美容室を新しくオープンする際に、居抜き物件を利用する人も少なくありません。居抜き物件にはメリットがたくさんありますが、契約にあたって知っておかないと損をしたりトラブルに発展したりする可能性がある内容もあります。
しっかりと正しい知識を身につけて、快適なサロン経営をおこないましょう。
目次
美容室の居抜き物件とは？
一般的に「居抜き物件」とは、前にその物件を借りていた店で使っていた設備や道具などが残った状態になっている物件のことです。美容室の居抜き物件では、シャンプー台やセット面、空調設備、什器などが残っています。
美容室の居抜きについては、下記の記事でも詳しく解説しているので、あわせてご覧ください。
参考記事：美容室の居抜きとスケルトンの違いとは？ 居抜き物件のメリットと注意点｜居抜き物件はどこで探せる？
スケルトン物件とはどこが違うの？
居抜き物件と比較されるものとして、スケルトン物件があります。スケルトン物件とは、建物の形だけが残っており、居抜きとは対照的に内装などがすべて取り払われて、何もないまっさらな状態の空間です。コンクリートや配管などもむき出しになっています。
居抜き物件のメリットと注意点
居抜き物件にはメリットと注意点があります。スケルトン物件と比較しつつ見てみましょう。
居抜き物件のメリット
スケルトン物件にはない大きなメリットが、あらかじめ必要なものが揃っていること。設備投資などが不要になり、初期費用を安く抑えられるうえ、大がかりな工事をしなくて済むため、比較的早くオープンできます。
居抜き物件の注意点
スケルトン物件に比べて、内装などのデザインの自由度が低いという注意点もあります。また、前にあったサロンの印象を引き継ぐことがあるので、マイナスイメージの場合はよくない影響を受ける可能性があることも知っておきましょう。
物件を契約する前に知っておきたい流れを紹介
ここからは、居抜き物件を契約するときにどのような流れでおこなわれるのかをチェックしましょう。
1. 物件をチェックする｜給水や電気・ガスなど
物件の状態は、細かい部分まで確認が必要です。たとえば、シャンプーの際に給排水が問題なくおこなえるか、ドライヤーを一度に複数台使っても電気容量は足りるか、ガス設備が整っておりお湯がきちんと利用できるかなど、事前にしっかりチェックしておきましょう。
2. 申し込みをおこなう｜決まったら早めがおすすめ
物件を念入りにチェックしたうえで問題がなければ、速やかに申し込みましょう。申し込むのが遅いと、せっかく気に入った物件が見つかっていてもほかの人に取られてしまう可能性があります。
また、申し込みが終わっても、実際に契約するまでは条件次第で他者に取られる可能性があるため注意が必要です。
3. 融資の申請をおこなう｜申し込みをしたら早めに
申し込みをしたのち、必要があれば融資の申請もしておきましょう。融資が下りるかどうかの決定までには1～2カ月かかることもあるので、早めに申請をおこなうようにしてください。
4. 契約をおこなう
融資が決定したら、いよいよ契約です。融資の種類によっては営業許可が出てから実行されるものもあるため、その場合は直近の物件取得費や工事費用などは自分で工面しなければなりません。
スムーズにおこなうには？ 契約前に知っておきたい基礎知識
つづいて、美容室の居抜き物件を契約する前に知っておきたい、契約に関する基礎知識をお伝えします。
1. 契約形態とは？
物件を借りるときには、「普通借家契約」と「定期借家契約」という2種類の契約期間の考え方があります。以下でそれぞれの特徴を見てみましょう。なお、契約内容や特約によっては条件が変わることもあります。
普通借家契約
普通借家契約とは、1年以上の賃貸借期間（決まりはないが2年としているところが多い）が定められており、期間が満了しても、借主と貸主双方に問題がなければ契約が更新されていく形式です。
定期借家契約
定期借家契約の場合、決まった賃貸借期間で契約が終了します。更新できないケースが多く、更新できる場合でも再度契約を結び直さなければなりません。また、原則として中途解約もできないため、期間満了まで家賃が発生します。
フリーレントとは？
上記の二つとは別に、契約時に「フリーレント」というサービスを受けられることがあります。「フリーレント」とは「賃料無料」という意味で、契約期間内でも、1カ月や2カ月など家賃が発生しない期間を設けてくれている場合があるのです。
フリーレントと謳われていなくても、交渉次第で適用してもらえる可能性があるので、費用が気になる場合は問い合わせてみてはいかがでしょうか。
2. 契約時に支払う費用の種類
次に、物件の契約時に必要な費用にはどのようなものがあるのかをチェックしましょう。
保証金｜敷金
保証金と敷金はほぼ同義で使われます。もともと、保証金とは、もし家賃の滞納が発生したときに物件の持ち主が損をしないための預かり金のことでした。現在は敷金と同様、退去時の原状回復費用などにも回され、残った分は借主に返還されます。
礼金
礼金は、物件を借りる謝礼として支払われるお金です。家賃1～2カ月で設定されている場合が多いですが、不要なケースもあります。お礼として支払うため、退去する際の返還はありません。
仲介手数料
仲介手数料とは、借主と貸主の間に立って物件の案内や交渉などをおこない、取引を無事に成立させてくれた不動産会社に対価として支払うお金です。上限が定められており、家賃1カ月分に消費税を合わせた金額を上回ることはありません。
保証料
保証料とは、保証会社に対して支払われる費用のことです。仮に借主が家賃を払えなくなったとき、連帯保証人を立てていればその人が払います。しかし、契約時に連帯保証人を用意できないケースなどでは、保証会社に保証料を払うことで契約を結べるようになります。
3. 決めておくべき解約時の内容とは？
物件の契約時には、解約に関する内容も決めておかなければなりません。
解約通知
解約を希望する際は、いつまでに貸主に通知をおこなえばいいのかを確認しましょう。通知から退去までを少しでも短い期間にできるよう、前もって交渉しておくことがおすすめです。
原状回復｜引き渡し条件
原状回復とは、物件から撤退する際に契約前の状態に戻すことです。
借主が普通に生活するうえでの破損などは貸主の負担になるのが一般的ですが、過失などによる破損の場合や特約が設けられているときは借主負担になるケースもあります。借主側でどの程度まで回復をおこなうのか、入居時に引き渡し条件を決めておくと安心です。
居抜き物件で注意したい造作譲渡契約とは？
居抜き物件という特殊な物件では、特に注意したい点として「造作譲渡契約」があります。しっかり理解しておかないとトラブルに発展する可能性もあるため、詳しく解説していきましょう。
造作譲渡契約とは
美容室の居抜き物件における造作譲渡契約とは、建物自体に対する不動産契約とは別で、元の借主が自分たちの残した設備や内装（造作物）を次の借主に譲るという内容の契約です。
不動産会社が仲介してくれる場合もありますが、当事者間でおこなう、もしくは第三者に依頼するケースもあります。残された設備内容などにもよりますが、費用としては数百万円かかることもあるようです。
契約トラブルを防ぐ3つのポイント
造作譲渡契約においては、トラブルが発生することも少なくありません。入居後の無用なトラブルを防ぐために、以下のポイントを押さえておきましょう。
1. 設備の状態を調べる｜オーナーにヒアリング
設備がどの程度使えるかという状態をチェックし、オーナー（前の借主）にヒアリングができれば、購入・工事をおこなった時期や故障の有無なども聞いておくことが大切です。
状態によっては入居前やオープン後すぐにメンテナンスや修理・交換などが必要になる可能性もあり、多額の費用負担が発生するかもしれないので、気になる点はしっかり確認しましょう。
2. 譲渡される物品を確認する
居抜き物件に残ったものをすべて譲渡してもらえるとは限りません。前のオーナーが移転のためにその物件を退去した場合などは、次の店舗に持っていく物品もあるかもしれないためです。
あとで食い違いが発生しないように、何が残って何が持って行かれるかをきちんと確認しましょう。
3. 双方の同意で書面に残す
1と2で確認した内容や譲渡金、契約に関する条件などを、譲渡する側とされる側が双方同意したうえでしっかり書面に残すことも重要です。万が一トラブルが起きた際には、書面が大切な証拠になります。
事前準備は入念に！ スムーズな契約を目指そう
居抜き物件を利用すると、すべてではないにしても必要なものを買わなくて済むため、便利に感じられる反面、契約に関する注意事項やかかる費用など、前もって頭に入れておきたいこともたくさんあります。
居抜き物件において重要な造作譲渡契約についてもしっかり学び、トラブルのないスムーズな契約を目指しましょう。
