鍼(はり)治療や灸治療を行い、体の調子を整える鍼灸院。治療院の一種で開業するのは、「はり師」と「きゅう師」の国家資格を持つ鍼灸師です。
そんな鍼灸院ですが、開業していたけれど経営に失敗してしまった…ということも少なくありません。なぜ、鍼灸師が治療院を開業しても、失敗してしまうことがあるのでしょうか?
そこで今回は、鍼灸院の経営失敗の原因と対策、経営を安定させるために気をつけたいポイントについて解説します。
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目次
鍼灸院の廃業率は高い?
鍼灸院を含む治療院は、次々と開業されているため数が増えていますが、一方で、廃業も多い業界であるとされています。
東京商工リサーチによると、2018年のマッサージ業、接骨院等の廃業数は過去10年で最多で、5年連続前年を上回っているとされています。
鍼灸院をはじめ、整体院やもみほぐし店などの治療院・リラクサロンは、スマホやパソコンを多用することによる首や肩の負担から、現代人からのニーズは高いといえます。
しかし、需要を上回るほどの店舗数が存在することによって競合争いが起きてしまい、結果業績不振に陥る店舗が多いのが原因と考えられます。
そのため、今後も、治療院・リラクサロンは業界内で新規開業・廃業ともに、大きな動きが続くと予想されています。
引用元
中小企業庁:2021年版「小規模企業白書」 第3節 開廃業の状況
東京商工リサーチ:2018年「マッサージ業、接骨院等」の倒産状況は過去10年で最多93件に急増、5年連続で前年を上回る
鍼灸院が失敗してしまうのはなぜ?主な5つの原因と対策を解説!
鍼灸院の経営に失敗してしまうのには、いくつかの原因が考えられます。ここでは主な5つの原因と、それに対する対策をそれぞれ解説します。
1.競合が多い
鍼灸院などの治療院は、開業・廃業ともに多いと前述しました。衛生行政報告例を見てみると、治療院・リラクサロンの全体数は年々微増しており、現在ではコンビニよりも多いとされています。
とくに人口比率が高い都市では飽和状態にあり、ニーズが高いとはいえ競合が多く、お客様が分散してしまい利益が出せないことが失敗の原因といえるでしょう。
引用元
政府統計の総合窓口(e-Stat):衛生行政報告例 | ファイル | 統計データを探す
他店との差別化を図ろう
数多くの競合店のなかに埋もれてしまわないためには、他店と差別化を図ることが大切です。得意な施術や自分の強みを前面に出し、「ここでしか受けられない」「また来たい」とお客様に思ってもらえるよう、ブランディング化を図りましょう。
また、開業時、周辺に競合する他店が少ない地域を選ぶことも大切です。
2.資金不足
鍼灸院を開業する際には、ある程度まとまった開業資金が必要です。しかし、設備やレイアウトなどにこだわって開業に多額の資金をかけてしまい、初期投資を回収できず、赤字が続いて鍼灸院の経営に失敗してしまうことも考えられます。
また、十分な開業資金が用意できないと、経営が軌道に乗るまでの運営資金が不足してしまうこともあります。
事前に綿密な資金計画を立てよう
開業後は、積極的に集客しても思うように顧客を獲得できないことも考えられるため、十分な利益が出るまで時間がかかることも想定しておかなければなりません。
そのため、開業費用・当面の運営にかかる資金をしっかりと計画し、さらに、不測の事態に備えて、十分な資金を用意しておきましょう。
3.顧客分析が曖昧
ただ漠然と広告を打ち出しても、効果的な集客はできません。ターゲットとしたい客層の属性によって、集客方法はもちろん、用意するメニューや開業エリアなど、さまざまなことがが異なります。
しかし、顧客分析ができていないと、店舗の経営方針が曖昧になってしまい、効果的な宣伝を行うことができません。集客につながらないため売上を立てることができず、鍼灸院を廃業しなければならない、という結果になってしまうでしょう。
経営方針やコンセプトを明確にしよう
経営方針やコンセプト、主力となるメニュー、打ち出したい強みなど、どんな鍼灸院にしたいのかを明確にしましょう。経営方針を確立し主な客層の属性を絞ることで、自ずと開業するべきエリアや効果的な宣伝方法も明確になります。
4.業務負担が大きく手に負えなくなってしまった
鍼灸院の運営は、お客様に施術だけすればよい、というものではありません。顧客管理や経理などの事務作業、設備や道具の管理など、さまざまな業務をこなす必要があります。
特に開業直後は慌ただしく、スタッフも少ないうえ経験も不足しているため、自分やスタッフの負担が大きくなりすぎてしまうことも考えられるでしょう。
その結果、たとえ十分な売上があったとしても、業務が多すぎて手が回らなくなり、作業が滞ってしまって経営を続けられなくなることがあります。
オートメーション化も検討しよう
自分一人だけで運営していたり、施術以外の業務を担当するスタッフを雇用していなかったりする場合は、業務をオートメーション化することも検討しましょう。
たとえば、経理や予約受付などの業務は、経理ソフトや予約システムなどの各種システムを利用することで、業務負担を軽減することができます。システムに任せることができる業務は、オートメーション化してしまいましょう。
5.施術の技術が不足している
そもそも、施術者の技術が不足している、ということも考えられます。鍼灸院をはじめとした治療院やリラクサロンに来店するお客様は、「身体の不調が改善できた」などの結果を求めています。
どれだけ経営方針やコンセプトを明確化し、他店との差別化を図って効果的な宣伝広告を打ち、新規顧客を獲得したとしても、施術に満足してもらえなければ、次の来店にはつながらないでしょう。
腕を磨こう
まず、施術者は自分の技術が不足していることをきちんと自覚しましょう。自覚した上で、お客様に満足してもらえる施術ができるよう、日々勉強や練習を重ね、腕を磨いていくことが大切です。
また、「これだけは誰にも負けない」と自信が持てる技術を身に付けることができれば、ブランディング化にもつながります。
鍼灸院の経営を安定させるポイント
鍼灸院の経営に失敗してしまう原因については、おわかりいただけたのではないでしょうか。ここからは、失敗の原因を踏まえて、鍼灸院の経営を安定させるポイントについて見ていきましょう。
1.経営について勉強する
鍼灸院の経営者になるのであれば、鍼灸の知識や技術の他に、経営の知識が必要です。しかし、そもそも経営に関する知識が足りないことも考えられるでしょう。
今まで他の鍼灸院に雇用される立場であった場合、突然経営者としての目線を持ち鍼灸院を運営する、となっても難しいですよね。そのため、経営に関する本を読んだり、セミナーに参加したりするなどして、経営やマーケティングについて学びましょう。
思い切ってプロに任せる方法も
マーケティングは時代や開業地域、店舗の方針など、さまざまな要因で異なりますし、経理や税務などは複雑で、しっかりと勉強する時間が取れない、ということもあるかもしれません。
その場合は、経営コンサルタントや会計士などの専門家に相談して、思い切って任せてしまってもよいでしょう。コストは必要ですが、第三者の専門家に見てもらうことで、自分の視点では気づけなかった経営課題に気づけることもあります。
2.メニューを絞る
多彩なメニューを提供することは、それ自体が店舗の売りになることもありますが、お客様から見ると「どれを選べばいいのか悩んでしまう」「おすすめがわからない」といったような、マイナス要素として働いてしまうこともあります。
そこで、思い切ってメニュー数を絞ってしまうことも検討しましょう。提供メニュー数を絞ることによって、お客様が「ここの鍼灸院はこれが得意なんだ」と、専門性を感じる可能性があります。失敗の原因と対策で述べた他店との差別化・ブランディング化にもつながるでしょう。
3.ターゲットに合わせた集客方法を取る
広告宣伝にはたくさんの方法があります。すべての方法を網羅することは、認知度の拡大には非常に高い効果が期待できますが、莫大な費用が必要になってしまうため現実的ではありません。
そのため、どんな客層を主なターゲットにするかを定め、ターゲットに合わせた集客方法を取りましょう。
たとえば、高齢層が対象ならポスターやチラシを作る、若年層を集客したいのならSNSやWeb広告を打つなど、属性に合わせて広告宣伝を打ち出すことで、高い集客効果が期待できます。
4.安売りしすぎない
メニューの価格を安くしすぎない、ということもポイントのひとつです。メニュー価格が安すぎると、顧客は増えるかもしれませんが、売上が大きく上がるということは少ないです。それどころか、赤字になってしまう可能性も考えられます。
また、周辺の競合他店も価格を安くしはじめてしまうと、価格競争が起きてしまい、さらに値下げせざるをえない状況にもなりかねません。そうなると、どれだけ顧客がいても赤字を脱せず、共倒れになってしまう可能性も。
提供サービスの価格は安くしすぎず、適正価格を保つようにしましょう。
5.リピーターの獲得を目指す
定期的に来院してくれるリピーターを増やすことで、売上が安定します。リピーターを増やすには、お客様から信頼してもらうことと、施術に満足してもらうことが大切。
さらに、存在を忘れている、治療の必要性を感じていない、といった理由で長く来店していないお客様には、DMなどで来院を促す販促活動も行いましょう。
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鍼灸院を失敗してしまう原因を探って対策しよう!
鍼灸院は比較的小規模で開業できることから、新規開業する店舗が多く、鍼灸院を含めた治療院は年々微増傾向にあります。
新規開業が多いのにも関わらず微増なのは、廃業も多いから。廃業が多い原因には、競合が多いため顧客が分散してしまい経営不振に陥ってしまうことをはじめ、さまざまな原因が考えられます。
今回紹介した、鍼灸院の経営に失敗してしまう代表的な原因を踏まえてしっかりと対策し、開業の成功を目指してみましょう。いくつかの原因はリザービアを導入すると対策できるため、導入を検討してみてはいかがでしょうか。