近年、美容サロンの経営では「料金の安さ」だけではなく、「お店の質の追求」が求められています。新規顧客やリピーターを増やすため、他店との差別化を図り、いかに独自性のあるお店にできるかが重要なポイントです。
美容室の質や魅力を向上させていくうえでまず必要なことは、お店のコンセプトを明確にするということでしょう。今回の記事では、美容室のコンセプトを見直したい、また開業・独立を目指す美容サロンオーナー様に、美容室のコンセプト作りのポイントを解説していきます。
目次
美容室のコンセプトとは?
美容室におけるコンセプト作りは、「その美容室が何を目指しているのか」ということを示すものです。コンセプトによって美容室の方向性や、他店にはない特徴・違いが生まれてきます。
お店のコンセプトは、お客様だけでなく従業員にとっても重要な要素です。これは、コンセプトを明確にすることで、「このコンセプトに沿って美容サロンを作り上げていく」という共通目標を従業員と共有することができるため。
この共有から従業員との協調性や一体感が生まれ、現場の雰囲気も良くなるでしょう。
美容室にコンセプトは必要?
コンセプトによって他店と差別化が図れないお店は魅力度が低く、集客の多さも期待できません。
経営面で見ると、方向性や目標が明確ではない美容室ではスタッフ全員の心がバラバラになりやすく、足並みもそろわなくなります。スタッフ全体がまとまり、
「本当にやりがいのある仕事だ」
と実感してもらうためには、一貫性のある強いコンセプト作りが求められるのです。
サロンオーナーとしての理念、独立・開業したときの思いをコンセプトに込め、その熱意がお客様と従業員に伝われば、美容室全体の活気にもつながってきます。
美容室のコンセプトを作成してみよう!
「具体的にどのようにコンセプトを作っていいのか分からない」というオーナーさんも多いのではないでしょうか。美容サロンのコンセプトは、大まかにいくつかの項目に沿って作ると効果的です。ここからは、実際にコンセプトを作るうえでのポイントをご紹介していきます。
ターゲットを具体的に定める
どのようなお客様をターゲットにするかという点は非常に重要です。たとえば、「20代から30代のOL女性」「30代から40代の子ども連れの女性」という具合に、どの層をメインに据えるかでお店の方向性が定まってきます。
お客様からすると「この美容室はこの年齢層や条件を得意としているんだな」と分かるお店ほど、足を運びやすくなります。ターゲッティングによって他店と差別化を図れば、特徴ある美容室として地域の認知度を高めることも可能です。
ターゲットの絞り方はさまざまです。年齢や仕事、地域だけでなく、自身が何を得意としているか、おもにどんな施術(技術)を提供したいのか、などを踏まえてターゲッティングをしてみましょう。
独立時の理念を込める
オーナーの皆さんは、独立して美容サロンを開業したとき、どんな理念をもっていたでしょうか。そして、その理念は今も反映されているでしょうか。なんのために独立したのか、何をしたくて開業したのか、どんなお店にしたいのか、またお客様に何を感じてもらいたいのか、その理念や思いをあらためて考えてみましょう。
コンセプトにオーナーとしての強い理念を組み込むと、その思いはお客様だけでなくスタッフにも伝わります。強い理念や思いというのは、そのお店にしかない魅力を生み出すということを知っておいてくださいね。
サロンの立地や営業時間を決める
ターゲット設定や理念とあわせて、サロンをどこに出店するか、営業時間をどうするかを決めていきます。
メインターゲット層が「20代から30代の仕事帰りのOL」であればアクセスの良い駅前に出店、「30代から40代の子ども連れの主婦」であれば住宅街の近くに出店、という具合に出店エリアを絞ることができます。
ターゲットによって通いやすい時間帯が変わってくるので、営業時間をどうするかも重要なポイントです。場合によっては、朝早くから開店し、夕方ごろ早めに閉店するという形もあります。
カット・カラーメニューの内容や料金を決める
メインターゲット層に需要がありそうなメニューを多く作れば、それだけ満足度も上昇し、リピーターが増える可能性も高くなります。他店にはないオリジナルメニューやサイドメニューで強みを明確にできれば、それだけお店の魅力度が増し、口コミ効果も期待できるでしょう。
料金も、ターゲット層に合わせて適切な価格帯で設定しましょう。ターゲット層が「利用しやすい」と感じられる料金設定にすることがポイントです。メニューと料金の設定は、そのお店の強みと直結しているので、できるだけ他店と差別化を図るようにしましょう。
将来へのビジョンを明確にする
将来へのビジョンとは、つまり「お店が目指す目標と夢」です。このビジョン設定では、「お客様視点」と「経営者視点」の両方の視点が必要となります。
お客様視点は、「このお店に通い続けることで、将来何を得られるのか」というビジョンを示します。経営者視点は、「これからのこのお店が目指す目標と夢は何か」というビジョンを示します。この二つを明確にすることで、お客様とスタッフの両方で同じ意識を共有できるのです。
サロンで働いてくれているスタッフにも目標や夢があります。経営者視点のビジョン設定では、お店全体のことだけでなく、スタッフの将来性(将来像)も考えることが大切です。
美容室のコンセプトを効果的に広めるにはどうすればいい?
サロンのコンセプトを設定しても、その内容がサロンスタッフとお客様に伝わらなければ意味がありません。サロンの軸となるコンセプトを、スタッフとお客様の両方に効果的に広める方法についてご紹介していきます。
サロンスタッフに広める方法
美容室の規模によって、スタッフの人数は異なります。スタッフが少人数であれば、何回かのミーティングでコンセプトをしっかりと伝えられるでしょう。美容室の規模が大きい場合は、全体ミーティングを開催する、または階層ごとに伝達するといった方法があります。
コンセプトの内容を浸透させるために、ミーティングのほかネットを使った社内報(メルマガやLINEグループなど)を活用するのもおすすめです。
お客様に広める方法
お客様にコンセプトを伝える方法として効果的なのは、WEBサイトやSNSなどネットサービスの利用でしょう。この際、「自身のお店は他店といかに違うか」ということを強調して発信するのがコツです。差別化を図ることで、お店の魅力度が増えて新規顧客の獲得につながります。
アナログ的な方法ではチラシ作成も有効な方法です。デジタル的な方法であれ、アナログ的な方法であれ、サロンのイメージとコンセプト、お客様が得られるメリットが明確に伝わるような発信を心がけましょう。
まずは資料をご覧ください
美容室のコンセプトを重要視して成功したサロン事例を紹介!
美容室によって採用しているコンセプトはさまざまです。どの層をメインターゲットにしているのか、理念や目標は何か、料金やカットメニューの設定をどのようにしているのかなどは、オーナーの思いや人生観が反映されていることも多いです。
東京都調布市にある美容サロン「the STANDARD」は、オリジナルなコンセプト設定で毎月100人以上の新規顧客を獲得しています。「the STANDARD」のオーナーさんはコンセプトにどのような思いを込めているのか、その内容や強みについてご紹介しましょう。
ターゲット
「the STANDARD」のターゲット層は、「30代から40代の子ども連れの親」です。オーナー自身が同年代で子どもがいるため、「もっと子どもと一緒にいる時間を過ごしたい」という悩みから営業時間を9:30~17:30に変更。子ども連れのパパ・ママに来店してもらいたいという思いを反映させています。
サロンの強み
「the STANDARD」のおもな強みとして、以下の3つが挙げられます。
・ママが通いたくなる店内空間
店内には子どもが遊べるキッズスペース、トイレにはオムツ台が完備されています。店内はベビーカーでの入店もOK、外にはママチャリが5台停められるスペースがあり、子ども連れの女性がいつでも気軽に通えるサロンになっているのです。
・育児のたいへんさをお客様と共有
オーナー自身がイクメンであり、育児の楽しさ、たいへんさをSNS(インスタ)を通じて発信しています。そのSNSの内容に共感したパパ・ママが新規にお店に訪れる、という好循環を生み出しているのです。
・値引きなしで質の高いカット
オーナーは独立前に表参道の美容室で働いていたということもあり、「表参道のおしゃれな雰囲気と質の高いヘアカットを提供したい」という思いでお店作りをしています。表参道を意識したおしゃれな店舗デザインと値引きなしのヘアカットは、多くのママさんから共感を得ているのです。
成功した集客方法
「the STANDARD」で成功した集客方法のひとつが、「検索してもらって来店してもらうこと」です。これは、お店の前を通った方が「なんだかかわいいサロンがあるな…」と気になって検索し、そこから来店してもらうという方法となっています。
ガラス張りにしてキッズスペースがよく見える作りにしたり、店内の内装デザインにスポットライトを当てたりするなど、外から見たお客様が気になって検索してくれるようなお店作りを心がけています。
美容室の1人開業はコンセプトを明確にして新規顧客獲得を目指そう!
美容室の経営では、コンセプトを明確にして他店と差別化を図ることが重要になります。中身も外観も他の美容室とそれほど変わらなければ、その他大勢の美容室と同じになってしまい、埋もれてしまう可能性が高いからです。
国内の美容サロンの数は非常に多く、また飽和状態ということもあり、年々競合が激してくなっています。そのなかで新規顧客とリピーターを獲得するには、自身のサロンにしかない独自性と魅力を作り上げることが必要です。
お客様が「このサロンだからいつも通いたい」と思ってもらえるようなお店を作り上げるために、自分らしいコンセプトを練って成功を目指していきましょう。