「ネイルサロンを開業したい」と思ったとき、開業資金の問題で諦めていませんか。
たしかにネイルサロンを開業するには、店舗の賃料や機器、施術台など、さまざまな点で費用がかかります。しかし、開業時に使える助成金や補助金を有効活用すれば、金銭的な負担を少なくすることが可能です。
今回は、ネイルサロンで使える助成金・補助金をわかりやすく紹介します。開業を検討している方は参考にし、夢を叶える足掛かりとしてみてください。
本記事は起業コンサルタント®であり、V-Spiritsグループ創業者でもある中野 裕哲様に監修いただきました。ぜひご参考にしてください!
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まずは資料をご覧ください
目次
開業にかかる費用は?
ネイルサロンの開業には、どのくらい資金が必要なのでしょうか。
まずはエステサロン、ネイルサロンそれぞれにかかる費用について解説します。
エステサロンの場合
エステサロンを開業する場合、資格や許可は必須ではありません。しかし、サロンの信頼性を高めるために民間資格を取得したり、実績やプロフィールを公開するといった工夫は必要となります。
個人事業主として事業を行なう際の開業手続きは税務署に開業届を提出するだけでよく、費用はかかりません。
自宅で開業する
開業に必要な費用は、エステサロンを開く場所で大きく変わってきます。自宅の一室を利用して開業するなら、店舗費用を省くことができます。さらに、スタッフを雇用しないのであれば人件費はかかりません。
自宅で・一人で開業するというシンプルなスタイルであれば、必要な費用は大まかに次のようになります。
業務用のエステ機器は新しく、人気のあるものほど高価になります。たとえば複合美顔器の「Secret Mes(シークレットメス)は税込みで約220万円、脱毛機器の「バイマッハ」は税込みで約440万円です。
「オールハンドの技術があるから機器は不要」という方もいるかもしれませんが、機器は施術者の技量にかかわらず均一なサービスを提供でき、機器を目当てに訪れるお客様が増えるなどのメリットもあるため、サロンのウリやコンセプトと合わせて導入を検討するとよいでしょう。
部屋を癒しの空間とするための内装・インテリア作りにも費用がかかります。内装にこだわらなくても施術は可能ですが、日常を離れてひとときの癒しを求めてお越しになるお客様に、生活感のある空間で施術をするわけにはいきません。
また、動線も意識して設計する必要があります。玄関ドアが店舗と家庭で共有になるのは仕方ないとはいえ、店舗専用の動線を確保して、家族と鉢合わせしない、生活感のある場所が目に入らない動線を確保しましょう。
概算では内装費の上限を約30万円としていますが、壁や床の施工に加えてインテリアも新しくするなど、こだわればこだわるほど高くなります。
店舗を借りて開業する
店舗を借りてエステサロンを開く場合には、テナント物件の賃料がカギとなります。
テナントの賃料を「都内の2階以上、10坪」で考えてみると、月々約20~30万円に抑えられるでしょう。しかし店舗を借りる際には「保証金」が発生するため、保証金を含めて資金を準備する必要があります。
保証金は賃料の6~10ヶ月分が相場ですが、店舗によっては1年分、1年半分がかかることもあります。保証料を含めると、開業時の費用はざっと以下のとおりです。
もちろん店舗家賃は広さや立地、条件によって変わってくるため、20万円より安く、あるいは30万円より高くなることも多々あります。また月々の賃料、駐車場代、光熱費などのランニングコストにも注意して借りるようにしましょう。
また、店舗でなくマンションの一室を借りてエステサロンを開業するケースもあります。この場合、自宅サロンと同様に小規模な営業スタイルが多く、1日に1~3人程度に抑えると無理がありません。
マンションの一室を借りてエステサロンを開業する場合には、テナントより賃料がやや低くなる傾向にありますが、マンションの規定で営業ができない、店舗営業は可能だがエステサロンはNGといったケースもあるため注意が必要です。
ネイルサロンの場合
自宅でネイルサロンを開く場合、ネイル用の機器と内装費用、ジェルやパーツなどの消耗品類にかかる費用だけで開業できます。
ネイルサロンは機器にさほどお金がかからないため、エステサロンよりも低予算でスタートできます。
店舗を借りて開業する
ネイルサロンではエステサロンと比べて狭いスペースで営業可能なため、テナントを借りる場合でも賃料を抑えやすいでしょう。
賃貸マンションでの開業も賃料が安ければ、初期費用として必要な敷金・礼金が少なくて済みます。
使える助成金・補助金は使うべき
エステサロンもネイルサロンも、節約しても開業してからも多くの資金が必要です。そのため自己資金だけで始めようとすると、なかなか開業までたどり着くことができません。しかし、エステやネイルサロンを開業した際には、行政から助成金や補助金を受けることが可能です。
助成金・補助金を受けられれば、開業してからの資金繰りが楽になりより本業に資金を集中することができます。
エステ・ネイルサロンの開業時に使える助成金・補助金について詳しく見ていきましょう。
ネイルサロンの開業時に使える助成金・補助金とは
ネイルサロンに限定された助成金や補助金があるわけではなく、広く募集されている助成金・補助金の中から、開業時や創業時に利用できるものを選ぶこととなります。
補助金と助成金の違い
利用を検討する前に、助成金と補助金の違いを知っておきましょう。助成金は基本的には厚生労働省が行っています。融資とは異なり、基本的には返済の必要がない給付金です。
支給される金額は申請内容ごとに予め決められていて、要件を満たせば申請後に支給されます。
基本的には労働者を雇用する事業者や雇用している事業者が申請できます。
一方で補助金は、経済産業省などが行っています。補助金の対象となる事業内容について審査があり必ず支給されるものではありません。また、支出金額に対して一定割合で支給されるので、必要な費用を100%支給されるものではありません。返済する必要がない点は、助成金と同様です。
ただ、助成金と補助金を比較すると、助成金の方は予算を消化すると年度内であっても募集を打ち切ることがあります。補助金は必ずしきゅうされるわけではないため、予算を消化したからと募集中にいきなり打ち切ることはほぼありません。
要件を満たせば支給される助成金
助成金は、要件を満たせば支給されるのが特徴です。ただし要件のが厳しい助成金も多くあり、申請すれば誰もが受けられるものではありません。
支給は原則、後払いなので先に資金調達が必要となります。
審査が必要な補助金
補助金は、国や地方自治体の政策目的のために、予算を組んで交付するものです。応募期間中に応募し、事業計画書をはじめとした各種書類が必要となります。審査があり、審査基準を満たしていなければ採択には至りません。
また、補助金の支給も原則後払いです。助成金同様、開業時にはいったん資金調達しておく必要があります。
申請要件と手続きは各省庁や自治体へ
助成金や補助金の受給要件・手続き方法は、各省庁や地方自治体の公式サイトに記載されています。公式サイトを調べるとともに、直接自治体の窓口を訪れて相談するのもおすすめです。
ネイルサロンで受けられる助成金
エステ・ネイルサロンの開業した後に利用できる助成金は主に4つあります。
- キャリアアップ助成金
- 人材開発支援助成金
- 地域雇用開発助成金
ここでは、それぞれの助成金の受給要件や手続き、受給額について解説します。
キャリアアップ助成金
キャリアアップ助成金とは、有期雇用労働者・短時間労働者・派遣労働者など、非正規雇用労働者における企業内でのキャリアアップを促進するため、正社員化、処遇改善の取組を実施した事業主に対して助成金を支給する制度です。
助成金の支給額は、コースによって異なります。ここでは、起業家がよく使うコースの助成金の金額を掲載します。
【正社員化コース】
条件:非正規雇用労働者のスタッフを正社員としての雇用に変更した場合
助成金額
有期雇用から無期の正規雇用 80万円(40万円×2)
無期雇用から無期の正規雇用 40万円
人材開発支援助成金
人材開発支援助成金は、事業主の人材育成による生産性向上のサポートを目的とした助成金です。職業訓練等を計画に沿って実施した場合に、訓練経費や訓練期間中の賃金の一部等を助成する制度です。
【人材育成支援コース】
10時間以上のOFF-JT、新卒者等のために実施するOJTとOFF-JTを組み合わせた訓練、有期契約労働者等の正社員転換を目的として実施するOJTとOFF-JTを組み合わせた訓練などにかかった費用の一部を補助します。
つまり、エステやネイルをお客さまに施術する際の技術を習得するために、正社員のスタッフに10時間以上の訓練を実施すれば対象となります。
助成金額 人材育成訓練
OFF-JT 45%(60%)の経費助成、760円(960円)の賃金助成
※()内は賃金要件等を満たす場合の額
地域雇用開発助成金
地域雇用開発助成金は、雇用機会がとくに不足している地域の事業主が、事業所の設置・整備を行い、併せてその地域に居住する求職者等を雇い入れる場合、設置整備費用及び対象労働者の増加数に応じて、1年毎に最大3回の助成金が支給されます。
同意雇用開発促進地域一覧
該当の地域でエステやネイルサロンを開業していて、地域内に居住する方をスタッフとして雇い入れる際に支給される助成金となっています。第1回目と2回目・3回目の支給要件は異なるので注意が必要です。
受給額
この助成金は、計画日から完了日までの間に要した事業所の設置・整備費用と増加した対象労働者の数に応じて、1年ごとに最大3回支給されます。
自治体独自の助成金
助成金には地方自治体独自の助成金制度もあります。
自治体のサイトを定期的にチェックして、見逃さないようにしましょう。
補助金を活用して設備投資ができる
補助金は国や地方自治体の政策によって、さまざまな分野で募集されています。主に事業主の経営をサポートしたり、雇用を促進させたりする目的で給付されます。
補助金の中には、エステサロンで必要な機器の購入費を3/4補助してもらえる補助金や、ネイルサロンの設備費を1/2負担してくれる補助金などもあるので、どんな補助金があるかしっかり把握しておきましょう。
補助金の種類
ネイルサロンで利用できる補助金は
-
IT導入補助金
-
小規模事業者持続化補助金
-
ものづくり補助金
が挙げられます。それぞれを詳しく解説していきましょう。
IT導入補助金
IT導入補助金とは、中小企業や小規模事業者等の「ITツール導入」を支援する補助金です。事前に事務局に登録されたツールを新たに導入する際に活用ができる補助金です。
起業家の方がよく使う通常枠とインボイス枠に絞って解説をします。
通常枠
中小企業・小規模事業者等が自社の課題やニーズに合ったITツールを導入する経費の一部を補助することで、業務効率化・売上アップをサポートするものです。補助額は最大450万円、補助率は1/2です。
インボイス枠
中小企業・小規模事業者等が導入する会計ソフト・受発注ソフト・決済ソフト、PC・ハードウェア等の経費の一部を補助することで、インボイス制度に対応した企業間取引のデジタル化を推進することを目的としています。
補助額は最大350万円、補助率は最大4/5
例外的に導入するソフトウェアを動かすハードウェアも補助の対象となります。
PC・タブレット等だと補助上限額が10万円、補助率1/2
レジ・券売機等だと補助上限額20万円、補助率1/2
申請するには納税証明書の提出が必要となるため1期以上事業を行っている必要があるため、起業後すぐに活用できるわけではありません。
しかし、自社で活用するツールの2年分の利用料が対象になるため、ツールの利用料の負担を軽くすることができます。
小規模事業者持続化補助金
小規模事業者持続化補助金は、小規模事業者などが取り組む販路開拓等の取組の経費の一部を補助することにより、地域の雇用や産業を支える小規模事業者等の生産性向上と持続的発展を図ることを目的としています。
一般型の利用範囲は広く、チラシ作成やウェブサイト作成にも利用できます。
通常枠だと補助上限額50万円 補助率は2/3です。
特別枠だと補助上限額200万円 補助率は最大で3/4です。
特別枠には創業枠と呼ばれる創業期にしか使えない枠があります。この創業枠を使うためには「特定創業支援事業」の支援を受けている必要があります。起業した自治体に確認をすれば特定創業支援事業について案内をしてくれます。
開業から3年以内にしか申請ができない枠ですので、うまく活用して創業期を乗り切りたいものです。
ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金
ものづくり補助金とは、中小企業や小規模事業者による生産性の向上に資する革新的サービス開発・生産プロセスの改善を行うための、設備投資を支援する補助金です。
エステサロンでは新しい化粧品やメニューの開発、ネイルサロンでは新しいメニュー提供に必要な機械装置などの費用が対象になります。
通常類型 最大1,250万円(大幅な賃上げを行うと最大2,250万円)、補助率最大2/3
ものづくり補助金のスケジュールは毎年変わるため「ものづくり補助金総合サイト」からスケジュールを把握しておきましょう。
ものづくり補助金総合サイト
そのほか、補助金で可能な設備投資
補助金を利用した設備投資はどこまで認められるのでしょうか。たとえば「IT導入補助金」では、勤怠管理システムや、一部の枠ではタブレット、ノートパソコンの導入が可能と、直接的な売り上げにつながらない部分にも利用でき、意外にも用途は幅広いといえます。
補助金は「事業計画書」が採択のカギであることが多いです。
自社の発展とお客様の利益になる計画書が作成できれば、補助金枠内でさまざまな機器を導入できます。機器の導入にあたっては
- 機器を導入することでどんな効果が得られるのか
-
サロンとお客様にとってどんなメリットがあるのか
を意識して検討することが重要となります。
助成金や補助金を活用してエステやネイルサロン創業時期を乗り切ろう
今回はエステサロンやネイルサロンで活用できる助成金・補助金を紹介しました。これらの制度は上手に利用すれば大きな力となってくれます。
助成金は要件を満たしていれば給付されますが、申請書の書き方が複雑です。利用を検討する際は専門家に相談するといいでしょう。補助金であれば、商工会議所や認定経営革新支援機関など、助成金であれば社労士さんに相談するといいでしょう。
また、補助金においては審査があり採択されないと利用できず、助成金も補助金も後払いとなるので、とりあえずの準備資金が必要となります。資金の調達には、政策金融公庫の創業支援がおすすめです。
もちろん審査はありますが、助成金や補助金の採択通知書などがあれば、融資にプラス材料となります。
助成金・補助金制度を上手に利用して、エステ・ネイルサロンの創業期を乗り切りましょう。