近年、外国人観光客の増加が顕著になってきました。それにともなって日本の美容室の需要も増えてきているようです。
日本の美容室ならではのサービスに魅力を感じる外国人観光客も多く、美容室が多言語対応することは、集客やリピート率アップを目指すのであればとても大事になってきます。
今回は、美容室における英語・多言語対応の必要性と方法について紹介します。
目次
美容室が英語対応を始めるべき理由
外国人観光客は日本の美容室利用についてどのように感じているのでしょうか。ここでは、日本の美容室利用に関する調査から考えられる多言語対応の必要性について説明します。
外国人観光客の美容室利用における実態
2024年9月に実施された美容に関する調査研究機関「ホットペッパービューティーアカデミー」の「美容サロンにおけるインバウンド実態調査」によると、ヘアサロンの利用意向は18.8%で美容サロンのうち第3位でした。
美容室従事者へ実際に外国人観光客が来店して選んだメニューを聞いたところ、1位はカット(80.1%)で、次点で「シャンプー&ブロー」(65.0%)となりました。「シャンプー&ブロー」は日本人が単独で選ぶことは少ないメニューであり、文化の違いが見られます。
引用元
【前編】外国人旅行者の半数に利用意向あり!?日本の美容サロンの魅力とは?|ホットペッパービューティーアカデミー
日本の美容室に対するインバウンド需要の拡大
2024年の「インバウンド消費動向調査」によると、訪日外国人旅行消費額は年々増加しており、2023年と比べて53.4%増と大幅な増加が見られました。
また、「美容サロンにおけるインバウンド実態調査」の美容サロンでの「受け入れ経験」について、「外国人旅行客が来店したことがある」と回答した美容室は58.2%で、ネイルサロンに続いて第2位という結果でした。
外国人観光客は日本の美容室に対して、サロンの清潔さ、スタッフの技術レベル、お客様の期待に応える仕上がりなど好意的な印象をもっており、今後はますますこうした期待に応えることが重要になりそうです。
また、近年の円安も外国人観光客数やインバウンド消費額の増加を後押しすると予想されます。
引用元
インバウンド消費動向調査|観光庁
外国人観光客対応の課題は「コミュニケーション」
「美容サロンにおけるインバウンド実態調査」によると、外国人観光客とのコミュニケーションにおける最大の課題は言語の壁であることも結果にあらわれています。
美容室従事者への「海外からのお客様が来店されたとき、どのようにコミュニケーション・会話しましたか?」という質問について、5割以上が身振り手振り、4割以上がスマホの翻訳アプリを使って対応していました。
「海外からのお客様が来店したとき、困ったことがあったか」という質問においても、4割近くが「こちらの言いたいことが伝わらない」「お客様のおっしゃることがわからない」と回答しています。
コミュニケーションの課題は、外国人観光客の対応で避けられないことがうかがえます。
外国人観光客が感じる日本の美容室の魅力
外国人観光客が日本の美容室を利用してみたいと思う理由はいくつかあります。ここでは、外国人観光客が日本の美容室に感じる魅力を紹介します。
日本独自の技術を体験
日本の美容室に感じる魅力のひとつが、日本特有の繊細な手技と最新の技術の融合です。髪質や顔立ちを考慮し、個人それぞれに合ったスタイルでカットしてもらえたり、トレンドを取り入れた多種多様なカラーリングなど、豊富な選択肢から選ぶことができます。
美容室で使用される製品も、ダメージに配慮した髪に優しい成分が多く、髪質改善を図る最新技術が取り入れられています。
丁寧なカウンセリング
日本の美容室では、お客様の希望をしっかりヒアリングします。普段の髪の扱いや悩み、ファッションの好みをヒアリングし、その情報を元に最適な髪型やカラーを提案します。
こうした丁寧なカウンセリングは、外国人観光客が満足のいく仕上がりになるでしょう。また、お客様に安心感を与えられ、信頼関係を築くことにもつながります。
英語対応ができるスタイリストがいれば、さらにリピーターになる可能性が高まります。
おもてなしを体験
施術中に提供されるドリンクや、リラックスできる空間作りは、日本ならではの細やかな心配りやおもてなしを感じさせます。
また、施術後にスタイリングアドバイスや自宅でのケア方法を教えてもらえるサービスも、海外では体験できないこととして外国人観光客から高く評価されるポイントです。
美容室で使える英語フレーズと接客のポイント
外国人観光客にとって、英語対応できるスタッフの存在は安心感と満足度につながります。これまで外国人観光客の来店がなかった美容室でも、今後はその可能性が増えると予想されるため、突然来店されてもあわてないように対策をしておくことが大事です。
言語の壁を越えてスムーズなコミュニケーションが取れると、お客様は自分の希望をしっかりと伝えられるようになります。その結果、施術にも満足感を得ることができ、再来店を考えるきっかけとなるのです。
英語を活用するコツ
まずは基本的な単語やフレーズを理解しておくことが重要です。特に、カットやカラーリング、トリートメントなどの美容関連の用語は、施術内容や希望を伝える際に必須となります。
以下に基本的な施術に使用する単語を紹介します。
美容室:beauty salon(ビューティーサロン)
理容室:barber shop(バーバーショップ)
カット:hair cut(ヘアカット)
パーマ:perm(パーム)
ブリーチ:bleach(ブリーチ)
前髪:bangs(バングス)、 fringe(フリンジ)
揃える:trim(トリム)
ブロー:blow-dry(ブロードライ)
頭皮:scalp(スカルプ)
カラーリングについては、色の名称や、明るさや暗さを示す言葉を知っておくことで、より具体的に希望をヒアリングできるでしょう。
カウンセリングで使える英語例文
丁寧なカウンセリングを期待して来店する外国人観光客のためにも、カウンセリングに使える英文の習得はとくに大事になります。
以下はカウンセリングに使える英文例になります。
・本日、担当させていただく〜です。
I’m ~. I’ll be your stylist today.
・本日はいかがいたしましょう。
How would you like your hair done today?
・どのようなヘアスタイルにしたいですか?
How would you like your hairstyle?
・どのくらい短くしますか?
How short would you like to go?
・カラーはされますか?
Would you like your hair colored?
・ヘアカタログ/髪型のサンプルをご覧になりますか?
Would you like to check a hairstyle catalogue/some examples of hairstyle?
お客様をリラックスさせる雰囲気づくりと会話のコツ
美容室で外国人観光客を受け入れる際、歓迎の雰囲気づくりはとても大切です。はじめて訪れるサロンに対して感じる不安や緊張を和らげるためには、心のこもったサービスや安心できる空間であることがポイントです。
たとえば、入口に英語で「いらっしゃいませ」と書いたウェルカムボードを設置したり、入店された際には、笑顔で「Can I help you?」と声をかけたりするとよいでしょう。
施術中は、お客様の趣味や訪れた場所について聞くことで、リラックスして施術を受けられるようにします。
英語(多言語)対応に向けたおすすめの取り組み
ここでは英語(多言語)対応に向けた具体的な取り組みを紹介します。
英語(多言語)メニュー表作成のポイント
美容院におけるメニュー表は、サービス内容を示すだけではなく、お客様と美容師とのコミュニケーションの一環としても重要な役割を果たしています。
さまざまな文化背景を持つ外国人観光客が安心してサービスを受けられるように、メニューを多言語化するだけではなく、以下のポイントも抑えて作成すると良いでしょう。
イラストや写真でわかりやすく伝える
外国人観光客とは、視覚的なコミュニケーションが効果的です。メニュー表にイラストや写真を使用したり、技術シートやカタログを併用したりすることで、お客様が望むヘアスタイルやカットのイメージをより詳細に理解しやすくなります。
ヘアケア用品や追加サービスの表記方法
トリートメントメニューは、「トリートメント」や「ヘアトリートメント」という表現に加え、「ダメージケア(damage care)」といった具体的な効果が伝わる言葉も盛り込むことがポイントです。
パッケージメニューやセットメニューに関しても、「カットとカラーのセット」は「Cut & Color Package」と表現し、各サービスの内容や時間、料金についても明確に記載しておくとより効果的です。
さらに、キャンペーンや特別メニューがあれば、英語表記を併記することで、外国人観光客にもその魅力を伝えられます。
コミュニケーションボードを作成
カラーやパーマなどの施術中、手袋を両手にはめて手が塞がった状態のことがあります。その際、翻訳ツールの入力ができず文字のコミュニケーションが困難になります。
よくある質問をコミュニケーションボードにイラストでまとめておくことで、外国人観光客とのコミュニケーションを効率化できます。
SNSやWebサイトの多言語化
多言語で情報発信する際は、WebサイトとSNSを組み合わせるのが効果的とされています。
外国人観光客が日本の美容室に来店する経路の上位はインターネット検索です。そのため、Webサイトを通じてテキスト情報だけでなくコンテンツ、ビジュアル、デザインなどの情報を国ごとの言語・文化に合うように伝えるとよいでしょう。
また、Instagram、X(Twitter)、FacebookなどのSNSは、世界中に利用者がいます。海外向けのアカウントを運用することで、認知度が大きく向上する可能性があります。
また、複数のSNSを運用し、画像や動画を合わせることで、より効果が期待できるでしょう。
多言語対応をサポートするツール
多言語対応に役立つ便利なツールを紹介します。
多言語対応の予約システム
外国人観光客を集客するには、英語または多言語に対応した予約システムが役立ちます。
リザービアは、英語・中国語(簡体字/繁体字)・韓国語・タイ語に対応しているエステサロン運営に特化した予約管理システムです。
Googleビジネスプロフィールと連携できるため、Googleマップからお店を探してそのままかんたんに予約でき、おすすめです。
翻訳ツール
Webサイト翻訳ツールを使用すれば、既存のWebサイトをさまざまな言語に翻訳できます。翻訳ではなく、製品やサービスを特定の国や地域に合わせ、言語だけでなく、デザインやUI、支払い方法、サポートなども現地に最適化するローカライズの機能も備わっています。
翻訳ツールによって、迅速に多言語対応できるだけでなく、開発・管理コストの削減や翻訳精度の向上も見込めます。
多言語対応のPOSシステム
外国人観光客が多い美容室であれば、お客様が見る画面を英語や多言語表示に変更できるPOSレジがおすすめです。精算画面を多言語表示できれば、日本語がまったくわからない外国人観光客でも戸惑わずに会計ができ、会計ミスやトラブル防止にもなります。
英語(多言語)対応で外国人観光客の満足度アップ!
日本の美容室に対する外国人観光客の需要は今後も増えると予想されます。外国人観光客は日本の美容室にさまざまな魅力を感じており、多言語対応することで新規顧客の獲得やリピーター増加につながる可能性があります。
今回紹介した英語(多言語)対応の方法を参考に、できることから準備してみてはいかがでしょうか。