大手ネイルサロンの名前を借りて経営できるフランチャイズは、個人が一から経営を始めるよりも有利に思えますが、実際には経営に失敗してやむなく事業撤退しているケースも少なくありません。
経営に失敗すると多額の借金を負ってしまうリスクがありますので、ネイルサロンのフランチャイズ経営を検討する際は、経営のコツや注意点をよく理解しておく必要があります。そこで今回は、ネイルサロンのフランチャイズでよくある失敗例をご紹介すると共に、フランチャイズを始めるために必要なものや、失敗しないための対策について解説します。
フランチャイズでネイルサロンを開業したいけれど、うまく経営していけるかどうか不安…という方は、ぜひ参考にしてください。
目次
ネイルサロンのフランチャイズでよくある失敗3選
ネイルサロン市場は近年拡大の一途をたどっており、その店舗数は3万店に達するといわれています。
そのぶん同業間の競争も激化していましたが、そこに新型コロナウイルスの感染拡大の影響も受け、倒産に追い込まれるサロンも少なからず存在します。
実際、2020年1~11月までのネイルサロンの倒産件数は19件と過去最多を更新しています。[注1]
緊急事態宣言が解除されて以降は、徐々に客足も戻りつつありますが、依然として厳しいネイル業界で生き残るためには、失敗例を参考に、成功するための取り組みや工夫を採り入れることが大切です。
ここでは、ネイルサロンのフランチャイズ経営を軌道に乗せるための参考として、よくある失敗例を3つご紹介します。
失敗例1.ロイヤリティを計算に入れていない
フランチャイズ経営のほとんどでは、売上に対して一定のロイヤリティが発生する仕組みになっています。
ロイヤリティとは、大手サロンの看板を掲げて経営するために支払う権利使用料のことです。ロイヤリティの計算方法はサロンごとに異なり、売上の数%を支払うパターンもあれば、売上金額にかかわらず、毎月一定の料金を支払うパターンもあります。
いずれの場合でも、サロンを経営しているだけで毎月一定のコストがかかることになりますので、手元に残るお金が少なくなってしまいます。
売上からは、店舗の維持費や、従業員に支払う給与、設備投資費なども捻出しなければなりませんので、ロイヤリティを考慮に入れずにフランチャイズ経営を始めると、思った以上のコストがかかって失敗する可能性があります。
なお、一部サロンではロイヤリティを0円に設定しているところもあります。
ロイヤリティが有料のところに比べると一見お得に思えますが、実際にはシステム使用量やフランチャイズ会費、宣伝広告費など、別の名目で月額料金を徴収している例も少なくありません。
安易に「ロイヤリティ0円」に飛びつくと経営に失敗するリスクが高くなりますので注意が必要です。
失敗例2.本部やマニュアルに頼りすぎる
フランチャイズ経営では、全店統一のマニュアルを用意したり、オープン当初に本部から応援要因が駆けつけたりと、さまざまな開業支援を受けることができます。
しかし、本部やマニュアルに依存し過ぎると、オリジナリティやユーザビリティに欠ける地味なサロンになってしまいます。
そもそも大手サロンは多数のフランチャイズを抱えていますので、単純に看板だけ掲げていれば集客できるというわけではなく、同じフランチャイズ店に顧客を取られてしまう可能性があります。
オープン当初は本部の手厚い支援を受けられても、経営を軌道に乗せられるかどうかはオーナーの努力次第ですので、「マニュアルに沿って経営していればいいや」と安易に考えると失敗しやすくなります。
失敗例3.人手不足で経営がうまく回らない
日本は少子高齢化にともなう生産年齢人口の減少により、どの業界でも働き手不足が深刻化しています。
ネイルサロンの場合、ワンオーナーで経営を回すことも可能ですが、予約の受付から接客、事務手続き、施術に至るまで、すべて一人で行わなければならないため、心身に大きな負担がかかります。
特に経営に慣れないうちはミスや失敗も起こりやすく、せっかく来店してくれたお客様をみすみす逃してしまうことになりかねません。
人手を十分確保できない場合や、スタッフの教育が不十分な場合は、経営をサポートする便利なシステムやツールを導入し、業務効率を上げる必要があります。
ネイルサロンはフランチャイズと個人のどちらが失敗しやすい?
ネイルサロンの開業方法には、フランチャイズ経営と個人経営の2種類があります。それぞれにメリット・デメリットがありますが、失敗のリスクはどちらの方が高いのでしょうか?
ここでは、ネイルサロンのフランチャイズ経営と個人経営の特徴をご紹介すると共に、どちらが失敗しやすいのかについて検証します。
フランチャイズ経営の特徴と注意点
フランチャイズ経営の特徴は、高いブランド力で集客できるところです。
知名度・信用度ともに高い大手サロンの看板を掲げて開業すれば、自然と注目を集めるため、大々的に宣伝しなくてもそれなりの集客を見込むことができます。
また、本部から経営のためのマニュアルが配布されるため、独立開業の経験がない方でも、基本やコツを押さえた経営を行えるところが特徴です。
スタッフを雇って経営する場合も、大手サロンの名前があれば多数の応募が寄せられますし、教育マニュアルも完備されているので、安心して経営をスタートすることが可能です。
一方、フランチャイズのデメリットとしては、経営方針を自由に決められないこと。毎月ロイヤリティが発生することなどが挙げられます。
経営方針については施術メニューや価格のほか、店舗の外観や内装にも一定のルールを設けているところもありますので、「自分の好きなようにお店を経営したい」という方には不向きです。
個人経営の特徴と注意点
個人経営のメリットは、経営方針や働き方を自由に設定できるところです。
施術メニューの内容や価格設定、営業日時を任意で決められるので、自分のライフスタイルに合わせて働くことが可能です。
中には、平日は別の仕事をして、土日だけ副業としてネイルサロンを経営する人もいるなど、多様な働き方を選択できるのも個人経営ならではの魅力です。
一方のデメリットは、宣伝や集客に手間と時間、コストがかさみやすいところです。
無名のサロンにお客さんを呼び込むには、しっかりマーケティングを行い、適切な広告を打つ必要があります。
たとえば周辺地域にチラシを配る、SNSで宣伝する、WEBサイトを公開するなど。
SNSでの宣伝は無料で行うことも可能ですが、よほど目を惹く広告を打たなければスルーされてしまうため、センスとアピール力を問われることになります。
また、個人経営ではマニュアルやサポートを利用できないので、経営について自分で一から学ばなければならないのもネックです。
関連記事:ネイルサロンの広告方法10選パーフェクトガイド!宣伝の重要ポイントや注意点も紹介!
フランチャイズ・個人ともに失敗リスクはゼロではない
ここまでネイルサロンのフランチャイズ経営と個人経営の特徴、注意点をご紹介してきましたが、経営に失敗するリスクはどちらが大きいと一概に言い切ることはできません。
フランチャイズは集客力が高く、経営面でサポートを受けられるところが利点ですが、そのぶんロイヤリティの負担が大きいため、新規顧客をリピーターとして定着させなければ経営不振に陥る可能性があります。
一方の個人経営も、ロイヤリティの負担こそないものの、店舗や設備の維持費などを考慮すると、固定客をつかまないことには経営が成り立ちません。
どちらの場合でも新規顧客の獲得およびリピーターの定着に注力しなければならないことに変わりはありませんので、サロン経営の目的やニーズに合わせて、自分に適した経営スタイルを選択しましょう。
ネイルサロンのフランチャイズを始めるために必要なもの
ネイルサロンのフランチャイズ経営を始めるためには必要なものを4つご紹介します。
1.開業資金
ネイルサロンのフランチャイズ開業には、フランチャイズ加盟金のほか、店舗の物件取得費用や内外装費、資材費、什器費などの費用が発生します。
サロンによっては、保証金や研修費などの費用が別途かかるところもありますので、事前に確認が必要です。
これら初期費用の金額は、どんな物件・サロンを選んだかによって異なりますが、おおよその相場は200~900万円程度とされています。
さらに、サロン開業以降は、スタッフの人件費や物件の賃貸料、消耗品費、ロイヤリティなどが継続的に発生します。
売上金が手元に入ってくるまでは、初期費用と運営費用を手持ちの資金から捻出しなければなりませんので、フランチャイズ開業にあたっては、ある程度まとまったお金を用意しておく必要があります。
2.資格
美容室の場合、開業するには管理美容師や美容師免許などの資格が必要ですが、ネイルサロンの場合、開業にあたって特別な資格は必要ありません。
ただ、ネイリストとして活躍するには一定の知識と技術、センスが求められますので、お客様もサロンを選ぶにあたり、施術者が有資格者かどうかを重視する傾向にあります。
正しい知識と高い技術力で施術すれば、リピート率の向上にもつながりますので、ネイルサロンのフランチャイズ開業にあたっては、ネイリスト関係の資格取得を検討した方がよいでしょう。
3.開業届
ネイルサロンのフランチャイズオーナーは個人事業主に該当しますので、事前に所轄の税務署へ「個人事業の開業・廃業等届出書」を提出する必要があります。
開業届は事業の開始等の事実があった日から1月以内に提出することと定められていますので、フランチャイズ開業したら速やかに開業届の手続きを済ませましょう。[注2]
4.損害保険
ネイルサロンは美容院などに比べると施術中の事故は少ないと思われがちですが、施術中に誤ってお客様の皮膚を傷付けたり、ジェルが皮膚に付着して炎症を起こしてしまったり…といったトラブル事例は少なくありません。
その場合、治療費は当然サロンが負担することになり、治療内容によっては大きな負担になってしまうおそれがあります。
こうしたトラブルを防止したいのなら、事前にネイルサロン向けの損害賠償保険に加入することも検討しましょう。
ネイルサロンのフランチャイズ開業の基本的な流れ
ネイルサロンのフランチャイズ開業の主な流れを つのステップにわけて解説します。
ステップ1.加盟先を選ぶ
フランチャイズ契約を行っているサロンは複数あり、それぞれ加盟の費用やロイヤリティ、サポート内容などに違いがあります。
先でも説明しましたが、「ロイヤリティ0円」などの謳い文句に惹かれてフランチャイズ契約すると、別の名目で費用を取られてしまった…といったトラブルに発展する可能性もあります。
ネイルサロンのフランチャイズを選ぶときは、どこにどのくらいの費用がかかるか、加盟後にどんなサポートを受けられるのか、その内容をじっくり比較検討することが大切です。
ステップ2.担当者による面接・審査
フランチャイズ先が決まったら、担当者にコンタクトを取り、面接を受けます。
担当者は、フランチャイズ希望者に契約内容を説明すると共に、サロン経営にふさわしい人物か、必要な資金を準備できるか、などをチェックします。
ただ担当者の話を聞くだけでなく、わからないことや不安なことがあったらどんどん質問し、疑問や悩みを解消しておきましょう。
面接の内容をもとに、サロン側で規定の審査を行い、無事に条件をクリアしたら加盟契約を交わすことが可能になります。
ステップ3.店舗物件を探す
担当者と共に、サロンを開業する物件を探します。
どんな場所でサロンを開設したいか、予算はどのくらいか、などの条件に基づき、ニーズに合った物件を見つけましょう。
ステップ4.フランチャイズ契約を結ぶ
適切な物件が見つかったら、フランチャイズ契約を締結します。
署名・押印する前に、契約書の内容に目を通し、当初説明を受けた内容と相違がないか、わからない部分はないか、しっかり確認しましょう。
ステップ5.開業計画を立てる
本部からのサポートを受けながら、開業に向けた具体的な計画を立てます。具体的には、店舗の外装や内装、設備や什器の導入、スタッフの募集要項などを決めます。
ステップ6.店舗の施工
ステップ5の開業計画に基づき、店舗の設計・施工に移ります。
サロンによっては店舗の設計に一定のルールが設けられていますので、設計やデザインに違反がないか、事前によく確認することが大切です。
ステップ6.スタッフ採用・研修
店舗の設計・施工と並行して、スタッフの採用・研修を行います。
ワンオーナーの場合も、マニュアルに応じた研修を義務づけているところがありますので、本部の指示に従いましょう。
ネイルサロンのフランチャイズで失敗しないための対策
ネイルサロンのフランチャイズ開業で失敗しないために実践したい対策や、成功するためのコツを5つご紹介します。
1.複数のフランチャイズを比較する
ネイルサロンの経営にかかるコスト(加盟費やロイヤリティなど)は、フランチャイズ契約を締結する業者によって異なります。
また、開業前・開業後のサポート内容やマニュアルにも大きな違いがありますので、まずはフランチャイズ先のサロンをじっくり比較検討するところから始めましょう。
資料請求や問い合わせを行えば、フランチャイズ契約の内容について、くわしい資料や回答を得ることができますので、それぞれの内容をしっかり理解し、自分のニーズや予算に合ったところを選ぶのが成功の秘訣です。
2.マーケティングをしっかり行う
ネイルサロンの集客力をアップするためには、オープン前にしっかりマーケティングを行い、お店を出すエリアの地域性やターゲット層を下調べすることが大切です。
たとえば、学生が多いエリアならリーズナブルなメニューを採り入れる、オフィス街なら会社帰りの人が立ち寄れるよう、営業時間帯を遅く設定するなど。
「誰もが利用しやすいお店」など、ターゲット層を絞らずにオープンすると、コンセプトがぼやけてしまって集客率が落ちますので、メインターゲットは必ず明確にしましょう。
また、周辺エリアに競合他社がどのくらいあるか、他店は何を強みにしているのかなどをリサーチすれば、他店との差別化を図れるオリジナルのメニュー、サービスを考案する材料になります。
3.集客方法を工夫する
フランチャイズ開業の場合、最初のうちは大手サロンの看板だけで人を呼び込むことができますが、時間が経過すると次第に新鮮味が薄れ、オープン当初より集客率が落ちます。
大手サロンの名前だけに頼りすぎているとコンスタントに集客するのが難しくなりますので、こちらからも積極的にお客様を呼び込む工夫を採り入れる必要があります。
具体的には、周辺地域にポスティングを行う、SNSで情報を発信する、公式サイトを作って情報を発信するなど。
美容サロン向けのポータルサイトに登録するのもひとつの方法ですが、情報掲載料が毎月発生しますので、費用対効果を考えながら掲載するかどうか検討しましょう。
4.接客スキルを磨く
どんなに施術スキルが高くても、接客態度が悪いとお客様は不快な思いをしてしまい、二度と来店してくれなくなります。
お客様のニーズや要望は人それぞれですので、「何を求めて来店したのか」「どんなサービスを期待しているのか」を丁寧なヒアリングで聞き出すことが大切です。
5.人手不足を補う工夫を採り入れる
スタッフを雇い入れる余裕がなく、少人数またはワンオーナーで接客から施術まで行わなければならない場合は、人手不足を補うための工夫を採り入れる必要があります。
おすすめは、予約管理業務をPCやスマホなどで管理できるサロン管理システム・ツールの導入です。
通常、サロンの予約は対面や電話での受付および予約台帳を使った管理が基本ですが、こうした業務を手作業で行っていると、施術や接客に割く時間が少なくなってしまいます。
を活用すれば、ネットを通じて自動で予約の受付・記録を行えるようになるため、予約業務にかかる手間と時間を丸ごとカットできます。
美容サロンシェア率No.1のリザービアなら、インターネット環境下なら、スマホでいつでもどこでも予約状況を確認できるので、たとえば一人のスタッフが複数の店舗を行き来して施術する場合でも、簡単に予約を管理することができます。
また、どういった経路で予約が入ったのか、データ集計を行う機能も搭載されているため、集客効果の高い経路を接客的に活用するなど、集客を改善する効果も期待できます。
「ネイルサロンの集客力を高めたい」「ワンオーナーなので予約業務にかかる手間と時間を省きたい」といったニーズ・要望のある方はリザービアの利用を検討してみましょう。
まとめ
ネイルサロンのフランチャイズ開業を成功させるには集客力と業務効率化が鍵
ネイルサロンのフランチャイズは、大手サロンの名前を掲げて開業するため、一からオープンする個人サロンより集客力が高いところが魅力です。
しかし、フランチャイズ制にあぐらをかいて集客やマーケティングなどを怠ると、リピーターが定着せずに失敗するおそれがあります。
特にフランチャイズは毎月ロイヤリティを支払う必要があるぶん、コストの負担が個人サロンより大きいので、固定客をつかむための工夫を積極的に採り入れましょう。
[注1]帝国データバンク「ネイルサロンの倒産が増加、過去最多を更新 店舗急増で競争激化、コロナ禍の直撃が追い打ち」
[注2]国税庁「個人事業の開業届出・廃業届出等手続」