これから美容室を開業するうえで、どのくらいの広さや規模にするべきか迷っている人もいるのではないでしょうか。美容室に見合った面積の物件を探す必要も出てきます。待合室などお客さんが快適に過ごせるような工夫もしておきたいですよね。
美容室の開業は保健所などで決めた基準があるため、しっかりと把握する必要があります。本記事では、美容室を開業するうえで覚えておきたい、必要な面積や基準について、詳しく解説していきたいと思います。
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目次
美容室の面積とは
美容室を開業するうえで、保健所から営業許可を認定されるために必要な面積が「13平方メートル」だと言われています。(面積は内法(うちのり)により算定する。)開業してどのくらいのスタッフが働くかなどは関係なく、最低基準として必要な広さです。
作業スペースとして必要なものになり、お客さんの待合室などは含まれません。他にもトイレやバックスペースなどは最低基準の面積には含まれません。あくまでも作業するためのスペースになるので、お客さんのカットやカラーをする施術台や、シャンプー台、コールドスペースなどが、この面積の対象になります。
美容室の面積といっても、どこまで含まれるのかによっても変わってきますので、余裕を持ったレイアウトを考えていきましょう。
作業室は待合室やトイレなどは含まない
先程も簡単に説明しましたが、面積の作業スペースのなかに、お客さんの待合室やバックルーム・消毒室・トイレなどは含まれません。そのため、美容室によって待合室を広々ととっているところもあれば、2~3名程度が座れる狭いスペースしかとっていないところもあります。
基本的に完全予約制を導入している美容室であれば、待合室にそこまでたくさんの人が座ることもないと思います。トイレなどは1.5平方メートルは必要になりますし、消毒室についても2.1平方メートル程度は用意しておいたほうがいいと思います。
美容室のレイアウトや間取りによっても変わってきますので、必要な広さをもとにトータルで考えるようにしましょう。お客さんの視点にたったときに快適と思えるかどうかも重要です。
美容室を開業する上での基準について
美容室を開業するうえで、大切なことは保健所が定めている基準を満たしているかどうかです。そのため、どんなに利便性がいい場所でも、東京都福祉保健局が定めた基準を満たしていないと開業できません。
美容室には明確な基準があるからこそ、抜けなくしっかりと確認しましょう。待合室や椅子の数なども含め細かい基準が定められています。
待合スペース・待合室
美容室の待合スペース・待合室の基準として、以下のものがあります。
“作業室には、作業中の客以外の者をみだりに出入させないこと。
作業前の客を作業室と明瞭に区分された場所(待合場所)に待機させる措置を講じること”
作業室には施術に必要ないろいろな機材が置かれています。そのため、施術中など関係者以外は立ち入ることのないように定めているものです。作業中のお客さん以外の人が待合室以外の場所で待つことがないように、視覚的に見てもわかるようなスペースを設ける必要があります。
いすの数
美容室の広さによっても設置できるいすの数が決まっています。保健所が定めている床面積が13平方メートルまでの場合は、1つの作業室に6台までの椅子が設置できます。それ以上のいすを設置したいときは、1台増えるたびに3平方メートル以上の面積が必要です。椅子を設置する間隔なども決まっているため、むやみに設置しないようにしてください。
洗い場
美容室を開業する上で消毒用の流し台と流水装置の設置も、構造設備基準を満たしているかどうかの基準になります。美容室で施術をする上で必ず必要なものになりますので、どこに設置するのか確認しておきましょう。
照明や換気
美容室では、室内の照明や換気についても明確な基準があります。美容師が直接の作業を行う作業面については100ルクス以上にするなどの条件も決まっているので必ず確認しておきましょう。他にも”美容所内の炭酸ガス濃度を0.5 %以下に保つ”などもあります。基準をクリアできるかどうかに関わるので事前にチェックしておきましょう。
その他の保健所の基準とは
美容室を開業するうえで、保健所で定められた基準はまだまだあります。構造設備基準を満たすのは簡単なことではなく、1つでも問題があると開業できなくなってしまいます。美容室として最低限の基準を満たしていないと判断されてしまうと、物件から探し直しになる可能性もあります。美容室として必要な基準はしっかりと確認しておきましょう。
床や腰板の材質
美容室に使用する床材や腰板などは、使用する材料に規定があります。例えばコンクリートやタイル、ビニルタイルなどの不浸透性の材料を使うことになります。美容室ではさまざまな薬剤を使用しているため危険性などを考慮した材質になっています。
消毒の設備と方法
美容室では決められた”衛生設備面”の基準を満たしているかどうかも、開業時の基準になります。お客さんに使う器具は毎回しっかりとした消毒が必要になるなど厳格な基準が定められています。例えばハサミやくしなど皮膚に直接接触するものですので、以下のような方法で正しく消毒しましょう。
以下は東京都福祉保健局の「美容所の開設に関する基準等について」からの引用です。
<消毒方法>
- 皮ふに接する器具のうち、かみそり(レザーカット用を除く。)及びかみそり以外の器具で血液が付着しているもの又はその疑いがあるものの消毒は、器具を十分に洗浄した後、以下のいずれかの方法により行なうこと。
- 沸騰後2分間以上煮沸する方法
- エタノール水溶液(76.9 %~81.4 %)中に10分間以上浸す方法
- 次亜塩素酸ナトリウムが0.1 %以上である水溶液中に10分間以上浸す方法
- 血液の付着していない器具等の消毒は、器具を十分に洗浄した後、上記の方法のほか以下のいずれかの方法により行なうこと。
- 紫外線消毒器内の紫外線灯より1平方センチメートルあたり85 μw以上の紫外線を連続して20分間以上照射する方法
- 80度をこえる蒸気に10分間以上ふれさせる方法
- エタノール水溶液(76.9 %~81.4 %)を含ませた綿もしくはガーゼで器具表面をふき取る方法
- 0.01 %~0.1 %次亜塩素酸ナトリウム液(有効塩素濃度100から1000 ppm)中に10分間以上浸す方法
- 0.1 %から0.2 %逆性石ケン液(塩化ベンザルコニウムまたは塩化ベンゼトニウム)中に10分間以上浸す方法
- 0.05 %グルコン酸クロロヘキシジン液中に10分間以上浸す方法
- 0.1 %~0.2 %両面界面活性剤液(塩酸アルキルポリアミノエチルグリシンまたは塩酸アルキルジアミノエチルグリシン)中に10分間以上浸す方法
格納の設備
美容室では”消毒済物品容器”と”未消毒物品容器”の両方をわかりやすく設備する必要があります。施術が終わったあとは適切な消毒が必要です。使用済みのものと消毒が済んでいるものが混ざらないような設備を設置しましょう。
明らかに違う容器に入れておくなど、視覚的に確認できることが大切です。また、すぐにシールが剥がれてしまったり、アルコールがこぼれたときなど滲んで見えなくなってしまったりするようなものではなく、万が一も考えた容器を用意しておきましょう。
消毒する器具によっても使用するアルコールが異なる場合もあるため、混ざってしまうことのないようにしましょう。消毒用のエタノールも含め管理が難しいものがたくさんあるため、取り扱いには十分に注意してください。
ちなみに施術中などに使うことを考えると、利便性などの使いやすさにも考慮する必要があります。消毒するものは蓋付きの容器に入れておくと、揮発してしまうこともなく使えるなど実際に便利だと思えるアイディアは取り入れていきましょう。
アルコールは誤ってこぼしてしまうことの無いように、頻繁に移動させずに、安定性のある容器で蓋付きのものを選ぶのをおすすめします。また、安全に使うためには他のスタッフに共有しておくことも、大切になります。格納の設備については、十分に準備をしておきましょう。
汚物箱や毛髪箱
美容室では、ふた付きの汚物箱もしくは毛髪箱を用意しなくてはいけません。においの発生を防ぐことができますし、片付けのときも衛生的です。
十分な器具及び布
美容を行うために十分な数量の器具及び客用の布片を備えておくことも大切です。
美容室ではお客さんごとに使う器具を分けるため、十分な数量のものを準備しておく必要があります。器具はもちろん客用の布片を揃えておくようにしましょう。
美容室は保健所の基準に基づいて運営する必要がある
美容室は、正しく運営を行うためにも保健所の基準に基づいて運営する必要があります。事前の登録も必要になりますので、そのための方法について紹介します。保健所からの立入検査などもありますし、開業する上で必要な届けなどもあります。どのような手順で進めたらいいのか、困ったときなども保健所に相談してみてください。
工事前に事前に保健所へ相談
美容室を開業する前に、まずは保健所に図面を持って相談に行くのをおすすめします。一度工事が始まってしまうと、途中から変えるのは難しく修正などの対応もできません。工事が終わってから保健所の立会により、改善要請があった場合に大きな手間になってしまいます。
また工事会社によっては余計に費用がかかってしまうこともあります。こうした面を考えても、まずは工事前に保健所に相談に行く方が安心して進められます。
営業を開始する1週間前までに開業届を
美容室を開業するために必要な書類を準備したら保健所に提出しに行きます。工事なども完了していないとできませんので、あくまでも開業できる準備を整えた上で行くのが基本です。書類を提出する際に「開業検査手数料」が必要になりますので、準備しておきましょう。
そのうえで「開業検査」の日程を決めて調整します。即日対応できるわけではないので、営業開始の1週間前までにこれらの書類の提出を行うようにしておきましょう。
開業立入検査で基準を満たす
開業立入検査を行うことで、無事に基準を満たしていると判断された場合は「確認書」が発行されます。立入検査は美容室の所在地に管轄している保健所の職員が行うものです。当日はオーナーの立会が求められますので、スケジュールに余裕を持って行うようにしましょう。
検査する内容や項目は、その地域によっても違いがあるので事前に確認しておくのをおすすめします。
また、保健所から連絡が入ったら受領印を持って受け取りに行くようにしてくださいね。
休憩室の規定
美容室では、従業員の数に応じた適切な広さの更衣室や休憩室などを設けることが、望ましいと言われています。着替えをするスペースとしてはもちろん、忙しいときなど室内でご飯を食べることもあると思います。ゆっくりと過ごすスペースがあると、仕事に対しても集中できます。
休憩室の広さはもちろん、充実したスペースになるように工夫しましょう。
自宅サロンでも保健所の規定を満たさなければならない
中には美容室を自宅で開業しようと考えている人もいるかもしれません。物件を借りて新しい場所で開業しないのであれば、保健所の基準を満たさなくても問題がないと考えている人もいるのではないでしょうか。
自宅サロンの場合も、美容室の面積規定などは変わりません。そのため、基準をしっかりと満たしたうえで、自宅サロンを行うようにしましょう。保健所などの立入検査などもありますし。ルールを守って営業するようにしてください。
- 指名予約を増やしたいスタイリスト
- インスタグラムで集客したい方
- DMでのやりとりが面倒と感じている方
- 予約はリザービアで一元管理
美容室は保健所により広さに規定がある!
美容室を開業するうえで、広さなど厳格な基準が設けられています。満たしていないと営業すらできなくなってしまいます。また、面積や仕様についても各都道府県にある管轄している保健所によっても異なります。
そのため、工事する前から保健所に図面を持って相談に行き、どうすれば基準をクリアできるのかを確認するようにしてください。また、開業届など含め必要な書類の準備も忘れずに行いましょう。保健所には何度も足を運ぶことになりますので、わからないことがあれば気軽に相談できるようにしておきましょう。