2017年以降、それまで美容室を利用していた男性のお客様が、徐々に理容室に回帰する動きが起きています。
現在では、SNSや各メディアで有名なバーバーも増えており、理容の価値を求めて、日夜たくさんのお客様が来店する一大ブームとなっています。
一方で、バーバーや理容室の価格差は、店舗によってまちまちです。バーバーを経営されている経営者や、これからバーバーの開業を検討されている方の中には、価格の設定にお悩みの方も多いのではないでしょうか。
今回は、バーバー・理容室の価格を決定する方法と、価格の幅が生まれる理由を深掘りし、売り上げアップを目指す方法を紹介します。
今回の記事は、都内を中心に5店舗を展開する人気のバーバー『KINGSMAN TOKYO BARBERSHOP』の代表、吉田 奈津樹様に記事の監修とコメントをいただきました。ぜひ、理容室経営の参考にしていただければ幸いです。
この記事の監修者
目次
バーバー・理容室の価格幅が生まれる理由とは?
価格幅を考える上で、お客様目線に立ち返って価格を考えることは重要です。
まずは、ホットペッパービューティーアカデミーが公開している美容センサス データブックのデータを参考にしながら、理容室を利用する男性顧客が求めている価格・サービスを把握しましょう。
理容室を使う男性の、一回あたりの利用料金は?
データによると、男性の1回当たりの理容室の利用料金は約2,500円です。年間利用率は約6回と、2ヶ月に1回ほど利用していることがわかります。
なお、2023年の利用率を見ると、全体の43.7%の人がバーバーや理容室を1回以上利用しているほか、1回あたりの利用金額は、20代が一番多いということがわかります。
どんなメニューをよく利用するのか?
男性が理容室を訪れる場合、その9割がカット目的で利用していることがわかります。その次にシェービング、眉カット、カラーなど、自分ではできないものや付加価値のあるメニューを利用していることが伺えます。
店を選ぶポイントは?
理容室を選ぶポイントは、「料金がリーズナブル」であることが38.4%と高く、次いで「自宅から近い」ことが38.1%という結果でした。同様に、継続理由についても見てみると、「料金がリーズナブル」が38.7%、「自宅から近い」が37.3%と、理容室を選ぶポイントと継続理由が近しいことがわかります。
しかし一方で、データを細かく見ると、理容室を選ぶポイントでは「交通の便がよい」が約11%で5位にランクインしているのに対し、継続理由の5位は17%の「待ち時間が少ない」に軍配が上がっています。
つまり、初回来店時とリピート時で、お客様の需要は若干異なるという点が挙げられます。
バーバーの施術に付加価値をつけるには
次に、一般的にバーバーで提供されることが多いメニューから、付加価値のつけ方を検討してみましょう。
カット
カットの価格は、店舗によって1,000円台から、高価格店では10,000円を超えるものまで様々です。
一般的に低価格の店舗は、カットのみで、シャンプーやシェービングのないものが多く、高額になると、トップスタイリストによるカットや、「総合調髪」といった形で、カット・シャンプー・顔そり・マッサージが一体になったコースを提供しているケースが多いです。
コースメニューの提供は、顧客単価をあげる上で非常に合理的と言えますし、質の高いメニューを提供することができれば、付加価値となります。
また近年では、フェードカットの人気により、バーバーに求められるサービスが変わっています。
スキンフェード等の施術は、格安店や一部の店舗では対応していないケースもあるので、付加価値として機能します。
また、フェードのメンテナンスのためのメニューを別価格で設定している店舗も近年では見られ、通常のカットよりも回転率が高い分費用を下げて提供しているケースもあります。
パーマ・縮毛矯正
一口にパーマや縮毛矯正といっても、施術内容によって価格は変わってきます。
一般的な価格設定は、近隣の店舗や扱う薬剤、スタイリストの技術によって大小様々ですが、スパイラルパーマやツイストパーマなどの特殊パーマには追加の料金設定が必要なケースもあります。
また、単品メニューでは予約を受け付けず、カット・シャンプー込みで予約を受け付けるバーバー等、営業スタイルによって幅があるのも特徴です。
ヘアスタイルに関しては、ドレッドやブレイズといった、専門的な技術を要するヘアスタイルは、対応するバーバー・サロンが少ない分、付加価値に繋がるため、価格にも大きなインパクトがありますが、その分習得し集客につなげるためには、かなり高いハードルがあります。
カラー
バーバースタイルの店舗では、派手なカラーよりも落ち着いたスタイルを好む方も多く、美容室のような豊富なカラーメニューを設定している店舗は少ないですが、その分バーバースタイルとブリーチ+カラーの融合といったようなスタイルを提供できれば、施術に付加価値を持たせることができます。
また、白髪染めの需要は根強く、カットやシェービングを含めたセットで提供しているバーバーは多く、通常の白髪染めと、ぼかし程度の白髪染めで価格の差分をつけているケースも多くあります。
白髪を活かしたスタイリングを提案・提供できると、バーバーの顧客層ともマッチし、付加価値に繋げることができます。
サブメニュー(ヘッドスパ・シェービング)
一般的にサブメニューの相場は、あまり高くないものが多く、約1,500〜4,000円で提供されるものが多いです。
特に理容室のヘッドスパは、ヘアケアの需要から20代後半以降のお客様に人気で、提供する店舗の多い施術です。
また、シェービングを単体で提供する店舗もあり、レディース用や美容効果のあるものを売りにしているバーバーも近年では見られるようになりました。
こうしたメニューは、単体で付加価値を持たせることは難しいですが、メインのメニューとの組み合わせで、自サロンの強みとすることができます。
メニューの値上げをするためにはどうすればいい?
お客様にとっても、すでに提供されているメニューの価格が上がるのは、懸念となるはず。
したがって、店舗で提供する価値を何も変えずに、大きく値上げすることは難しいと言えます。
では、現在の客単価やメニューが、適正ではないと感じた場合、客単価を上げるためにはどのようにすればよいかを考えていきましょう。
値上げしたらお客様は離れてしまう?
ホットペッパービューティーアカデミーのデータによると、利用中のサロンの値上げ状況について、男性の約3割が「値上げがあった」と回答しています。
さらに約1割以上の人が「今はまだ値上げされていないが、今後値上げの予定がある」と回答していることから、男性利用者の約4割が値上げの影響を受けた、もしくは受ける予定であることがわかります。
さらに、同データの「値上げ後の利用意向」を見ると、約7割が「現サロンを今までと同様に利用し続ける」と回答しており、年代別で見ると、40代以降のお客様にその意思が高いことがわかります。
しかしその一方で、20代以下の若年層の男性では、「現サロンを利用し続けるが、利用頻度が減る」と回答しており、若年層のお客様のほうが、値上げした場合に店舗に来ていただけなくなるリスクが大きいと言えそうです。
まずは、お客様がサロンに来る理由を把握しよう
まずは、サロンに長く通っていただいているお客様に、「なぜサロンに通っていただけるか」をヒアリングしてみるとよいでしょう。
もし、お客様から「値段」を価値に感じているという意見が多い場合は、値上げはリスクになってしまうので、慎重になったほうがよさそうです。
値段以外の部分で、価値に感じていただける要素があれば、そこを強みとして、より特化していくことで、高単価を獲得できるチャンスとなる可能性があります。
値上げをするための準備をしよう
理由のない値上げは、お客様の心情が悪化してしまうため、理由をお客様に明示しましょう。
物件や人件費、原材料の高騰等、値上げを検討している場合には、その背景となる理由があるはずです。
お客様側に詳細な理由を説明をする必要はないですが、特に常連のお客様には、値上げが必要な場合、事前に理解していただくように通知しましょう。
値上げに見合う価値を提供しよう
値上げをする場合は、その価格に見合う価値を提供する必要があります。
単に全体を値上げをするのではなく、特定のメニューの値上げをし、その代わりに薬剤をアップグレードする、といった説明があれば、お客様からも理解を得やすいでしょう。
また、セットメニューを用意し、個別メニューよりお得感を設定することで、個々のメニュー価格の見直しを図るのもいいでしょう。
セットの場合、施術時間の効率が良いため、価格を安く設定できるのは合理的といえます。
また、複数名スタッフのバーバーの場合、スタッフの指名料を細かく設定し、スタッフの人気度合いによって価格差をつけてもよいでしょう。
値上げ以外の解決策を考えよう
そもそも、現状のサロンの課題は、必ずしもメニューの値上げをしないと解決できないのでしょうか?
回転率の向上や、業務効率化によって値上げをせずに売り上げを上げる方法を検討してみましょう。
1,000円カットが安く成立する理由を考えよう
1,000円カットのような格安カット店が、低価格で施術できる一番の理由は、作業時間を短縮しているからです。
例えばカット10分のお店で、1,500円の単価を取れば、単純計算で1時間9,000円になります。
作業時間を短縮するために、玄関に券売機を置いたり、「シャンプーはしない」、「カットのみでカラーやパーマをしない」など、店の仕事量を減らすことで、業務効率化を図っています。
「回転率」を重視し、業務効率化を図ろう
全国チェーンで徹底的にシステム化された1,000円カットほどの業務効率の追求は難しいとはいえ、どのサロンでもムダを削減できるポイントはいくつかあると思います。
例えば、タオルリネンを外注化したり、予約システムを用いて予約管理業務を効率化することなどです。
タオルリネン等を外注化すれば、洗濯に必要な時間を削減することができますし、予約システムの導入は、管理業務にかける時間を短縮することができます。
例えば、あなたの店舗が電話のみで予約管理をしている場合は、電話対応にかける時間を減らせるとともに、バーバーの空き時間がWeb上で確認できるようになることで、お客様が空き枠に予約を主体的に入れられるようになります。
あるいは、既にネット予約を行っている場合でも、複数のクーポンサイトに登録している場合などは、空き時間を共有できる、予約のダブルブッキングを防止する機能を持つ予約管理システムが役に立つでしょう。
事務作業にかかる時間を減らすことで、その分業務に割く時間を増やすことができ、その結果、多くのお客様が来店しやすい環境をつくることができます。
販管費を見直し、コストカットしよう
販管費の削減をすれば、支出を抑えてお店の売り上げを残すことができます。
バーバーに限らず、ヘアサロンで一番ネックになる費用は広告宣伝費でしょう。
クーポンサイトの掲載料や、予約時の手数料が多くのウェイトを占めると思います。
クーポンサイトへの掲載は、新規顧客の獲得に役立つ可能性がありますが、リピート顧客の予約獲得にもクーポンサイトを使ってしまうと、予約手数料がかかってしまいます。
リピートのお客様の予約に、自社で予約を取れるシステムを導入することで、予約手数料を削減することができ、広告宣伝費のコストカットが行えます。
店販の売り方を工夫しよう
施術以外の売り上げとして、店販の活用が挙げられます。
的外れなセールスをしてしまうと、お客様の心情を損ねてしまう可能性があるので、電子カルテ等を使って、お客様のお悩みをヒアリングし、管理することで、適切なタイミングで適切な製品をおすすめすることで、店販での売り上げを伸ばしましょう。
サブメニューを活用しよう
ヘッドスパなどは、カットメニュー等に比べ時間単価が安いケースが多いです。
また、カットだけで予約が入るケースよりも、カット+ヘッドスパといった形で予約が多く入るようになると、時間効率もよくなるため、セットメニューを効果的に活用しましょう。
それでもやっぱり値上げをしたい場合に考えること
もし、現状のサロンが平均的な価格設定のお店であれば、いきなり高価格のような価格設定に変更して、ラグジュアリーを売りにした営業を武器にすることはかなり難しいと言えます。
現状でもお客様が殺到し、枠がすぐに埋まってしまうサロンであれば、思い切った値上げ施策は難しいにしろ、段階的に値上げをしていくことは検討できるでしょう。
もし、現状経営しているバーバーが安定しているのであれば、立地を見直し移転したり、高価格帯の新規業態の店舗を新規出店することも視野に入れてもよいでしょう。
販管費を節約!予約システムの導入のメリットとは?
ホットペッパービューティーアカデミーのデータによると、理容室を利用する男性の過去1年の予約方法では、電話予約の次にネット予約を使用しています。
電話は営業時間内でしか受けることができないため、定休日や施術中だと受けられないと言った機会損失につながることも。
機会損失を防ぎつつ効率よく予約を受けたいなら、ネット予約に対応した予約システムの導入がおすすめです。
予約システムとは、予約受付やキャンセルなど、予約に関する業務を一元管理できるシステムのこと。お客様には、スマートフォンやタブレット、パソコンなどから気軽に予約できるメリットがあり、バーバーには、電話予約の減少により施術に集中できるほか、お客様を待たせなくて済むなどのメリットがあります。
予約システム『リザービア』をおすすめしたい理由とは?
バーバーのネット予約におすすめしたい「リザービア」には、上述したメリットのほか、予約を受けた時点で顧客情報が蓄積されることや、24時間365日予約が受けられるので、機会損失を防げるメリットもあります。
メッセージ自動配信機能もあるので、来店以後のフォローメールや、客層を限定したクーポン配信などもできます。ほかにも、LINE連携予約・BMSによる予約の一元管理・顧客管理機能なども利用できます。それぞれの機能を具体的に見ていきましょう。
LINE連携予約
リザービアでは、LINEと連携することで、店舗の公式LINE経由で自動でLINE上で予約を受けることが可能です。SNSなどから、LINEに友だち登録をしてもらうことで、LINE上で予約を完結し、リマインドのメッセージをLINEのトークで自動送信することが可能です。
BMS(予約の一元管理機能)
リザービアでは、BMS(ビューティーマネジメントシステム)と呼ばれる機能がオプションで利用できます。
BMSとは、クーポンサイトや自社ホームページ、LINEやInstagramといったメディアと連携し、それぞれで受けた予約を一元管理できる機能のことです。つまり、リザービアを開くだけでそれぞれの予約状況を確認できるので、確認・入力作業の大幅な削減につながります。
顧客管理機能
ほかに、顧客管理機能も充実。お客様の予約を受けた時点で、顧客情報は登録され蓄積しているので、Excelやノートに書き写す手間がありません。さらに、顧客管理では、過去に利用したメニューもチェック可能。
リザービアにはメッセージ自動配信機能やクーポン機能もあるので、しばらく来店のないお客様にも、前回のメニューにあわせたクーポンが配信できます。
- サロンのリピート率を増やしたい
- クーポンサイトを脱却したい
- LINEでの予約管理が大変
- 予約はリザービアで一元管理
店舗業務を効率化し、適正価格での営業を目指そう
単に、メニューの価格を点でとらえた考え方をするのではなく、提供しているサービスやサロンの強みを把握して、適正な価格で営業することが、売り上げを最大化する近道になるのではないでしょうか。
単純なメニューの値上げは、やはり慎重になるべき要素であることに代わりはありませんので、バーバーのDX化や、メニューの組み合わせ等を工夫することで、お客様に愛されながら売り上げを伸ばしていく施策を検討した上で、需要を見極めて進めていくことをおすすめします。