現在マッサージ店で働いている方の中には、独立してマッサージ店の起業を考えている方もいるのではないのでしょうか。独立すると、雇われて勤務するよりも時間に融通をきかせたり、収入やスキルアップを目指したりといったメリットが考えられます。
しかし、マッサージ店を起業するにあたって、資格を取る必要はあるのでしょうか?今回は、マッサージ店を起業するための資格や、必要な開業資金などについて解説します。
目次
マッサージ店を開業するために資格は必要?|施術内容によっては資格が必須
まずは、マッサージ店を開業するために資格は必要なのかどうか、どんな資格があるのかについて見ていきましょう。
マッサージ(治療)を目的とするなら資格が必要
店舗で行う施術が、「マッサージ(治療)」を目的とするなら資格が必要です。ここでいう治療を目的とするマッサージとは、「あん摩マッサージ・指圧・鍼・灸」のことを指します。
体の不調を整えたり、健康の維持増進を図ったり、何らかの疾患改善に役立てるなど、人体の構造を理解し医術的根拠を持って施術を行うには、資格がなければなりません。マッサージ(治療)を行える資格について、詳しく見ていきましょう。
あん摩・マッサージ・指圧
あん摩・マッサージ・指圧は、器具を用いずに手や指を使う施術です。日本の伝統医学であるあん摩・マッサージ・指圧の施術を行うには、それぞれの国家資格が必要です。
あん摩マッサージ指圧師の受験資格は、次のように規定されています。
「文部大臣の認定した学校又は厚生大臣の認定した養成施設において同項に規定する知識及び技能の修得を終えている者並びに改正法施行の際現に当該学校又は養成施設において当該知識及び技能を修得中の者であって、改正法施行後にその修得を終えたもの」
厚生労働省 あん摩マッサージ指圧師国家試験の施行(※1)
高校を卒業した後、いずれかの大学・専門学校などで学び、試験に合格するとあん摩マッサージ指圧師の資格を得ることができます。
はり・きゅう
はり・きゅうで施術を行う際には、「鍼灸師」の資格が必要です。「はり師」と「きゅう師」は別の国家資格ですが、同時に扱っている治療院が多いため、一般的に「鍼灸師」と呼ばれています。
はり師、きゅう師共に、高校卒業後、次の条件を満たすことが受験資格となっています。
「文部科学大臣の認定した学校、厚生労働大臣の認定した養成施設又は都道府県知事の認定した養成施設において、必要な知識及び技能を修得したもの」
厚生労働省 きゅう師国家試験の施行(※2)
厚生労働省 はり師国家試験の施行(※3)
柔道整復師
「ほねつぎ」「接骨院」「整骨院」といった名前で開業するためには、柔道整復師という国家資格が必要です。骨折や脱臼のような怪我に対し、手術を伴わない整復や固定の施術を行えます。
柔道整復師の受験資格は、次のように定められています。
「3年以上、文部科学省令・厚生労働省令で定める基準に適合するものとして、文部科学大臣の指定した学校又は都道府県知事の指定した柔道整復師養成施設において柔道整復師となるのに必要な知識及び技能を修得したもの」
厚生労働省 柔道整復師国家試験の施行(※3)
あん摩マッサージ指圧師や鍼灸師と同じく、高校を卒業したあと、いずれかの養成機関で知識と技術を学び、試験に合格すると資格を取得することができます。
リンパドレナージセラピスト
リンパドレナージセラピストとは、リンパ浮腫の治療を目的として医師の診断・指示に基づき「複合的理学療法」という施術を行うことができる民間資格です。主にスキンケアや圧迫療法などの施術を行います。
リンパドレナージセラピストは講習を受け試験に合格すれば取得することのできる民間資格ですが、受験資格には「医師、正看護師、理学療法士、作業療法士、あん摩マッサージ指圧師」いずれかの国家資格が必要です。
リラクゼーション(癒し)を目的とするなら資格はなくても良い!
治療を目的とするのではなく、リラクゼーション(癒し)を目的とする店舗なら、資格がなくても開業することができます。マッサージが体の不調や痛みの改善を目的とする治療行為なのに対し、リラクゼーションは心身のリラックス、緊張の緩和などを目的とした行為です。
リラクゼーションにもいくつかの業種があります。代表的なリラクゼーション店にはどんなものがあるのか、見ていきましょう。
もみほぐし
もみほぐし店で行われているのは、一般的にマッサージと言われていますが、厳密にはマッサージ(治療行為)ではありません。
原因のはっきりしない慢性的な肩こりや疲労回復、リラックスを目的として筋肉をほぐす施術を行う店が「もみほぐし店」です。治療を行うわけではないので、ぎっくり腰や寝違えなどで痛みを伴う不調や、捻挫のような怪我の診察をすることはできません。
オイルマッサージ
オイルマッサージは、植物から抽出した精油など、良い香りのするアロマオイルを用いた、心身のリラックスを目的に行われるマッサージです。リラックス効果を目的として行うことが多く、体の不調を感じた時よりも、疲労が溜まった時に通う人が多いでしょう。
もみほぐしは衣服を着たまま服の上から行われますが、オイルマッサージはアロマオイルを肌に直接つけて施術します。
カイロプラクティック
カイロプラクティックとはアメリカで生まれた療法で、骨格の歪みを矯正し、人間がもつ治癒力を高めて痛みを緩和したり、正常な機能を取り戻したりすることを目的としています。
整体と似ていますが、日本ではカイロプラクティックの歴史は浅く、国家資格や法的な規定がありません。医療行為ではなく民間療法に位置づけられているため、資格がなくても施術をすることができます。
マッサージ店を開業するのに必要な手続きは?
マッサージ店を開業するにあたって、資格が必要な業種、必要のない業種について解説しました。ここからは、マッサージ店を開業するにあたって、どんな手続きが必要なのかを見ていきましょう。
「開業届」を出そう
リラクゼーションを目的とした店舗なら、資格がなくても「開業届」を提出すればマッサージ店を開業することができます。
開業届は店舗を開業する地区、もしくは自身の所在地の税務署に提出する必要があります。開業届は正式名称を「個人事業の開業・廃業等届出書」と言い、税務署で入手するか、国税庁のホームページからダウンロード・プリントアウトをします。
「開業・廃業等届出書」という名前のとおり、今開業している店舗を廃業する際にも使用する書類なので、開業と廃業を選ぶようになっています。新たにマッサージ店を開業するので、「開業」に丸をつけましょう。基本的には、自分が住んでいる「住所地」のある地域に納税することになりますので、自宅の住所を記入します。
次に、管轄税務署名を記入します。管轄税務署は自分の居住地か、自宅以外で店舗を開業する場合は事業所が存在する地域を管轄する税務署になります。
氏名・生年月日は開業する本人のものを記入します。押印する印鑑は、個人名でも店舗名などの屋号のものでも構いません。
職業欄には規定がありませんので、わかりやすい名称で記入します。しかし、業種によって個人事業税の税率が異なります。業種ごとの税率については、各都道府県のホームページで確認してください。
保健所への届け出は必要ないの?
リラクゼーションやマッサージサロンというと、保健所への届出が必要だと考える人もいるかもしれませんが、保健所への届出は開業には必須ではありません。ただし、あん摩マッサージ指圧師や鍼灸師などの資格が必要な治療や、まつエク・眉毛カットなど美容師資格が必要な施術を行う場合は、保健所への届出も必要になります。
マッサージ店の開業については、こちらの記事もご覧ください。
「マッサージ師は資格なしでもなれる?独立開業に必要な手続きやおすすめのシステムとは」
マッサージ店の開業資金は?どんなものにお金がかかるの?
新規で店舗を開業するにあたって一番気がかりなのは、やはり資金面ではないでしょうか。ここからは、マッサージ店の開業にあたって必要な資金について見ていきましょう。
物件にかかる費用
新たな店舗の開業にあたって、まず用意しなければならないのは物件です。どういった店舗をどのような営業形態で開業するかによって、必要な資金も変わってきます。マッサージ店にはどのような営業形態があるのかについて見ていきましょう。
賃貸で開業する
一般的に店舗の営業としてまず思い浮かぶのは、店舗用の賃貸物件を契約して開業することではないでしょうか。営業用として用意されるテナント物件を借りて開業する場合、物件用の資金はかなり高額が必要になってきてしまいます。
物件そのものの家賃は物件の広さや立地、地域によってもかなり幅がありますので、一概には言えません。さらに、内装工事費などがかかる場合もあります。
自宅の一部でサロンを開業する
自宅の一部をサロンにして開業する場合は、物件取得に関わる費用がかかりません。しかし、生活スペースそのままではサロンに見えず、集客がはかどらないという懸念があります。
そのため、自宅でサロンを開業したい人は、リラックスできる空間を演出するための改装が必要になってくるでしょう。この場合、賃貸とは違って敷金礼金や前家賃のような出費はありませんが、やはり内装工事費にそれなりの資金が必要になります。
レンタルサロンで開業する
レンタルサロンという営業形態もあります。レンタルサロンとは、施術用ベッドや椅子などの設備を備えたスペースを、日時を指定して貸し出すサービスです。店舗用の物件を契約して開業するよりも、費用が抑えられるメリットがあります。
また、予めリラクゼーションサロン向けの内装になっており、内装工事費がかからないのもメリットと言えるでしょう。反対に、空間づくりにもこだわりを持ちたい、という人には合わない営業形態です。
出張型で開業する
固定の店舗を持たず、お客様の元へ赴いて施術をする出張型マッサージ店舗というものもあります。出張型の場合、お客様の自宅や宿泊施設などに出向くため、サロン用の物件を用意する必要がなく、他の営業形態と比べると大幅に物件費用を抑えることができるでしょう。
備品や消耗品にかかる費用
開業に必要な費用は、物件だけではありません。店舗で使用する消耗品や什器を用意する費用も必要です。マッサージ店を開業するのにどんなものが必要になるのかを見ていきましょう。
ベッドや椅子、キャビネットなどの家具
どんな業種であれ、マッサージ店を開業するのであれば施術用のベッドや椅子は必ず必要です。また、消耗品類など小さなものをしまっておく、キャビネットや棚も必要になります。
出張型で開業する場合も、折りたたんで持ち運べるベッドや椅子などが必要になることもあります。どんな営業形態を選ぶにせよ、ベッドや椅子の家具は必ず用意しましょう。
タオルやシーツ、ガウンなどの消耗品
バスタオルやフェイスタオルをはじめとしたタオル類や、ベッドシーツやペーパーシーツ、お客様が着るガウンなど、サロンで使用する消耗品が必要です。また、筆記用具や領収書のような事務用品や、店内の清掃に使用する清掃用品なども消耗品に含まれます。
エステサロンやオイルマッサージなら化粧品類も必要
エステサロンやオイルマッサージを行う店舗では、オイルやジェルなども必要になります。施術メニューによっては、スキンケアやボディケアを行うための化粧品類も取り揃えておきましょう。
開業資金だけでなく、運営資金も必要
マッサージ店を開業するためには、いくらかのまとまった資金が必要ですが、経営を続けるためには運営資金も必要になります。ここからは、マッサージ店の経営にあたって掛かるランニングコストについて見ていきましょう。
賃貸料、水道光熱費
マッサージ店を開業する際、店舗として利用する物件について費用がかかると前述しました。経営を続けていくにあたっても、賃貸料は毎月掛かってきます。また、水道や空調設備を利用する際の水道光熱費などの維持費も必要です。
人件費
自分以外にスタッフを雇用する場合は、人件費も必要になります。給与の他に、法定福利や福利厚生など職場環境を整えるための費用も含まれます。
電話やネットなどの通信費
電話やインターネットなど、連絡手段を設置するための通信費もランニングコストとして掛かります。
消耗品費
開業のときに揃えますが、日々使用していくうちに消耗してしまうため、新たに買い足す必要があります。
広告宣伝費
マッサージ店を開業しても、認知してもらえなければ来客がありません。開業したことを認知してもらうためには、広告を打つなどの宣伝活動をする必要があります。チラシを配布したり、フリーペーパーや雑誌などに広告を打ったり、Webサイトを作成したりといった広告宣伝のための費用が掛かります。
安定して経営をつづけるためには、広告宣伝は必要不可欠。開業時以外にも、定期的に広告を打ち出すことで、顧客の認知を高める必要があります。
税金、保険料などの諸費用
個人事業主として開業するなら、税金もランニングコストに含まれます。また、事業主の生命保険や健康保険、店舗にかかる地震保険や火災保険のような各種の保険料も必要になるでしょう。
エステサロンで必要な経費については、こちらの記事をご覧ください。
エステサロンで出来る経費の削減!無駄なコストを省いて有利に使う!
安定した経営には「リザービア」の利用がおすすめ!
マッサージ店の経営を始めたばかりのころは何かと支出が多く、しばしば支出が売上を上回ってしまうこともあります。経営を安定させるためにはコストを抑えたいところですが、思い切って外部システムを利用するのも手です。
そこでおすすめなのが、予約システム「リザービア」の導入。リザービアの利用をおすすめする理由について見ていきましょう。
予約を一元管理!接客に専念しよう
マッサージ店やエステサロンといった店舗は、予約を受け付けて施術をすることがほとんどだと思います。しかし、予約の管理作業には意外と時間や手間がかかってしまいます。特に、スタッフを雇用せず自分一人で経営を回していると、予約管理に手間取って施術時間が取れなくなる、といった事態にもなりかねません。
「リザービア」を利用すれば、インターネットを通じた予約はもちろん、電話や来店で直接受けた予約も、ひとつの端末から一元管理できます。予約管理にかかる作業時間を大幅に削減し、接客に専念できるようになります。
インスタやGoogle経由で予約!集客につなげよう
インスタグラムやGoogleといった外部システムと連携することで、インスタグラムのプロフィール画面やGoogleの検索結果に予約ボタンを設置し、ワンアクションで予約を受け付けることもできるようになります。
店舗の情報検索から予約までの導線を短くすることで、新規顧客の獲得につなげることができるでしょう。
マッサージ店の開業は運営資金も考慮しよう
マッサージ店を開業するには、開業資金だけでなく、経営を続けるにあたってランニングコストも必要です。削減できるところは削減し、必要な部分にはしっかりと費用を掛けることも考慮しましょう。
しっかりとした準備をし、理想のマッサージ店づくりを実現しましょう!
参考サイト:
※1:厚生労働省 あん摩マッサージ指圧師国家試験の施行
※2:厚生労働省 きゅう師国家試験の施行
※3:厚生労働省 はり師国家試験の施行
※4:厚生労働省 柔道整復師国家試験の施行