サロンや美容室などの事業を営むうえでは、一部の業務を外部の業者へ委託することもあります。このようなケースでは個人事業主も契約を結ぶ際の選択肢のひとつとなりますが、その契約締結時には一般的な事業者とは一部勝手が異なることを覚えておかなければなりません。
また、最近は個人事業主への業務委託を積極的におこなっている事業者も増えており、業界全体でのニーズは右肩上がりの状態となっています。ここでは、その理由も含めて、サロンや美容室の経営における個人事業主への業務委託について確認しておきましょう。
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目次
そもそも業務委託とは?
業務委託とは、雇用契約を結ばずに雇用主と事業主が対等な立場で取引することです。このような契約はサロンや美容室の経営においても広くおこなわれており、その契約内容では報酬や仕事の仕方などに関してこまかな取り決めがされます。
委任契約・準委任契約
業務委託という契約スタイルは、二種類に細分化できます。そのひとつが「委任契約・準委任契約」です。
この契約スタイルでは、成果物が確定できない受付業務やサービス業務などを対象とします。詳細な報酬は作業時間や作業量などにしたがって決定され、その基準は契約を締結する際に双方の話し合いで決められるのが一般的です。
また、委任契約と準委任契約には前者が法律行為であるのに対して、後者が非法律行為である点で明確な違いがあります。
請負契約
業務委託のうち、委任契約・準委任契約に分類されないものを請負契約といいます。この契約スタイルでは成果物に対する報酬があらかじめ決められており、業務の履行・不履行が明確である点が大きな特徴です。
このことから、請負契約では成果物を出さない限り報酬を得られません。上述した委任契約・非委任契約では作業時間や作業量に応じて報酬が決定されることから、これらの点は両者の大きな違いとして挙げられます。
業務委託で個人事業主と契約するニーズが高まっている
業務委託で、個人事業主と契約するニーズが高まっています。その理由のひとつが、契約面での柔軟性の高さです。
個人事業主への業務委託では、雇用契約を結ぶ必要がありません。そのため、労働基準法にもとづいて各種手当てや休暇を確保する必要がないことから、一般的な雇用契約を結ぶ場合に比べて負担を軽減できます。
また、サロンや美容室に限定した場合、この業種では個人事業主に委託できる業務が非常に多いことから、従業員とは業務委託で契約を締結するのがよいという考え方が広まりつつあります。
個人事業主とは法人化していない事業主
個人事業主への業務委託について検討する場合、個人事業主の定義についてじゅうぶんに理解しておく必要があります。
個人事業主とは「法人化していない経営者」のことで、フリーランサーのような独立した状態で働いている人だけを指すわけではありません。そのため、たとえば社員がいても法人化していない場合、その事業者は個人事業主に分類されます。
業務委託をする機会のある仕事とは
業務を委託する機会の多い仕事の特徴のひとつとしては、特定の資格を必要とすることが挙げられます。一例としては医師や弁護士、エステティシャンなどが挙げられ、サロンや美容室で働く美容師もそのひとつです。
また、資格が必要ない仕事でも清掃員や警備員、プログラマーなどは業務委託で契約を結んでいるケースが少なくありません。
業務委託で個人事業主と契約する3つのメリット
業務委託で個人事業主と契約をするメリットとしては、以下の3つが挙げられます。
- 自分が苦手な業務を委託できる
- 対人関係のストレスを抱えるリスクが少ない
- 個人事業主のインセンティブにつながる
ここでは、これらのメリットの詳細を解説します。
1. 自分が苦手な業務を委託できる
個人事業主と業務委託契約を締結すると、自分が苦手な業務を専門知識・スキルを持つ人に任せられるメリットがあります。
たとえば、美容室やサロンであれば高い技術を持つ個人事業主の美容師と業務委託契約を結べば、より難易度の高い施術がおこなえるということです。このことは、事業としての効率性がアップする点でもメリットでしょう。
また、営業利益のアップにもつながることから、美容室やサロンに限らない多くの事業者が個人事業主と業務委託契約を締結するケースが多くなっています。
2. 対人関係のストレスを抱えるリスクが少ない
対人関係のストレスを抱えるリスクが少ないことも、メリットとして挙げられます。個人事業主への業務委託では雇用契約を結ばないため、すべての業務を一緒におこなうことがありません。
業務委託では一人でおこなえない業務のみを個人事業主に任せればよいため、人間関係で軋轢が生じる可能性をあらかじめ低減できます。
また、個人事業主側にとっても同様にメリットとなるため、業務委託は双方にとってメリットがあるということです。
3. 個人事業主のインセンティブにつながる
業務委託契約には、個人事業主側にとってもメリットがあります。そのひとつが、個人事業主のインセンティブに関わるものです。業務委託のなかでもとくに請負契約を前提とするものでは、個人事業主は成果に応じてインセンティブを得られます。
そのため、突出したスキルを持つ人や多くの仕事をこなせる人はその分多くのインセンティブを稼ぐことが可能です。つまり、より多くの収入を得るために個人事業主として業務委託契約を締結する人も少なくありません。
業務委託で個人事業主と契約する3つのデメリット
個人事業主との業務委託には、以下のようなデメリットもあります。
- 個人事業主の収入が不安定になりやすい
- 金額や労働条件の交渉をする必要がある
- 将来性を提示できないと継続的な契約が難しい
ここでは、これらのデメリットの詳細を解説します。
1. 個人事業主の収入が不安定になりやすい
個人事業主との業務委託契約には、個人事業主側の収入が不安定になりやすいデメリットがあります。
これは請負契約のような成果報酬型の契約を結んでいる場合に発生しやすいもので、個人事業主は一定の仕事量を確保できない限り、毎月の収入が大きく増減しやすくなることが原因です。
このように働いたぶんだけ収入が増えていく仕組みのもとで働く場合、一定の仕事量を確保するためのスキルや経験が必要となります。
2. 金額や労働条件の交渉をする必要がある
個人事業主と業務委託契約を結ぶ際には、金額や労働条件に関してじゅうぶんな交渉をしなければならないことがデメリットとなることも。これは、業務委託契約において双方が納得できる条件のもと契約を締結しなければならないからです。
サロンや美容室の場合、委託する業務の範囲や報酬を決定する条件、労働時間などのさまざまな点について話し合わなければなりません。このことから、個人事業主への業務委託では契約を締結するまでに多くの時間と手間がかかることを覚えておく必要があります。
3. 将来性を提示できないと継続的な契約が難しい
個人事業主との業務提携において、事業主側は将来性の有無を重視して契約を締結するか否かを判断する傾向があります。個人事業主側から見た場合、将来性を提示できないと継続的に契約を結ぶのが難しい点も業務委託のデメリットです。
この点で個人事業主が業務委託契約を締結するためには、将来性の面で何らかのアプローチが必要です。そのため、個人事業主の業務委託では高いスキルや多くの経験が重要となるでしょう。
業務委託の契約を結ぶ際の流れ
業務契約は、以下の流れに沿って締結するのが基本です。
- 契約書を作成する
- 契約内容を再度確認する
- 契約書を製本する
続いては、これらの手順について詳細な流れとチェックすべき点をご紹介します。
1. 契約書を作成する
業務委託契約を締結する際には、最初に契約書を作成する必要があります。この契約書には、以下の各項目が漏れなく盛り込まれていなければなりません。
- 業務内容の範囲
- 契約の種類(請負、準委任など)
- 契約期間
- 成果物の提出・検収に関する取り決め
- 報酬と経費の決定条件
- 成果物の遅延・瑕疵への対応
- 著作権などの知的財産権にかかわる取り決め
- 契約更新に関する取り決め(自動更新の有無など)
- 契約解除の条件
これらの各項目について、双方の話し合いのもと決定していきます。そのため、業務委託の契約時には最初に双方が話し合いをするための機会を設け、すべての項目について双方が納得してから契約書を作成していきましょう。
2. 契約内容を再度確認する
契約書を作成したら、その内容を再度確認するのも忘れないようにしましょう。この確認時には、Web上と印刷した紙での二重チェックをするのが確実です。
また、契約内容の確認は個人事業主側でもおこなうようにし、話し合いを通じて決定した内容と齟齬がないことをチェックします。
3. 契約書を製本する
契約内容に誤りがないことを確認したら、契約書を製本します。契約書の原本は双方が保有する必要があるため、2部作成しましょう。また、それとは別にもしものときのための保存用を作成しておくのもおすすめです。
このほか、作成した契約書のどちらかに国税庁が定める金額分の収入印紙を貼付するのも忘れないようにしましょう。
業務委託を個人事業主と結ぶ際の3つの注意点
今や幅広い業種で、個人事業主との業務委託契約が締結されています。しかし、この契約スタイルには上述したデメリットもあることから、締結時にはいくつかの点に注意しなければなりません。ここでは、どんな注意点があるかを確認しておきましょう。
1. 偽装請負は店舗にペナルティも
業務委託契約においてあらかじめ決められた範囲外の業務指示や業務量をこなさせると、偽装請負と見なされることがあります。
偽装請負をした店舗に対してはペナルティが課されることがあるので、店舗に対するイメージが悪化するといった二次的な損害が生じることを踏まえてもじゅうぶんに注意しなければなりません。
2. 契約の範囲は明確にしておく
業務委託契約においては、上述した偽装請負を避けるという意味において契約の範囲を明確にしておくことも忘れてはいけません。
また、偽装請負に関しては個人事業主側にも責任が問われることがあることから、そのことを念頭に置いたうえで双方が納得できる契約内容を決めておくことが大切です。
偽装請負を避けるためにも、契約書を作成する前の話し合いはじゅうぶんな時間をかけるようにしましょう。
3. 業務をこなせなかった場合は損害賠償も視野に入れる
業務委託では一度委託した業務をこなせなかったことが、損害賠償の請求にまで発展することもあります。このようなケースにおける損害賠償の請求は業務を委託した側の正当な権利であるため、受託する個人事業主側はそのことを考慮して契約内容を決定することが大切です。
受託した業務を確実にこなすためにも、個人事業主が業務委託契約を結ぶうえではじゅうぶんなスキルや知識が必要でしょう。
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業務委託契約を個人事業主と結んで、店舗経営を円滑におこなっていこう!
いくつかのデメリットもある業務委託契約ですが基本的にはメリットのほうが多いので、店舗経営を円滑におこなううえでぜひとも活用したい契約スタイルです。
とくにサロンや美容室では、じゅうぶんな経験や技術を持つ美容師などの個人事業主と業務委託契約を結ぶケースが多く、業種としての特徴に合った契約スタイルといえます。
そのため、サロンや美容室の経営においても個人事業主との業務委託契約を上手に活用するとよいでしょう。