます。サロン勤務時とは異なり、売上から経費を差し引いた利益がすべて自分の収入となるため、頑張り次第で大幅な収入アップが期待できます。
4.人間関係の悩みが減る
1人美容室は自分一人で運営するため、職場での上下関係や同僚との競争、新人スタッフの育成など、多くの美容師が抱える人間関係の悩みがなくなります。
5.勤務日・勤務時間を自由に決められる
1人美容室なら「家族との時間を大切にしたい」「趣味の時間を確保したい」「体調に合わせて働きたい」など、個人の事情に応じて営業日や営業時間を調整できます。
6.初期投資が少なく自分の店を持てる
複数のスタッフを雇用する美容室と比較して、1人美容室は初期投資を大幅に抑えることができます。施術スペースや待合エリアも最小限で済むため、物件取得費や内装費、設備投資などのコストを削減できます。
7.人件費がかからない
スタッフを雇用しないため、人件費はもちろん、社会保険料などの法定福利費や人材募集・教育の費用も発生しません。売上から必要経費を差し引いた利益を、すべて自分の収入にすることができます。
美容師が1人で独立するデメリット
1人美容室にはメリットがある一方で、いくつかのデメリットも存在します。1人での独立を検討する際は、これらのデメリットも十分に理解した上で判断しましょう。
1.対応できるお客様の数に限りがある
1人で運営する以上、1日に対応できるお客様の数には物理的な限界があります。面貸し等で店舗の空いたスペースを有効活用していかない限り、大幅な売上拡大は難しいでしょう。
2.自分が働けなくなると収入が途絶える
病気やケガなどで自分が働けなくなった場合、サロンとしての収入が完全にストップしてしまいます。また収入が途絶えるだけではなく、フリーランスと違って店舗を持っているため、固定費は一定発生してしまいます。
スタッフがいる美容室であれば、オーナーが不在でも営業を続けることができますが、1人美容室では代わりができる美容師を急に見つけることは難しいでしょう。
3.施術以外の経営業務もすべて自分で行う必要がある
雇われ時代とは異なり、美容師としてのサロンワークだけでなく、お金の管理などの経理作業、備品の発注、集客のためのSNS更新、清掃など、運営に関わるすべての業務を1人でこなさなければなりません。
営業後の時間や休日に事務作業を行うことも多く、体力的な負担や労働時間の増加につながりやすい点には注意が必要です。
4.将来的な事業展開の方向転換が難しい
1人美容室として開業した後にスタッフを雇いたくなったり、店舗を拡大したくなったりしても、スペースの制約や仕組みの違いから、途中で方向転換することが難しい傾向があります。
将来的にどのような美容室経営を目指すのか、独立するタイミングで長期的な視点を持っておくことが求められます。
1人美容室を開業するための流れ
1人美容室の開業には計画的な準備が必要です。以下では、開業までの具体的なステップを順を追って解説します。
開業手順の詳細については、下記の関連記事も参考にしてください。
開業する美容室のコンセプト等を決める
まずは、美容室の基本となるコンセプトを明確に定めましょう。どのような雰囲気のサロンにしたいか、どんなお客様に来てほしいか、提供したいサービスの特徴は何かなど、詳細に検討します。
コンセプトが決まったら、それに基づいてターゲット顧客層を設定し、開業エリアを選定します。
事業計画を立てる
事業計画を立てることで、開業動機・提供するサービス内容・売上目標・必要な経費・事業の将来性などを具体的に、明確にしていきます。事業計画は経営の指針となるだけでなく、金融機関からの融資を受ける際にも必要不可欠な資料です。
開業エリアで物件を探す
コンセプトを決めた際に選定した開業エリアで、物件探しを開始します。
美容室として利用できる物件は、建築基準法や上下水道の配管などによる制限があるため、タイミングによってはなかなか良い物件が見つからない可能性も考えられます。そのため、物件探しは早めに取り掛かると良いでしょう。
物件選びのポイントについては、下記の関連記事も参考にしてください。
開業に必要な資金を調達する
物件の目星がついたら、物件の取得費用・内装工事費・設備購入費・開業後の運転資金など、必要な資金の総額を計算します。自己資金で不足する分については、融資などの利用を検討しましょう。
また、開業時に利用できる補助金や助成金制度もあるため、下記の関連記事も参考にしてください。
物件を契約し、内装工事に取り掛かる
ターゲットや予算などを総合的に考慮して物件を選び、契約を締結します。契約後は設計・施工業者と打ち合わせを重ね、内装や外観工事に着手します。
美容室は保健所による開設検査があるため、店舗の平面図ができあがったら、保健所へ持参して確認してもらいましょう。こうして事前に相談を行っておくことで、そのあとの申請や検査を円滑に進められます。
また、消防署にも同様に事前相談を行っておくと安心です。必要な届出は建物の用途や規模によって異なるため、事前相談の際に確認しておきましょう。
備品や設備の購入・設置を行う
内装工事のスケジュールとの兼ね合いを見ながら、設備の購入を進めます。
美容室運営に必要なシャンプー台・セット面などの専門設備のほか、タオルやケープなどの備品も準備が必要です。
集客や予約導線を整備する
ホームページの作成・SNSアカウントの開設・Googleビジネスプロフィールの登録などを行い、集客をはじめましょう。
その際、スムーズな予約管理のために予約システムの導入は欠かせません。なかでも特におすすめなのが、美容サロンに特化した予約管理システム「リザービア」です。
リザービアは単なる予約管理ツールではなく、集客や顧客管理に役立つ機能も備えているため、1人美容室の運営効率化に大きく貢献するでしょう。
1人美容室におすすめのシステムについてさらに詳しく知りたい場合は、下記の関連記事も参考にしてください。
開業に必要な届け出を行う
美容所を開設するときは、開設前に保健所へ開設届を提出し、構造設備の検査を受けます。検査で確認を受けるまでは、美容所として使用できません(美容師法第11条・第12条)。提出の時期や必要な書類は保健所によって異なるため、事前相談のときに確認しておきましょう。
建物の用途や規模によっては、消防署への届出(防火対象物使用開始届など)も必要です。要否や期限は自治体の火災予防条例や建物によって異なるため、消防署に確認しましょう。
税務署には、個人事業の開業届(個人事業の開廃業等届出書)を提出します。提出期限は、事業を始めた年分の確定申告期限までです。青色申告を選ぶ場合は、青色申告承認申請書を事業を始めた日から2か月以内(その年の1月16日以後に始めた場合)に提出します。
引用元
No.2090 新たに事業を始めたときの届出など|国税庁
No.2070 青色申告制度|国税庁
美容室を開業する
すべての準備が整ったら、いよいよ開業です。
開業直後は認知度が低いため、オープンキャンペーンの実施や特別価格での施術提供など、積極的な集客活動を行いましょう。また、SNSでの情報発信などの集客活動も継続的に行うことが重要です。
1人美容室のメリットとデメリットを理解した上で検討しよう
1人美容室での独立には、自分好みのサロン作りができるなど多くのメリットがある一方で、対応可能なお客様数に上限があるなどのデメリットも存在します。これらのメリット・デメリットを十分に理解した上で、独立を検討しましょう。
1人で円滑に美容室を経営するためには、効率的な予約システムの導入や集客の仕組み作りが不可欠です。限られた労力と時間を上手に活用してサロン運営を行うためにも、しっかりとした準備と適切なツール選びを心がけましょう。
1人経営の場合、収入保障や傷病対策として美容師個人向けの保険加入を検討しておくことが重要です。
1人経営の開業コスト計算の参考に、美容室に必要な道具・設備の相場感も合わせて確認しておきましょう。
一人美容室の収入事情と合わせて、サロン全体の売上平均も確認しておきましょう。
一人美容室オーナーの収入事情と比較してみてください。
よくある質問
1人美容室を開業する際の資金はどのくらい必要ですか?
1人美容室の開業資金は、立地や店舗の規模、内装工事の内容によって大きく変わります。物件取得費や保証金、内装工事費、設備・備品購入費のほか、開業後の運転資金や広告宣伝費も準備しておくことが重要です。
1人美容室を経営した場合、オーナーの収入はどのくらいになりますか?
1人美容室のオーナーの収入は、売上から経費を引いた所得で決まります。経費を売上の45%と置いた本記事の試算では、月の売上が70万円なら年間の所得は約460万円、100万円なら約660万円です。これは税金や社会保険料を払う前の金額で、家賃や材料費、客単価によって大きく変わります。
1人美容室の収入を増やすにはどのような方法がありますか?
1人美容室の収入を増やすには、主に3つの方法があります。まず、水道光熱費や材料費などの経費を削減し、利益率を高めること。次に、積極的に集客を行い、リピート率を向上させること。そして、高付加価値メニューの提案や店販強化で客単価を高めることが重要です。
美容師が1人で独立する際のデメリットには何がありますか?
1人美容室のデメリットとしては、対応できるお客様の数に限りがあること、自分が働けなくなると収入が途絶えるリスクがあることなどが挙げられます。また、施術以外の経理や集客、清掃といった経営業務もすべて一人で行う必要があり、体力的な負担や労働時間の増加につながる可能性があります。
1人美容室を開業するときに必要な届出は何ですか?
保健所には、開設前に開設届を出し、構造設備の検査を受けます。確認を受けるまでは美容所として使用できません。建物の用途や規模によっては消防署への届出も必要なため、要否と期限は消防署に確認しましょう。税務署には開業届を、事業を始めた年分の確定申告期限までに出します。青色申告を選ぶ場合は、青色申告承認申請書を事業を始めた日から2か月以内(その年の1月16日以後に始めた場合)に出します。