コロナ禍や円安による物価高騰が叫ばれて久しい現在、美容院やエステサロンで使用する各種の備品や道具、化粧品なども軒並み値上がりしており、経営が厳しいという声はよく聞かれます。
しかし、美容院の経営者の中には、提供するメニューを値上げしたいと考えているものの、「お客様が離れてしまわないか心配で値上げに踏み切れない」という方もいるのではないでしょうか。
本記事では、美容業界を取り巻く値上げの状況や値上げをすべき3つの理由、値上げに失敗しないためのコツ、メッセージの例文について紹介します。
仕入れ値の上昇をうまく価格に転嫁したいと考えている方は、参考にしてみてください。
- 紙カルテを辞めたい
- 在庫管理を自動化したい
- レジ締めを楽にしたい
- リピート率を上げたい
目次
近年の美容業界を取り巻く値上げの状況
近年の日本経済の状況を見てみると、軒並み値上げラッシュが続いています。コロナ禍や円安などによる輸入品の高騰が原因とされ、幅広い商品が値上げされている状況です。
ここでは、日本経済の値上げの現状や今後の展望について見ていきましょう。
仕入れ価格は依然上昇傾向
日本政策金融公庫が2023年11月30日に発表した『価格動向に関するアンケート調査結果』によれば、「前年度と比較して仕入れ値が上昇した」と答えた企業は全体で82.7%で、前年度調査を6.1%上回る結果が見られました。
とくに飲食・食肉販売・ホテル業に関しては、90%以上の企業が仕入れ値が上がったと回答している点に注目です。また、理容業では65.6%、美容業では58.0%で、過半数が「上昇した」と答えています。
このように、多くの企業で仕入れ値の上昇が続き、あらゆる業種で値上げを検討せざるを得ない状況に陥っているのが現状です。
引用元
価格動向に関するアンケート調査結果|日本政策金融公庫
値上げが経営に与える影響は?
日本政策金融公庫の同発表では、仕入れ価格の上昇が経営の悪化をもたらすと答えた企業は全体の89.4%に及び、値上げしないと経営が厳しい状況が見えてきます。実際、前年より販売価格を引き上げた企業は全体の55.2%と、前年を19.7%も上回りました。
そのような中、美容業や理容業では「据え置いた」の声が60%を超えており、企業側が苦しくても、消費者の買い控えを恐れて値上げするのをためらっているのが見てとれるでしょう。
また、利用者側に対する美容センサス調査では、男女ともに「今のサロンをこれまで通り利用し続ける」と回答した人は60%以上という結果でした。
引用元
価格動向に関するアンケート調査結果|日本政策金融公庫
美容室 過去1年の利用率(女性)|ホットペッパービューティーアカデミー
美容室 過去1年の利用率(男性)|ホットペッパービューティーアカデミー
今後1年間は値上げが落ち着く可能性も
今後1年間の展望に関しては、「値段を引き上げる」と回答した企業は前年度の調査を3.4%下回り、全体の40.1%に。一方、「据え置く」と回答した企業が59.3%と、価格上昇は落ち着くのではと見られています。
理美容業界では「価格を据え置く」と回答している企業がとくに多く、75%前後です。一方で、値上げを検討している企業も25%前後あることがわかります。
また、大手のクーポンサイトを利用するとかなりの手数料がかかってしまうので、自社集客に切り替えて、出費をおさえる方向に動く美容院も増えると予想されます。
引用元
価格動向に関するアンケート調査結果|日本政策金融公庫
美容室 過去1年の利用率(女性)|ホットペッパービューティーアカデミー
美容院が値上げをすべき3つの理由
今後くる値上げのタイミングに備えて、値上げすべき理由を再確認しましょう。しかし、ただ値上げすればいいということではなく、ブランディング戦略について考え直す必要があります。
1.価格競争をしても売上アップにはつながらない
他社よりも安いメニュー価格にして集客しようという議論があります。しかし、メニューの価格を下げてしまうと、必然的に客単価が低くなってしまうのがジレンマです。
その結果、ある程度の集客に成功しないと目標売上を達成できません。また、値下げ競争になってしまうと、さらに売上を伸ばすのが難しくなってしまう点に注意です。
そのため、競合店舗と価格競争をしても、中長期的にみるとお店のためにはなりません。
しかし、効率的な集客を実現するためにクーポンサイトを使うと、予約の度に手数料がかかってしまいます。そこで、経費を節約して少しでも売上を伸ばしたい方は自己集客ができるリザービアがおすすめ。
予約システムあるリザービアは、5,000店舗以上の導入実績があり、Googleで予約やLINEなどの外部サービスと連携して集客できます。
また、予約受付・管理機能だけでなく、クーポン機能も使えるので、美容院の店舗業務を効率化しながら集客力も強化したい、という方におすすめです。
2.低価格帯のサービスは印象がよくないことも
価格が安いということをサービスの質の低さと結びつけてしまうケースもあります。たとえば、1,000円と10,000円のカットメニューを提供するお店があった場合、髪型にこだわりたい方は10,000円のメニューを利用したいと考える可能性が高いです。
理由は単純で、1,000円は安すぎて、どんなカットをされるかわからず怖いという考えになる方がいるからです。その一方で、10,000円であれば、満足度の高いカットに加え、シャンプーやブローなどの他のサービスも提供してくれるという期待感が生まれます。
このように、極端に値下げをしてしまうと、一定の層からは利用されないサービスになってしまい、値段の安さだけを追求する客層が増える結果にもつながります。
3.価格転嫁した分をサービスの品質アップにあてられる
美容院のメニューの価格を上げてお店の売上・利益を増やすことで、メニューの充実や新メニューの開発、スタッフの指導など、その他業務に余裕をもって予算を配分できます。
メニューの値上げをして、美容院のサービスの充実化をはかりましょう。
美容院が値上げに失敗しないためのコツ
美容院が値上げをする際は、売上が激減したり、リピーターが離れてしまうことのないように、価格設定やタイミングに気をつけなければなりません。ここでは、値上げで失敗しないための注意点をおさえていきましょう。
1.競合店のリサーチをして値上げ幅を決める
値上げを行う際は、周辺地域にある美容院で、同じような価格帯、もしくは同じようなコンセプトで商売をしている店舗のメニュー価格をリサーチしましょう。
同じようなサービスで、自分のお店が明らかに高い値段設定をしてしまうと、客足が遠のいてしまう可能性もあります。
一般的に値上げ幅は5%程度が望ましいとされ、仮に10%も上げると割高な印象が強くなるため、相場を知るとともに競合店の価格リサーチは必ずしておきましょう。
2.お店のサービスの魅力を伝える
値上げに伴ってサービスの内容や技術レベルを上げて、サービス内容を充実させることでお客様に納得してもらうのが、値上げをする際の正攻法です。
競合店と同じサービスを提供していては、値上げに伴い客足が遠のいてしまうリスクがあります。カットに強みがあったり、気持ちのいいシャンプーに特化した美容サービスであったりと、値上げに納得してもらえるように、サービスの質を向上するように心がけましょう。
3.仕入れ値の上昇についてお知らせする
お客様に値上げを納得してもらうためには、仕入れ値が上がって値上げせざるを得ない状況を正直に伝えることが大切です。ただ、単に仕入れ値があがったという理由だけでは納得されないケースもあるので、値上げに伴うサービス内容の改良にも触れましょう。
「髪質を改善する高保湿シャンプー・トリートメントを導入する関係で、値上げさせて頂きます。これまで以上に髪のケアを重視したサービスを実現できます」といったように、値上げに伴うメニューの質の向上を約束することで、値上げに納得してもらいやすくなります。
4.メニューの見直しや新規メニューを追加する
値上げに伴い、メニューの内容を練り直したり、オプションを追加したり、まったく新しいメニューを追加するなどして、サービスをリニューアルするのも手です。売上につながるようなオプションや新メニューを考案することで、売上の構造を再構築できます。
5.値上げのタイミングに注意する
メニューを値上げするタイミングで、これまでとはビジネスモデルが大きく変化します。値上げに適したタイミングを選ばないと、売上がダウンしてしまうことも十分に考えられます。
値上げに適した3つのタイミングとその理由を確認してみましょう。
客数が増えたとき
お店全体の客数が増えたときは、値上げを考えるタイミングです。所属する美容師の人数に対して顧客が増え過ぎた場合は、忙しさからサービスの質が下がってしまう恐れがあります。
このタイミングで値上げを考え、顧客を絞ることでサービスの質を維持できるでしょう。この場合は、多少の失客があってもメリットとして捉えられますね。
指名客が増えたとき
美容師の指名をする顧客が増えたときもベストなタイミングです。指名客=固定客と捉えられるので、失客のリスクが少ないでしょう。また、指名客が増えすぎた場合、お店全体の客数が増えたときと同じように、サービスの質の低下が懸念されます。
指名料の追加や値上げに伴って、サービスの向上にもつなげられます。
優良顧客を絞りたい
優良顧客に絞りたいタイミングでの値上げも有効です。
お店全体の客数が増えたときや美容師の指名をする顧客が増えたときには、値上げによって優良顧客に絞ることができます。優良顧客を絞ることでお店・スタッフにとって、「顧客の単価が上がる」などのメリットが考えられます。
お店によって「優良顧客」の定義はことなりますが、客単価や来店頻度など各店舗で設けた基準を超えた顧客を残し、増やしていきましょう。そのため、値上げ前には独自の「優良顧客」の基準を明確にし、スタッフ感の共通認識にしておくことも重要です。
値上げによる失客に怯えることなく、挑戦してみてください。
お客様の来店が少ない時期
夏休みや年末年始など、お客様が比較的少ない時期もよいタイミングです。一人ひとりのお客様に丁寧に説明することができ、納得してもらいやすいでしょう。
美容室の値上げをお客様に伝える方法
美容室の値上げをお客様に伝える方法にはどのようなものがあるのでしょうか。
店頭で伝える
来店したお客様にわかりやすく告知する方法です。直接口頭で伝えると、お客様の疑問などにも答えやすいでしょう。
また、カウンターにメッセージカードを置いたり、目に入る場所に張り紙をしたりするなどして、伝え漏れがないようにすることが大切です。
案内レターを送付する
既存のお客様には、書面で値上げをお伝えすると親切です。お客様の理解と協力を得るために送付するので、丁寧な印象を与えやすい封書で送るのがよいでしょう。値上げ後に使えるクーポンを同封し、特別感を演出するのもおすすめです。
ホームページやSNSなどを利用して告知する
ホームページやブログ、SNSなどで値上げのお知らせをするほか、メルマガやLINEなどでメッセージを一斉配信して告知するというやり方もあります。SNSでの告知は既存客だけでなく、見込み客にも情報を伝えることができるため、ぜひ活用しましょう。
美容院が値上げをお知らせする際の例文
ここでは、美容院が値上げをお知らせする際に使える例文などを紹介します。
値上げをお知らせするときに必要な内容
値上げをお知らせするときには、下記のような内容を盛り込みましょう。
- お客様への感謝
- 値上げする理由
- 値上げ額
- いつから値上げするか
- 新しいサービスやメニューについて
- 今後の方針やお客様に対する思い
- 問い合わせ先
関連記事
短いメッセージ
「いつも当院をご利用いただき、まことにありがとうございます。この度は、原材料費の高騰やサービス内容の充実化、サービス提供体制を一新するため、料金を一部値上げさせていただくことになりました。ご理解とご協力をお願いいたします。」
料金が値上げすることをお伝えすると共に、新しいサービスやメニューの充実化を伝えることで、新しい料金体制に変更することでお店がリニューアルすることを伝えます。
長めのメッセージ
「当院をご利用いただき、まことにありがとうございます。この度は、原材料費の高騰やサービスの変更・向上に伴い、料金を一部値上げさせていただくことになりました。
値上げすることで、新しい設備の導入やお客様のニーズを満たせる経験豊富なスタッフの充実化、新しいメニューの提供など、サービスの質向上に力を入れ、お客様によりよいエステサロン体験をご提供できるよう努力して参ります。
値上げすることにより、サービスを継続的に提供できるようになります。何かご不明点がございましたら、お気軽にお問い合わせくださいませ。」
値上げの事実と仕入れ値の高騰・サービスの充実化について伝え、値上げすることでお店のサービス提供が維持できる点を強調します。こうすることで、値上げする理由とその後の展望を明示でき、お客様が値上げに納得してくれる可能性が高まるでしょう。
- 紙カルテを辞めたい
- 在庫管理を自動化したい
- レジ締めを楽にしたい
- リピート率を上げたい
美容院のメニューを正しく値上げして、集客・売上につなげていこう
美容院のメニューを値上げしようか迷っている方は多いですが、値上げに向けてきちんと戦略を立てて実行しないと、失敗してしまうケースもあります。
まずは競合店の価格やサービスをリサーチして、無理のない値上げ幅と他の店にはない自分の美容院だけの強みを分析し、それらを武器に値上げする方法を考えましょう。
値上げする際には、値上げしやすいタイミングをみて、納得してもらいやすいメッセージを送り、値上げ後もリピーターに通ってもらえるような工夫をすることが大切です。
依然として仕入れ価格は上昇傾向ですが、適切な値上げ幅と伝え方でお客様の理解を得られやすいと考えられます。美容院のメニューを正しい方法・タイミングで値上げして、集客力・売上アップにつなげていきましょう。