美容室をはじめ、どの職種でも経営に携わるようになるともっとも気になるのが「利益率」です。たとえ売上がよくても、利益率がよくないと経営としては厳しくなり、経営について見直しをしなければいけません。
利益率は、店長やマネージャークラスの方や、将来的に独立をして自分の美容室を持ちたいという方は、ぜひとも知っておきたい指標でもあります。ここでは、利益率について詳しく解説をしながら、経費削減をして利益率を上げるコツをご紹介します。
目次
美容室の利益率、純利益とは何のこと?
美容室で働いていると「利益率」「純利益」という言葉をよく耳にするのではないでしょうか?
利益率とは、売上に対して利益がどれぐらいあるのかを占める割合のことで、かんたんにいえば売上に対して最後に残ったお金の割合になります。
一方、純利益は美容室の収入からすべての費用を引いて、最終的に残った利益のことです。
利益率にはいくつかの種類がありますが、ここでは一般的な利益率について詳しく説明します。
粗利益率
粗利とは売上総利益のことを指します。売上総利益の計算は「売上高-売上原価(材料費)」になり、美容室を経営するうえでは重要な利益源泉です。
また粗利益率を計算は「売上総利益÷売上×100」です。たとえば売上が1,000で原価が100であれば、売上総利益は900になり、粗利益率は、900÷1,000×100になるため粗利率は90%となります。
粗利益率を改善するポイントは、原価を下げて売上を上げることです。
営業利益率
営業利益率は美容院の経営ではとても大事な指標です。売上高から仕入れ費・家賃・人件費・光熱費・通信費などの必要経費を引いて手元に残ったお金を営業利益といい、営業利益率はその割合になります。
営業売上が高くても、営業利益率が低いと美容室の経営的には厳しい状態にあるため、経費削減などの対策が必要です。
営業利益の計算方法は「総売上必要経費=営業利益」となり、営業利益率は「営業利益÷売上×100=営業利益率」で計算できます。
経常利益率
経常利益とは、売上高に本業以外の営業外収益を足した美容室の総収入より営業利益と営業外費用を引いた金額を指し、その割合が経常利益率です。
たとえばオーナーが美容室経営のほかに、セミナーを開いていたり美容学校の講師として得たりした収入などが営業外収益として計上されます。
経常利益の計算は「営業利益+営業外収益-営業外費用=経常利益」となり、経常利益率は「経常利益÷売上×100=経常利益率」となります。
美容室の営業利益率、平均はどれくらい?
経営している美容室の営業利益率がわかると、次に気になるのが一般的な美容室の営業利益率です。
経営状態のよい美容室であれば利益率が7~10%程度あれば経営状態がよいといわれています。
美容室経営では、売上に対して人件費の割合がもっとも大きく、ついで広告宣伝費や光熱費・材料費となります。利益率の高い美容室には集客率の高いスタッフが在籍していることが多いです。
1カ月に一般スタッフで60~70万円の売上ることができるのに対し、集客できるスタッフであれば80~90万円の売上ができます。そのため人件費が高くなっても集客のできるスタッフは必要だといえます。
利益率を上げるためには経費の見直しをしよう
営業利益率を上げるためにもっとも重要なのは経費削減です。いくら売上が伸びているとしても、経費が多くては手元に資金が残りません。
利益率を上げるためには、まずは経費のひとつひとつを見直して、必要な経費と削減できる経費に分けて、不要だと思うところは思い切って削減することが大切です。
経費削減をすれば利益率もアップして安定するためには、まず経費の見直しをしましょう。
美容室の必要経費にはどんなものがある?
利益率を上げるためには経費削減が大切なことは先ほどお話ししましたが、どのように経費削減をすればよいのかと悩む方も多いようです。まずは、美容室の必要経費にはどんなものがあるのかを知り、そのなかから無駄な部分を省いていきましょう。
ここでは、美容室の経費をこまかく解説しますので、そのなかから削減できる経費を探してみてください。
固定費
固定費とは毎月一定に発生する費用のことで、美容室を経営するにあたり毎月必要になる経費です。おもに家賃や水道光熱費・人件費・通信費などを指します。経費そのものをなくすのではなく、少しでも費用が少なくなるように努力することが大切です。
家賃
自宅で美容室を開いている場合を除いて、どこかのテナントを借りて美容室を営業するために必ず必要になるのが家賃です。家賃の相場は美容室のある地域や立地によって異なりますが、1坪1万円といわれていて都会であればもう少し高く、反対に田舎であれば安くなります。
また、売上の7~13%が理想的な家賃だといわれています。まずは店舗の規模と家賃とのバランスを考え、家賃が相場よりも高い場合は家賃の値下げ交渉をする、もしくは別の経費を削減しましょう。
水道光熱費
家賃の次に必ず必要になるのが水道光熱費です。家賃は毎月一定の金額ですが、水道光熱費は毎月変動し、夏の暑い時期や冬場の寒い時期は空調がフル活動するため高額になりやすいでしょう。
そのほかにも、来店するお客様が多かった月はシャンプーやドライヤーなどを使用する時間が増えるため、水道光熱費も高くなります。
大体の目安としては、電気代が3万円、水道代が4,500円、ガス代が8,000円程度と考えておくとよいでしょう。水道光熱費を削減するのは美容室を営業しているとむずかしいですが、無駄な電気や水道を使用するのを意識して控えるなどの毎日の取り組みが必要です。
通信費
お客様からの予約や問い合わせのためには、電話やインターネットなどの通信費は必要経費になります。とくに最近ではWEBサイトからの予約が多くなっているため、インターネット回線の契約は必須だといえるでしょう。
また、美容室内で利用できる無料Wi-Fiを取り入れている美容室も多く、お客様によってはフリーWi-Fiがあることが美容室を選ぶためのひとつの基準になっています。
リザービアのPOPシステムのような美容室専門の予約システムを導入している場合は、通信費として計上されています。通信費の相場は営業利益の4%くらいが目安です。
広告費
少しでも多くのお客様に来店していただくためには、美容室の宣伝活動が大切です。広告費は美容室を宣伝するための費用で、おもにキャンペーンなどのチラシの制作費や雑誌などへ掲載するために使われます。
また、最近ではインターネットのサイトを見て来店されるお客様も増えていて、ポータブルサイトへの掲載費などにあてられます。こうして美容室を宣伝することで、遠方のお客様や近くても美容室の存在を知らなかったお客様にアピールできます。
材料費
美容室における材料費とは、シャンプー剤やトリートメント材・パーマ液など、施術に使用するものをいいます。こういった材料費の価格は幅広く、安い製品に変えて経費を削減することもできますが、粗悪な製品を使用していると、パーマやカラーの仕上がりに影響しかねません。
そのため、材料費を削減するときにはバランスを考えながら選ぶようにしましょう。一般的な材料費の目安は10%だといわれています。
雑誌
美容室の待合所にはヘアカタログだけではなく、グルメ誌・タウン誌・週刊誌やファッション雑誌など、さまざまな種類の雑誌が置いてあり、多くのお客様は雑誌を見ながら待ち時間を過ごします。
雑誌には月刊誌や週刊誌があり、1冊は数百円であっても、1カ月にお客様が好みそうな雑誌をすべて購入するとかなりの金額になります。雑誌の購入費は1カ月5,000円位を目安として、ターゲットとしている客層のお客様が好みそうな雑誌を選びましょう。
人件費
美容室を経営するうえで家賃と同様に大きなウエイトを占めるのが人件費です。一般的には営業利益の40%を占めるともいわれており、美容室のような接客をメインとする業種では集客できるスタッフが1人でも在籍することは大きな強みになります。
なお、売上が下がったからといってスタッフの給与を下げたり、解雇したりすることはおすすめできません。理由は、給与を下げてしまうとスタッフのモチベーションに影響してしまうこと、そして給与が低いと、求人を募集しても人が集まらないことがあげられます。
人件費の平均は?利益率から人件費を考えよう
人件費は営業利益率の40%程度が理想だといわれています。地域にもよりますが目安としては、月に80~100万円の売上ができるスタイリストの給与の平均は約25万円。福利厚生費などを含めると30万円ほどになります。
例をあげると、月の売上が100万円で営業利益が90万円の場合に、人件費が50万円前後であれば平均です。40万円前後であれば好調、55万円以上人件費がかかっている美容室は、生産性がよくないと考えられます
その他の経費
上記でご紹介した家賃や人件費、水道光熱費などの固定費のほかにも、美容室経営では経費が必要です。ここでは、上記以外の経費についてご紹介します。
とくに開業したときや確定申告時など必要になり、これらの経費は毎月支払うものではありません。ですが、美容室の経営には欠かせないものになり、経費削減をする際にはすべての経費を見なおす必要があるため、どのような経費なのかを把握しておくとよいでしょう。
保険
賃貸で美容室を営業している場合は、開業時にテナントを契約する際に火災保険の加入を義務付けられているところがほとんどです。
最近では、美容室やエステサロンやネイルサロンなどのサロン用の保険も販売されていて、施術中の事故やトラブル、クレームや盗難などに対応可能なので、加入されている美容室が増えています。
これらの保険は、補償内容にもよりますが年間で数万~十数万円かかることが多く、年払いまたは月払いになります。
税金
美容室を経営していると、売上に応じて税金を納めなければいけません。税金は美容室が法人経営なのか個人事業主なのかによって税金に関する条件が異なります。
個人事業主の場合は、店の売上の固定資産税、消費税、個人事業税、自動車税、償却資産税、不動産取得税、印紙税などの税金が経費として計上できます。開業して間がないうちは、法人化せずに個人事業主として登録して、確定申告をする際には控除を受けられる青色申告をしましょう。
税理士
美容室の経営において税理士に依頼するメリットは、確定申告や税金に関することをすべて税理士に任せられるため、美容室の営業に集中できることです。
個人事業主の場合は、毎年3月の確定申告の時期になると1年間の請求書や領収書を整理し、記帳するのはかなりの時間と労力が必要です。
税理士に依頼するには、確定申告時に申告書の作成を依頼する場合は7万円ほど。顧問契約を依頼する場合は月に2万円からと必要になります。最近では美容室の経営に特化した税理士もいるようです。
雑費
美容室経営での雑費とは、文房具代やお客様にお出しするお茶やお菓子代、使用している器具が壊れたり、床やクロスが破損したりしたときの修繕費が含まれます。またトイレットペーパーや電球などの消耗品など、上記に振り分けできなかったもので経営に必要なものを雑費として計上します。
ひとつひとつは金額が低くても、まとめて計算をするとある程度の金額になり、修繕費のように突発的に必要になるものもあるでしょう。月にどれぐらい必要になるのか計算しにくいですが、経費削減の際には見直ししやすい経費だといえます。
経費を削減する方法。コツを押さえてコストカットしよう
営業利益率を上げるため、はじめにおこなうのがコストカットです。無駄な支出を抑えて、経費をスリム化しなければいけません。しかし、経費には下げていいものと下げてはいけないものがあり、バランスを見ながらコストカットをしましょう。
ここでは、効果的なコストカットのコツをご紹介します。
光熱費を見直そう
お客様に大きな影響を与えずコストカットできるのが光熱費です。冷暖房などや空調の温度を変えてしまうと暑すぎたり寒すぎたりして不快に感じるお客様もいますので、温度はあまりいじらないようにしましょう。
光熱費のコストカットには、電球をLEDに変えるのがおすすめです。通常の白熱電球であれば1,000~2,000時間程度使用可能ですが、LEDであれば単価は高いですが1万3,000時間使用できるため、コストパフォーマンスに優れています。
広告費を見直そう
広告は美容室の立地やそのほかの条件によって、効果的な広告方法が異なります。たとえば、開業当初であれば、ひとりでも多くのお客様に知ってもらうために大々的な広告活動は必要です。
また美容室専用のポータブルサイトを使って宣伝しているサロンもありますが、最近ではInstagramなどの無料で利用できるSNSを通じて、サロンを宣伝するお店も増えています。こうした無料ツールをうまく利用して、広告費をカットしましょう。
材料費やリース代を見直そう
美容室を開業するには設備投資が必要になります。しかし専門設備は高額になるため、リースを利用している方も多いでしょう。
長期間リースしていると、古いスペックのものをリースしている可能性があるため、定期的に見直しをして、同じスペックで安くリースする方法を模索してみましょう。
ほかにも、シャンプー剤やパーマ液などの材料費は販売している店舗によってはまとめ買いをすると割引をしてくれるところや、キャンペーンなど割引価格で販売するときを狙って購入すると少しでもコストカットになります。
雑誌や消耗品を見直そう
美容室にとって必要なアイテムのひとつともいえる雑誌ですが、ターゲットの客層が好みそうなジャンルの雑誌をすべてそろえているとけっこうな金額になります。
最近では、雑誌を読み放題のサブスクリプションサービスが充実しているので利用してみるのもひとつの方法です。
また、文房具などの消耗品は購入する店舗によって価格が違います。少しでも安く購入するためにもお店選びは大切です。インターネットでも、美容室で使用しているような消耗品を安く販売しているショップがありますのでチェックしてみましょう。
利益率を上げるために必須なのはリピーターの獲得!
美容室が営業利益率を上げるための最善の方法は、リピーターを増やすことです。キャンペーンをしてはじめてお客様が多数来店されたとしても、美容室としては大きな利益にはなりません。なぜならキャンペーンをするにあたり、広告宣伝費をかけてさらに安くサービスを提供するからです。
しかし、リピーターのお客様はキャンペーンに関係なく再来店してくれるので、宣伝広告費が必要ありません。また、サロンを気に入って来店されるお客様は、通常価格であってもサービスを受けてくれるので単価も高く、リピーターの獲得は必須だといえます。
効率的なリピーターの増やし方とは?
リピーターを増やす方法はいろいろありますが、まずははじめて来店されたお客様が「また来たい」と思われるようなきっかけを作る必要があります。
たとえば、2回目以降に利用できるクーポンを作成してお得感を出したり、サロンのInstagramやFacebookなどを更新してお店の情報をアップしたりしてお客様にアピールをしましょう。
そのほかにも、LINEの友達登録の促進やメルマガやDMを使ってクーポンを配布するなどして集客しましょう。また、違う方法としてブランディングでサロンの価値をアップさせて、サロンをブランド化する方法もあります。
リピート予約につながるツールを活用する
リピーターを増やすにはまずはお客様に満足していただき、アフターフォローをおこないましょう。たとえば施術後にカウンセリングをおこない、施術の内容を説明して次回来店の時期を示唆します。このときに「このサロンでなければならない理由」を伝えましょう。
その際に、リザービアのサロン向けアプリをインストールしてもらいます。このアプリには予約やキャンセルをおこなえる機能やポイントカード機能、DM機能がついており、お客様へメッセージを送信したり、お得なクーポンを配布したりできます。お客様に積極的にアピールできるおすすめしたいツールです。
美容室経営のコツを押さえて利益率アップを狙おう
美容室経営を軌道に乗せるために大切なことは2つあります。それは、無駄な経費を見直して経費削減をおこない営業利益率を上げること、もうひとつはリピーターを増やすことです。
美容室の経営では、サロンの取り巻く環境や景気などで利益率は変動します。ですが、売上と必要経費のバランスが保たれていて、リピーターが多いサロンは安定した経営になります。
そのためには定期的に経費を見直して、顧客の来店状況を確認する顧客管理を徹底しましょう。