整骨院や接骨院では、診療報酬を請求することができます。しかし、院によっては不正請求を行うケースも見られるので、正しい請求方法を知っておかなければなりません。場合によっては通報されてしまうこともあるためです。
後半では、不正請求を防ぎ、健全な施術院運営を行うためのポイントも解説するので、ぜひ参考にしてください。
- 紙カルテを辞めたい
- 在庫管理を自動化したい
- レジ締めを楽にしたい
- リピート率を上げたい
目次
診療報酬の不正請求とは
整骨院や接骨院などで保険施術を行った際の料金、つまり診療報酬は、顧客は一部(3割の場合が多い)を負担するのみで、残りは院側が健康保険の協会や組合(保険者)に請求します。
不正請求とは、この請求の際に虚偽の申請を行うもので、詐欺・不法行為に該当するもの。下記のような種類があります。
- 架空請求:実際には行っていない施術分を請求する
- 付増請求:施術回数や内容を実際より増やして請求する
- 振替請求:実際した施術よりも保険点数の高い内容に振り替えて請求する
- 二重請求:顧客から自費で支払ってもらっているのに保険でも請求する
その他、不正されやすい内容も下記でチェックしましょう。
部位転がし
部位転がしとは、当初の来院目的とは違う箇所が悪くなったことにしながら施術部位をあちこちに変え、通院期間を引き延ばすやり方のこと。継続した収入になるため、行う院がありますが、不正請求なのでNGです。
施術の偽装
余分な施術を付け加える、または、していない施術をしたものとして装うことです。たとえば、肩の痛みで来院した顧客に対し、腰や膝など別の部位の施術もあわせて行ったり、実際には行っていない部位へも施術したことにしたりして、その分の報酬を請求します。
当然こちらもNG行為です。
不当請求との違い
「不正請求」と似た言葉に「不当請求」があります。不当請求とは、算定要件を満たしていないのに管理料や指導料などの加算を行うもの。実際の施術や処置に該当しない請求のことです。不当請求の場合、適切でないと判断された分の保険点数が減点されることがあります。
診療報酬の不正請求や不当請求が起きる背景
前章で見てきたように、不正請求にはさまざまな種類があり、悪いことと知りつつも実際にやっている施術院は少なくありません。では、なぜ不正請求や不当請求が行われてしまうのでしょうか。
算定できる施術とできない施術がある
整骨院や接骨院で健康保険が適用できる施術は、捻挫・打撲・挫傷・脱臼・骨折といった限られた内容のみ。基本的には急性かつ原因が明確な症状だけであり、慢性的な肩こりや腰痛などは適用外です。
そのため、院の売上を伸ばしたくても、顧客数が増えないと伸びない上、顧客の絶対数には限りがあります。そこで、困ったときの手段として、顧客の状態を悪用する不正請求などの事態が生まれてしまいます。
療養費が減少している
整骨院・接骨院で柔道整復師による施術で受け取れる柔道整復療養費は、平成23(2011)年度の4,085億円から年々減少傾向で、令和元(2019)年度には3,178億円にまで落ち込んでいます。
その一方で、施術する柔道整復師は、平成22(2010)年に50,428人だったものが、令和2(2020)年には75,786人に増加。療養費と施術者数の反比例により、少ないパイを大人数で取り合っているため、儲けが出にくくなっているという現実があります。
引用元
20220202 療養費の推移(平成23~令和元年度)|厚生労働省
令和2年衛生行政報告例(就業医療関係者)の概況|厚生労働省
診療報酬の不正請求は通報される可能性も
院の経営者のなかには、不正請求を「バレなければしてもよい」「少しくらいなら大丈夫だろう」と甘く考えている人もいるかもしれません。しかし、思わぬところから不正請求が発覚してしまうケースもあります。一体どんな場合なのでしょうか。
顧客から保険者への問い合わせ
不正を行っている院によっては、顧客に対して「カルテには〇〇と書きます。こうしないと保険が使えないからです」といった趣旨の説明をしていることがあります。また、顧客には何の説明もせずに虚偽の内容を記載していたものの、通院の際に顧客が不自然に感じる場合も。
そこで、顧客が院ではなく保険者に問い合わせをした結果、不正が発覚するということが多々あります。顧客側は通報のつもりではなく、単に疑問を問い合わせただけというケースでも、結果的に不正請求が明るみになるきっかけにつながるでしょう。
内部告発
日常的に不正請求を行っている院などでは、経営方針や院長の言動などに不満を抱える従業員が告発してバレる、という事態も起こりえます。内部の人間であれば実情をよく知っているので信ぴょう性も高く、監査などにつながりやすいでしょう。
また、以前に働いていたスタッフや同業他社などから告発されることもあるので、整骨院や接骨院では健全な運営が求められます。
診療報酬の不正請求が発覚したらどうなる?
自分は大丈夫だと思っていても、前章のように、不正請求が発覚してしまうことも多いです。では、整骨院や接骨院での不正請求が明るみに出た場合、一体どうなるのでしょうか。いくつかのケースを紹介します。
個別指導
個別指導とは、院に厚生局からの指導が入るものです。厚生局の職員が、院での診療報酬の請求が正確に行われているかをチェックするとともに、請求のルールを今一度周知徹底するために指導を行います。
施術院のみのデータではなく医科・歯科・薬局の合計数ですが、令和3(2021)年度は「個別指導」は1,050件と前年度より747件減少していますが、「新規個別指導」は4,453件で、前年度より1,538件増加という結果に。
なお、指導後の判断は、「概ね妥当」「経過観察」「再指導」「要監査」というパターンに分かれます。
引用元
令和3年度における保険医療機関等の指導・監査等の実施状況について|厚生労働省
監査
監査は、「診療内容及び診療報酬請求に不正又は著しい不当があったことを疑うに足る理由があるときに行われる」とされており、院による不正請求の疑いが濃厚である状態。
「的確に事実関係を把握し、公正かつ適切な措置を執る」もので、監査のあとは保険医療機関や施術師の「取消」「戒告」「注意」といった措置が行われます。
引用元
保険診療の理解のために|厚生労働省
行政処分
厚生局によると、診療報酬の請求において「不正又は著しい不当があり健康保険法に違反した場合には、保険医療機関等の指定の取消及び保険医等の登録の取消を行ったうえで保険診療を受けた患者(被保険者)の皆様の権利を守ることを目的として、行政処分の内容を公表する」ことになっています。
なお、処分される前に保険医療機関等の指定から外れたり、保険医等として登録を抹消したりするケースもあり、その場合、かつては処分が行えませんでした。
しかし、被保険者の権利を守るため、このようなケースでも取消処分に相当するものとして、医療機関の名称や施術者の氏名・不正理由・不正請求金額などが公表されるようになりました。
世間に公開されてしまえば、それまでに築いてきた顧客との信頼関係も一気に崩れてしまうでしょう。
引用元
保険診療等において不正請求等が行われた場合の取扱いについて|東海北陸厚生局
診療報酬の不正請求を防ぐには
前章で解説した通り、不正請求は院にとって命取りになる可能性も否定できません。そこで、不正請求をしないために施術院側はどうすればいいのか、対策を紹介します。
1. 施術内容を正確に記録する
まず、カルテには施術内容を正しく記入することが重要。診療報酬の情報は改訂されることがあるので、常に最新の情報を押さえて正確な請求を行うことも大切です。「知らなかった」では済まされないこともあります。
保険者に請求を行う「レセプト」の作成時にも、きちんとカルテと照らし合わせて、ミスや虚偽の記載がないよう細心の注意を払いましょう。
2. 必ず領収書を発行する
施術院の会計の際、顧客への領収書の発行は必須です。施術した日付・顧客の氏名・金額の内訳・合計料金・施術院の名称・管理者の氏名といった、領収証に必要な内容を網羅したものを発行してください。
3. 自費診療をメニューに取り入れる
前述したように、健康保険が適用される範囲は限られています。規制も厳しくなっているので、保険外の自費診療を導入するのは売上の伸び悩みの打開策になるでしょう。
顧客のニーズを考慮しながら自費メニューを導入したり、自費施術のための機器を取り入れたりするのもおすすめです。
予約管理システムの導入も検討を
施術院のなかには、予約の受付管理に手をわずらわせている院もあることでしょう。そこで、予約システムを導入することもぜひ検討してください。
「リザービア」は、全国5,000店以上の美容サロンや施術院に採用されている予約管理システムです。院の営業時間に関係なく、24時間いつでもインターネットでの予約を受け付けられ、自動で管理できます。
また、顧客管理機能も備わっており、施術日・メニュー・施術内容のメモ・写真などを記録できるので、カルテ代わりに活用してみてはいかがでしょうか。
- 紙カルテを辞めたい
- 在庫管理を自動化したい
- レジ締めを楽にしたい
- リピート率を上げたい
診療報酬の不正請求は違法!クリアな会計を
いくら整骨院や接骨院の売上を上げたくても、診療報酬を不正請求するのは違法行為です。もし通報などによって発覚したら、仕事を続けられなくなってしまいます。万が一調査されても問題ないようなホワイトな運営をしましょう。
また、予約管理や顧客管理に役立つシステム「リザービア」の導入もおすすめです。顧客の施術データをしっかり管理することで、不正請求対策にもなります。気になった方は、まずは資料請求を行ってみてください。