前回2018年2月のインタビュー時には1店舗で経営されていた東京都多摩市にある完全男性専門のBARBERSHOP「KINGSMAN TOKYO(キングスマントウキョウ)」様。約4年経過した現在ではグループ全体で理髪店を4店舗展開され、どのお店もリピーターで予約が埋まっています。
今回は短期間に多店舗展開された経緯や経営で意識されていることを代表の吉田 奈津樹様にお話をお伺いしました。
>前回インタビュー記事:オープン2年でクーポンサイトを使わず『人気店』になったバーバーの成功事例目次
サロンを立ち上げた経緯・意識していたこと
僕は学生時代はコンテスターでした。タイトルをとるのが好きな職人気質の技術者からの経営者です。サロンワーカーとして勤めていた頃は、指名のお客様の予約で朝から夜まで連日満席でした。売上、リピート率が他の社員よりも業績が良い状態で、元々いた会社でオープニングでの店長を2年経験し、24歳で独立しました。
経営者1年目はお金も時間もありません。やりたくても余裕がないことがほとんど。だからこそしんどい時期をできる限り短くするために死に物狂いで働きました。お金と時間を手に入れたいのならそういう時期は必ずあると思います。
独立する人へのアドバイス
自分がお金と時間に余裕ができたらどんな人生にしたいのか、出店はその目的までの通過点です。お店を出すことをゴールにしている人が多いですが「お店を出してその後に何をしたいのか」が大切です。
独立については目立つけれど、周りを見ると廃業するケースも多く独立はそこまで甘いものではないと思います。最初お金がないので、クオリティが低くても知識が浅くてもいいから、ホームページ制作や給与計算などなんでも、外注するお金ができるまでは自分でやってみるといいと思います。できれば、勤めている時間と心に余裕のある時に学ぶといいと思います。
その経験があると社労士の方に給与計算をお願いする時やホームページの制作会社に依頼をする時、共通言語で話せてどれぐらいが相場観なのか、何が当たり前で何を使うのか、ある程度わかった状態で話せます。
やらないといけないとわかってるのに、結局手つかずのまま終わってしまう人が多いと思います。やらないといけない部分を細かく因数分解をして一つ一つ愚直に対応するのみです。
頑張ってこれたモチベーションは?
僕は中高時代はこれといった成果を出せない劣等感がありました。高校3年生の時に、この業界は野球などのスポーツと違って専門学校からのスタートラインが一緒なので、自分の人生を変える最後のチャンスなのでは、と考えました。
「今売上が少ない」「1店舗しかない」と昔は悲観的に捉えてました。ただ、劣等感をエネルギーにして推進力にすることが得意な方なので、それを変換してガソリンに変えていく想いでここまで頑張りました。
店の状況になにか問題があったとしても絶対放置しません。現状を正確に把握し原因を見極め、最適な改善策が出るまで話し合い、考え抜き、とにかく実行して、仮説と検証を繰り返す。解決までのフレームワークを丁寧に積み上げていきます。
サロンについて教えてください
コンセプト
「一番自分がなりたい自分でいられる場所」にしたいと思っています。実際にお客様に言っていただいたこともあり嬉しかったです。お客様にとって職場でも家庭でも出せない話を吐き出せるし、理解してくれる人がいる場所が僕はバーバーだと思います。
基本的に男性は、職場だと部下や上司の目や評価を気にして発言しにくかったり、家庭ではプライドもあるので愚痴を言いたくなかったりするんです。そういうの全部捨てて、最近のことをフラットに話してくれるような場になってくれればいいなと思います。
実際それを求めている方たちがリピートしてくれてるんじゃないかと思っています。行きつけの毎月いけるサードプレイスという存在だと思います。
予約を取ろうと思った瞬間から当店の顧客体験の始まりだと思うんです。僕らの職種はお店もスタッフも知らないのに事前にメニューや金額や支払いが確定している世界だし、来店した時点でお金をいただくことが確定しているとも言えます。
僕らにはお客様に満足して帰ってもらう義務が絶対あると思います。金額以上の価値を感じられるサービスをする責任感って絶対強く持っておくべきなんじゃないかな、と僕は思っています。
なのでお客様の肌に直接触れる部分というものは妥協しません。美容室との差別化でいうと、シャンプー台まで移動することがなく、来店から退店まで席から立ち上がることはありません。
接客時の心がけ
当たり前のことですが、「お客様が何を求めているか」を見極め提供することです。スタッフにもお客様が値段以上の価値を感じてくれるか、常に模索しながら接しましょう、ということを一番伝えています。
お客様がお喋り好きじゃない方でも、スタッフによってはお喋りが好きな人がお構いなしでマシンガントークしちゃうサービス業の方とかもいると思うんです。それって居心地がよくないと思うので、当店はお客様のご来店時の状況に合わせて接客のスタイルもカスタマイズしています。
何もせずにゆっくり空間を楽しんで、鏡の前の自分の変化を楽しんでるような方には話しかけないとか。臨機応変にそのお客様に合わせて接客と技術とサービスを提供しようね、というのは常々スタッフに伝えています。
多店舗出店は独立時から考えていたんですか?
>KINGSMAN TOKYO店舗一覧独立時に漠然と「いつかできたらいいな」くらいに考えてはいましたが、具体的に計画はしていませんでした。最初はリスクを減らすためにデータ収集してPDCAの繰り返しで、実際いけるな、ということが見えて現実味が帯びてきました。
自社に溜まっているデータを元にしか正確な経営の意思決定ができないと思っています。そうしないとギャンブル性が高くなってしまいます。定量的にデータを見て実際どうだったのか、から僕は戦略を立てます。
2店舗目の出店では、来ていただいた方のカルテの住所を一覧化しロイヤルカスタマーの傾向分析を行いました。Googleマップにデータを入れて、エリアごとの顧客の偏在を可視化しました。
多摩のお店でも意外と調布や立川から来ている方が多かったんです。シンプルにコンセプトが良いからわざわざ通っていただいている、近くにあれば喜ばれるんじゃないか、という仮説が立てられますよね。なのでデータを元に立川に出店を決めました。
実際に立川への出店の反響は思っていた通り。もともと立川から多摩に通っていただいていた方が立川店に来てくださるようになりました。
その分、多摩本店で新規のお断りをしていたお客様を受け入れられるようになりましたが、それでも満席が続きお客様があふれていました。多摩の近隣に路面店ではないですが、広いスペースの3店舗目となる「多摩センター2nd 店」を出店しました。本店で集客ができているので3店舗目は初月から黒字でした。
多店舗出店しても、創業当初から大事にしているポイントは大きくは変わっていませんが、やっていく中で試行錯誤でうまくいった、うまくいかなかったことの蓄積から経営者として判断力がついてきていると思います。
当店にコンサルなどはいませんが、先にうまくいっている方の情報収集を今の時代はありがたいことに簡単にできます。こうなりたいという経営者の思考や考え方を勉強しています。自分よりワンランク上の人をベンチマークしています。
- 無料掲載のGoogleマップで集客
- 近隣店舗より目立つ予約ボタン表示
- リザービアご契約者様は無料利用可
- 予約はリザービアで一元管理
リピーター獲得のために工夫していることはありますか?
元々自分がプレイヤーだった頃、どうやったら自分のリピート率=顧客満足度があがるのか考えていました。「この人に切ってもらって良かった」「この人にお願いしてよかった」という状況になることが必要で、数値的に可視化できていることから判断していました。
なので、リピート率だけでなく失客をしたお客様の傾向をみるように1年目から行っていました。カルテにはヘアスタイルを記録することが多いですが、僕はコミュニケーションの内容を記録しておき、失客時に検証や分析を行うようにしています。リザービアはタブレットも使えますし音声入力をして1分程度で十分な情報を残すことができています。
何がうまくいって、何がうまくいかなかったのか、僕がカルテ見て振り返ることを徹底しているのでスタッフ全員やっています。マメと言われますがめんどくさがりな性格だからこそ、どうやったら効率よく、最短最速でより良いサービスに繋がるものができるのか考えます。
予約システムリザービアで一番気に入っている機能は何ですか?
>KINGSMAN TOKYO 多摩センター本店 予約ページ自分が現場でハサミをもつプレイヤーだった時は、サロンワーク全体の流れにおける全てのことができるので、何も不便なことはないな、と思っていました。個人的にはお会計時に「次回予約ボタン」機能が即リピーターに繋がるのでありがたかったです。
経営者として他社と比較してすごくいいなと思うところは圧倒的に分析です。マーケティング思考の人が開発したプロダクトだと思います。「こんなデータが欲しい」となった時に叶わないものはほとんどないです。新しい事業の意思決定の材料として圧倒的に強いな、と感じています。
あとは、リザービアの電話の窓口にすぐに繋がって細かな点まで回答をしてくれるところです。自らネットで調べられない人がこの業界は多いと思うので、電話で聞けるのは大変助かってます。
社員にSaaS系システムや新しいことを浸透させる時は、機能の説明はせずに未来の説明やイメージを持ってもらうことを意識しています。具体的に今不便に思っていることや困っていることが解決するというイメージを持ってもらうと伝わりやすく、みんな進んで使ってくれるな、と感じています。
人材育成、求人について行っていることはありますか?
コーポレートスタンダードブック
最近、企業理念や方向性をまとめた「コーポレートスタンダードブック」というのを社内に発行し全社員に配布しました。自分が何のために立ち上げたのか、誰のために立ち上げたのか、なぜこの事業をやっているのか、のようなことをまとめました。
うちの会社にとっての当たり前や大事にしてるところを明確にして、何をもとに意思決定してるか共有しました。僕が感覚的にずっと大事にしていることはありましたが、社員の目に見えるかたちではなかったので作成しました。
三方よしの経営って言って、本当に僕は社会に社会貢献できるのか、うちの会社の社員にどれだけ良いのか、お客様に貢献できるのかっていうことを考えて経営判断しています。これが1個でも不在になるような、お留守になるような話はやらないです。
どんなに僕らがかっこいいと思って納得できても、社会的に駄目だよねってことは絶対やらないです。お客様は喜んでいるけれどスタッフに過度な負担がかかることも、継続しないのでやらないという判断をします。
スタッフ育成
社員の早期育成を一番念頭においています。僕はやっぱり自分のお客様がいて指名してくれて髪切ってるのが楽しいと思います。もちろん技術においては妥協は駄目だと思うので、どれだけ最短で技術を最大化させるかだと思います。最短で技術を最大化するために全額会社負担で社員全員ウィッグ切り放題をやってます。
あとは、自社内のオンラインサロンがあり、技術指導の動画にコメントが書けるので、先輩たちが残した疑問も後輩が見れるようになっています。店に残って遅くまで練習しなくても自宅で技術向上に励める仕組みをつくっています。
求人
今在籍している社員からの口コミで自然と学生が働きたいと言ってくれています。なにかご縁があって、KINGSMANに来てくれた以上は一緒にいい人生にしよう、という責任感を持って対応しています。
面接は面談と見学を先にさせていただきます。お店の見学をして僕との面談をしたりする中で、うちの会社として大事にしてるものは何か、大事にできる人には報酬と機会を与えられること、どういう人たちが評価されるか、という人事制度も伝えます。これから面接を受けるかどうかもわからない会社に見学・面談に来た人に僕が直接説明します。
社員の離職は「思ってたのと違う」から起こると思います。ギャップをいかに入社前になくすかを大事にしているので、離職するスタッフはほぼいません。
昔と比べると「独立、独立」と言っている人は減ってきている印象を持ちますが、将来を考えた時のなんとなくの不安を持っているように感じます。独立だけではなく、働きやすさや自由が持てる手段を持ちたいと考えている人が多いので、成長の機会やフェアな評価の場を提供しています。
吉田様の今後の目標や将来のビジョンを教えてください
20代で安定した年収1,000を万稼ぐ理容室オーナーを100人作っていく
規模や利益を追いかけなくて良いと考えています。今の収入が10倍になっても僕の人生の幸福度は10倍にならなくなってきています。規模とか利益ではなく、お客様満足度・社員満足度といった質の向上を求めていきたいです。
定量的にわかりやすく「20代で安定した年収1,000万を稼ぐ理容室オーナーを100人作っていく」というビジョンをお伝えしていますが、お客様満足度・社員満足度を上げていけば結果としておのずと規模が増えて、数字があって利益がある、という視点です。結局社員の幸福の満足度を上げていくところの先に見えている世界だと思うので、三方よしをやるのみです。
今キングスマンはFC事業をやっています。マーケティング、ブランディング、自社で蓄積されたノウハウ全部、さらに経理や人事労務などのバックオフィス全般も全部本部がやります。物心両面で豊かになる仕組みで自分のビジョンに共感する人と働いていきたいです。
- 紙カルテを辞めたい
- 在庫管理を自動化したい
- レジ締めを楽にしたい
- リピート率を上げたい
インタビューを終えて
今回インタビューをさせていただき、過去の数字・目の前のお客様と向き合いより良いサービスを提供する努力をするからこそ、それがお客様にも伝わりリピートに繋がっているように感じました。また、出店はゴールではなく理想の人生の通過点であり、自分の人生のビジョンからくる経営判断の大切さを学びました。
自分がどんなお店づくりをしていきたいか、お客様、従業員、社会をどうしていきたいかを考えて言語化して波及させていくからこそ、その価値観が周りに伝わり実現していくのだなと感じました。
吉田様、KINGSMANの価値観を受け継いだ店舗が今後も増え、豊かな理容室オーナーがさらに輩出されるよう、リザービアも応援させていただきます。
取材を快く承諾していただいた吉田様、貴重なお時間を本当にありがとうございました!
リザービアでは予約率のあがるメニュー作成、割引だけではないクーポン戦略、SNS運用など集客に関するサポートも行っております。下記フォームよりお気軽にお問合せください!