美容室の経営がうまくいかない。頭でわかってはいるけれど、どう行動すればいいのかわからない。その原因は、美容室の経営課題をきちんと理解していないからかもしれません。現状の数字を把握して課題を明確にしなければ、現状から抜け出すことはできません。
今回は美容室の経営課題をデータを基に解説するほか、経営が失敗する原因や成功するためにやるべきことを紹介します。
まずは資料をご覧ください
目次
美容室経営の難しさについて
美容室の売上は店舗へ訪れるお客様が多いほど高まります。より多くの顧客を獲得するためには、データを知っておくと便利でしょう。
美容室経営の難しさを、美容室の利用数、美容師の新規免許登録件数、美容師の数のデータを基に考えていきます。データを見ることで美容業の動向を知ることができるので、参考にしてください。
美容室の利用率(男女別)
美容センサスが発表した、2021上期「15~69歳男女の美容サロン利用実態」では、年間利用回数が女性は平均4.12回、男性が5.39回です。結果として、男女ともに年間の利用回数は前年よりも減少しています。
利用回数が減ることは、競争が激しい美容業界ではいい傾向とは言えません。そのほかにも、利用者は支出を懸念したり、ロコミの評価を見て通うかどうかの判断をする傾向があります。いずれにせよ美容室は対策をする必要があるでしょう。
美容師の新規免許登録数件数は、ほぼ横ばい
公益財団法人理容師美容師試験研修センター※1は、令和3年に登録された美容師免許(新規)が17,936件と公表しました。平成21年に登録件数が2万件を超えて以降12年間は、2万件を下回っています。
美容師の登録をしているものの、美容業界に就職していない人も少なからずいます。しかし、毎年新規の登録がされるため美容師の数は今後も増えることでしょう。美容師が増えれば、美容室の数も多くなります。今後も美容業界の競争率は高くなるかもしれません。
美容学校の数と入学者数
政府統計の総合窓口で公開されている令和2年度学校基本調査※2では、美容学校の数は278施設、入学者数は18,303人。その年に卒業した人数は、14,950人で関係分野に就職した人数は13,437人です。令和2年より前のデータと比較してみます。
直近のデータを見ると、入学者数がほとんど変わらないことがわかります。そして卒業生の90%は関係分野に就職しています。美容師が増え、美容室も多くなるということが納得できるデータとなりました。
収入と支出のバランスで美容室は廃業!?
美容室は、さまざまな問題を抱えています。資金不足・人手不足・販売不振などで収入を得ることができず、支出ばかりが重なり赤字となってしまう、いわゆる収支のバランスを保つことができなくなっています。
なぜ廃業に追い込まれてしまうのか、原因の詳細をご紹介したいと思います。これらを知り、自身の美容室の収支を見直す機会にしてください。
運営費が高いため支出が多い
美容室経営には、家賃・水道光熱費・広告費・人件費など多くの固定費用がかかります。収入よりも支出が大きい場合、固定費を見直さなければいけません。経費削減に取り組みやすいものは、広告宣伝費です。
大手ポータルサイトの掲載費用は決して安くありません。広告宣伝費用をゼロにする必要はないものの、費用を抑えるために別のポータルサイトへ掲載することがいいかもしれません。複数登録しているのであれば、いくつか掲載を辞めてもいいでしょう。
集客対策をしていない
美容室を構えてさえいれば、勝手にお客様が来てくれるという考えは大きな間違いです。なぜなら、美容室の数は多く競争率が高いからです。集客ができない原因は、大手ポータルサイトのみに依存しているからかもしれません。
ひとつのみではなく、あらゆるところから集客をしなければ、ほかの美容室と差をつけることはできません。いまは、情報をかんたんに発信できるため、SNSやホームページによる集客を試みるといいでしょう。
新しい人材を確保できない
美容業界は比較的に年収が低く労働時間が長いことから、ブラックなイメージを持たれています。厚生労働省が公表した、「新規短大等卒就職者の産業別離職状況」※3によると、1年目の離職率は30%です。
美容師の採用にはコストがかかるため、早いうちに離職されると経営が難しくなります。新しい人材をコスト面も考慮して効率よく採用するためには、求人サイトだけでなくInstagramなどSNSを活用してスカウトする方法があります。
そもそも経営の勉強ができていない可能性も!
施術に自信があるのに、経営がうまくいかないと悩んでいる経営者は多いかもしれません。美容室の経営は技術だけでは成り立ちません。美容室の運営方法、いわゆるマーケティングの力を身につける必要があります。
技術と経営はまったく別物です。いくら技術があっても、集客ができなければ収入は得られません。集客方法や数字を見る力を、本や他の経営者から学ぶことをおすすめします。情報はかんたんに手に入る時代なので、ぜひ取り組んでみてください。
美容室は顧客を取り合うモデルになっている
美容室の収益にはお客様の来店が不可欠です。利用側は、年間に通う回数がある程度決まっており大幅に増加することはありません。
一方で、美容室の数は増え続けています。需給のバランスはいいとはいえず、顧客を取り合うモデルになっています。厚生労働省が公表した「美容業概要」※4でも同様に、店舗の過剰や客数の減少が美容業の問題としています。
将来、日本人口が減少することも考えると美容室の経営は大きく変わるかもしれません。
美容室の経営者課題を知る
美容室の経営を改善するためには、課題を知っておかなければいけません。特に取り組むべき経営課題を4つ紹介します。
- リピーター獲得
- 集客強化
- システム導入
- 育成の強化
美容室の経営を軌道に乗せるためには、これらの課題は避けることはできません。美容室の売上をアップさせ、経営を維持していくために参考にしてください。
経営課題①リピーター獲得
新規客からのリピート獲得、または複数のリピートをしてくれるお客様の維持は美容室経営の大きな課題です。特に新規客のリピート率は、既存客のリピート率に比べて低い傾向にあります。
リピーターの数が多ければ多いほど美容室の利益をあげることができます。リピート率を高めるためには、次回クーポンの配布や来店後にフォローを入れるなどの対策を講じるといいでしょう。利用者がまたその美容室に通う理由ができるため、リピート率が上がるかもしれません。
経営課題②集客強化
リピーター獲得は大切ですが、その前に新規のお客様を呼び込まなければ次に繋がりません。有効な手段として新規獲得のための広告作成、大手ポータルサイトへ登録が挙げられます。
しかしそれらに頼りすぎると出費が多くなります。広告掲載などに依存せず、集客を無料でできるSNSやコストを抑えた自社ページを活用することで集客の幅を広げることができます。
もし、SNSを始めるのであればInstagramがおすすめです。なぜならInstagramは、写真や動画をメインに投稿するため、ヘアカラーやカットの魅力を伝えたい美容室と相性がいいからです。
経営課題③システム導入(業務効率化)
美容室が1日に営業できる時間は限られています。ひとりでも多くのお客様を対応するために、時間を有効に使わなければいけません。
人がやらなくてもできる業務は積極的にシステム化していくべきです。たとえば、予約やレジ締め、カルテの電子化が挙げられます。
最初は苦労するかもしれませんが、長期的に見るとパフォーマンスはよくなります。
経営課題④育成の強化
他の美容室と差をつけるためには、技術力の向上を図るべきと言えるでしょう。現状に一喜一憂してはいけません。トレンドが頻繁に変わる美容業界では、高い技術が求められます。技術を磨くことで、お客様の要望に対して柔軟に応えることができます。
オーナー自ら美容師の育成をする時間を確保することがいいでしょう。もしもそれが難しい場合は、外部の研修やセミナーの参加等を積極的に取り入れましょう。
美容経営者3人から学ぶ成功の秘訣
美容室の経営がうまくいかないとき、なんとか自分だけで勉強して切り抜けようと考えてしまうかもしれません。もちろん、自ら貪欲に学ぶことはいいことです。しかし、得られるものには限界があり空回りしてしまう可能性があります。
自分では思いつかないようなアイデアや発想に出会うためには、他の人の意見を取り入れると効果的です。特に成功してる人の意見を聞くことをおすすめします。
成功に至るまでの経験や考え方を知ることで、新しい引き出しを得ることができるでしょう。最後に、美容室を成功させている3人の経験や考え方を紹介します。
頭の中や考え方を自分のものにする
20年以上にわたり美容室を運営している「apish」の代表取締役の坂巻哲也さん。流行が激しく変わることに加えて競争率が高い美容業界をどのようにして乗り越えてきたのでしょうか。それは、頭の中や仕事に対する考え方を学び自身の成長を言語化してきたからです。
常に学ぶ姿勢を忘れずに努力して、目標を掲げて楽しみながらクリアすることで長続きするとお話していました。
「apish」をモデルケースに美容業界が発展すればいい。志の大きさが成功の源に【apish CEO 坂巻哲也さん】#2技術向上・お客さんが喜ぶヘアデザインを増やす
表参道と南青山に店舗を構える「STRAMA」代表の豊田永秀。オープン当初はお客様がゼロで、悔しい思いをした豊田さんでしたが、広い美容室の特徴を活かした結果新規のお客様が増えました。
豊田さんは、お客様やスタッフのために必要なことを考えた際、技術向上・お客様が喜ぶヘアデザインを増やすべきだとしてトレーニングや勉強会に注力しました。
美容室の経営に困った際は、お客様やスタッフに必要なことを考える時間を設けてみるといいですね。
ハサミを置くことはしたくない。生涯クリエイターでいられるサロン経営を【STRAMA代表 豊田永秀さん】#2技術を通じて自分含め人が成長する
2000に設立され、海外含め30店舗の美容室を運営されている「AFLOATグループ 株式会社エターナル」の代表、宮村浩気さん。Instagramのフォロワーは3万人でカミカリスマ2020年~2022年で三ツ星を獲得されています。
宮村さんは仕事に悩む人へ向けて好きなことをもっと好きになるために飛び込んで欲しいと述べていました。
宮村浩気 interview:「悔しい」という思いがあったからこそ、報われる「努力」がある計画を立て前向きに進むことが大切!
美容室に限らず、経営では多くの課題に悩まされることでしょう。問題を全て解決しようとすると、やることが多くなってしまい結果的に中途半端になります。
まずは、ひとつの課題に取り組むことからおすすめします。優先順位を決めて計画的に実行していくことで余計なことを考えず、目の前の問題に注力を注いでください。それを積み重ねていくことで、美容室の経営を軌道に乗せるときが訪れるはずです。
※1:新規免許登録件数-公益財団法人理容師美容師試験研修センター
※2:令和2年度学校基本調査-政府統計の総合窓口
※3:新規学卒者の離職状況 – 厚生労働省
※4:美容業概要-厚生労働省
引用元:
15~69歳男女の美容サロン利用実態-(株)リクルート ホットペッパービューティーアカデミー調べ
学校基本調査-令和2年度 結果の概要--文部科学省