美容師には、正社員やパートタイマー・アルバイトのようにサロンに雇用されるほかに、業務委託として契約する働き方もあります。しかし、「業務委託の美容師」という言葉は知っていても、どういうものなのか詳しくは知らない、という人もいるのではないでしょうか。
そこで今回は、正社員ではなく請負として働く、業務委託の美容師について解説します。働き方に悩んでる美容師の方は、ぜひ参考にしてください。
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目次
業務委託の美容師とは?
まず、業務委託の美容師とはどんなものなのかについて見ていきましょう。
正社員やパートタイマー・アルバイトの美容師は、サロンの従業員として雇われる形態で働きます。対して業務委託は、個人事業主としてサロンと契約を結び、サロン業務を請け負う形態の働き方です。
業務委託の美容師が請け負うのは、サロン業務のなかでも主に接客や施術といった、お客様の対応です。集客や在庫管理、事務作業や店内の清掃・管理などの業務は、美容室側が対応することがほとんど。
ただし、サロンと雇用関係とはならないため、労働基準法が適用されないことには注意しましょう。
「業務委託」と「面貸し」の違いは?
業務委託と似たような美容室の働き方に、「面貸し」があります。業務委託と面貸しの違いをかんたんに紹介します。
業務委託は、契約したサロンに出向いて、来店するお客様の「施術業務」を請け負い、売上から契約に応じた報酬を受け取る働き方です。
対して、面貸しはサロンの一部をレンタルしてお客様に施術を請け負います。面貸しの場合は集客や予約管理、施術、経理など、施術以外のすべての業務を自分で行う必要があります。
業務委託契約を行うフリーランス美容師の数はどれくらい?
内閣官房日本経済再生総合事務局が公表している「フリーランス実態調査結果」によると、日本のフリーランス人口は2020年で約462万とされています。また、日経MJはフリーランス美容師として働いている数は約83,000人と発表しました。
美容師は約50万人いると言われているため、フリーランス美容師は全体の約16%を占めています。フリーランスの増加要因は、副業を解禁する企業やマッチングプラットフォームの充実が挙げられます。
引用元
内閣官房日本経済再生総合事務局:フリーランス実態調査結果
「フランチャイズ」と「業務委託」で700店舗へと成長したAgu.グループ
Agu.グループは、年間来店者数410万人以上を誇る日本最大級の美容室グループです。2013年にフランチャイズ展開を始め、2022年の3月に700店舗を達成しました。
Agu.グループがこれほどまでに店舗を増やすことができた理由は、独自のフランチャイズモデルと業務委託形態での経営をしているからです。
業務委託契約を歩合制にしているため、費用対効果が高いです。業務委託形態での経営で成功している企業を見ると、重要性がわかります。
美容室の多様化が進んでいる
美容室の店舗増加にともない、競争率は高くなっています。美容業界で生き残るために運営の多様化が進んでいます。先ほど紹介した業務委託サロンもその一例です。そのほかにも、シェアサロン(面貸し)や美容室モール、訪問サロンを取り入れている美容室があります。
美容師が業務委託契約で働くメリットは?
美容師が正社員ではなく業務委託契約を選択する理由は、いくつかのメリットがあるためです。業務委託の働き方にはどんなメリットがあるのか、代表的なものを見ていきましょう。
1.比較的自由な働き方ができる
ひとつめに挙げられるのは、比較的自由な働き方ができるからです。サロンに雇用されて従業員として働く場合は、出勤日や勤務時間が決められています。対して業務委託で働く場合は、自分の都合に合わせて働く日や時間を決めることができます。
とはいえ、サロンによっては「1カ月で◯日以上出勤する」「一日のうち◯時間以上出勤をする」といった契約を交わすこともありますので、契約内容はよく確認しておきましょう。
2.複数のサロンと契約しても問題ない
従業員として働く場合、サロンによっては規定で副業や兼業が禁止されることもあります。しかし、業務委託契約はサロンに雇用されている立場ではないので、複数のサロンと契約しても規定違反にはあたりません。
また、労働法の関係で、兼業をすると一日の労働時間の規制を超えてしまうことがありますが、業務委託は労働基準法が適用されないため、労働時間の縛りもありません。
3.働けば働くほど収入が上がる
給料を得る場合、一般的には固定給として決まった金額を受け取ることが多く、歩合制を採用しているサロンでも給与が2倍、3倍と大きく上がることは少ないです。
業務委託の場合は、売上から割合で報酬を得る契約を交わすことが多いため、施術人数が増えれば増えるほど、収入も比例して上がります。
4.ひとりのお客様とじっくり向き合える
基本的に業務委託は、アシスタントなどをつけず美容師ひとりで対応するため、カウンセリングから仕上げまですべてを担当します。接客のかけもちがなくなり、じっくりと時間をかけて丁寧に接客できるため、お客様満足度も向上しやすいと言えるでしょう。
美容室が業務委託契約をするメリットは?
美容師が業務委託契約で働くことにはいくつかのメリットがありますが、一方で美容室も、業務委託契約をすることで得られるメリットがあります。
ここからは、美容室側のメリットを見ていきましょう。
1.柔軟に条件を提示できる
業務委託ではない契約、いわゆる正社員の登用は雇用契約であり、労働基準法などの法律が適用されます。例えば、労働時間の上限や休日労働の手当などを労働基準法に従い設定しなければいけません。
一方で業務委託契約には、労働基準法の適用がないため、労働時間の設定や残業代の支払いが不要です。報酬は固定ではなく、歩合制にすることも可能です。通常の雇用契約と異なり、業務委託契約は、経営者が比較的、自由に条件を決められることがメリットと言えるでしょう。
2.人件費や育成コストを抑えられる
一般的に人件費は営業利益の40%を占めると言われており、それ以上を占める場合は生産性があまりよくないと考えられています。これとは別に、正社員を採用するとコストは数十万円かかります。新人を雇うのであれば、加えて育成コストがかかり、費用がかさむことでしょう。
業務委託であれば、経験のある美容師を条件付きで雇うことができます。育成コストはなく採用コストも低いため、結果として固定費を抑えることが可能です。
3.節税効果、社会保険料を減らすことができる
正社員と業務委託の違いは、雇用関係の有無であると紹介しました。業務委託に雇用関係はないため、社会保険料の負担がありません。また、外注費として経費にすることができます。
たとえば、売上500万円のうち外注費が100万円だった場合、納付する消費税は売上から経費を引いた400万円で算出されます。給与の場合は売上500万円が課税対象になるため、業務委託による外注には節税効果があります。
美容師と業務委託契約をする際に気をつけたいポイント
業務委託は雇用関係がなく労働基準法が適用されないため、美容師は複数のサロンと契約しても副業などとみなされず、ある程度自由な働き方ができます。一方で、美容室にとっては幅広く条件を決められることなど、双方にメリットがあります。
しかし、なにも考えずに好きな条件を設定してしまうと後にトラブルに繋がる可能性があります。とくに、雇用と契約の区別はハッキリとしていなければいけません。もしも雇用関係だと判断された場合には、何らかの問題が発生してしまう可能性があります。
そのためには、どんなことに気をつければいいのか見ていきましょう。
1.報酬体系を確認する
業務委託は代金に関するトラブルが多く、場合によっては裁判にまで発展します。例えば、平成29年11月21日に判決された(東京地裁)実績に基づいた、代金未払いを請求した事案。結果として裁判所は、代金請求権が発生すると判断しました。
判例から学ぶべきことは、報酬は何によって決まるかという点です。
美容室であればおそらくお客さんひとりの施術完了で報酬が決まることでしょう。しかし、「ひとりの施術完了」において、詳細が必要です。
例えば、パーマやカラーの注文を受けた場合、受託者が行うのか美容室側で施術をするのか、もしも美容室側でやることを委託者側が遂行すれば、その分の代金が未払いになる可能性があります。
そのため、業務の範囲や報酬の決定を詳細にしなければいけません。注意してください。
2.勤務日時や契約期間、契約の更新を明確化しておく
労働日数や勤務時間は雇用関係とみなされないよう、ある程度美容師の希望に即して決める必要があります。
また、契約期間終了後に更新をすることがあるかなども事前に明確化しておきましょう。
3.契約書の内容
業務委託契約書を作成する際、記載しておくべき内容をまとめます。
- 業務内容
- 契約期間と更新、解除
- 報酬と支払い方法
- 契約条件の変更
- 保証および損害賠償
- 情報の守秘義務
- 受託者の個人情報
業務委託を行うために、最低限これらの内容を記載しておきましょう。業務内容、期間、報酬、禁止事項などすべて重要な項目になります。詳細を明記することで契約がスムーズになることに加えて、後のトラブルを避けることができます。
4.情報漏洩の対策をする
外部の美容師に業務を任せるため、情報漏洩のリスクがあります。美容室側で気をつけるべきは、顧客の情報やその他美容室の情報漏洩でしょう。漏洩リスクを下げるために、秘密保持義務を設けるといいでしょう。
まず、秘密情報の開示条項を設け、委託者にどのような情報を開示するのかを示します。そして、それらの情報を第三者へ開示および漏洩を禁止する義務を加えます。
秘密保持義務は難しい条項ではありません。秘密保持について困っている場合は、経済産業省が公開している「営業秘密~営業秘密を守り活用する~」を参考にしてみてください。
5.雇用関係と判断されないようにする
契約上、「業務委託」と書いていれば雇用関係にないというわけではなく、実態がどうであるかが問われます。例えば、労働日や労働時間を美容師が自由に選択できるようにするといいでしょう。
また、業務について命令や細かい指示をしないようにしましょう。なぜならば、労働法が適用される雇用契約とは違い、業務委託契約は美容室と美容師が対等に交わす契約だからです。
業務委託契約のサロン運営には予約システム「リザービア」がおすすめ!
業務委託契約では、集客や顧客管理、その他の業務は美容室側が担当します。そのため、どのお客様を任せるかといった予約管理はとても重要。
そこでおすすめしたいのが、予約システム「リザービア」です。リザービアでは、スタッフごとのシフトに合わせて予約枠やメニューの設定ができるため、業務委託契約の美容師を指名する予約を管理することも可能です。
また、メニューごとに使用する設備の設定ができるため、複数のお客様を同じ時間帯に施術する際にも、使用設備が重複しないよう管理も可能。サロンを円滑に運営するための、さまざまな機能が揃っています。
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- 在庫管理を自動化したい
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業務委託は美容師の働き方のひとつ
業務委託は、正社員やパートタイマー・アルバイトのような、美容師の働き方のひとつ。美容師は美容室の従業員としてではなく、契約を交わして主にお客様の接客業務を請け負います。
美容師は比較的自由な働き方ができる一方で、美容室は人件費や育成コストを抑えられるなど、双方にメリットがありますが、雇用関係とみなされてしまうと労働基準法が適用され、何らかの問題が発生する可能性もあります。
ハッキリと業務委託契約であるとわかるよう、双方の条件をよくすり合わせて契約しましょう。
美容師と業務委託契約する際には、予約システムリザービアの利用がおすすめ。業務委託契約を交わそうと考えている美容室は、リザービアの導入を検討してみてはいかがでしょうか。