表参道にある Hair Salon TOH は、2021年8月のオープン以降、予約が絶えない人気の美容室です。
TOHで代表を務める石原 慎太郎さんは、表参道・原宿エリアの有名店で20年以上のキャリアがあり、業界紙やファッション誌への出演も多数。KAMI CHARISMA AWARDでは、3年連続2つ星を受賞しています。
今回は石原さんに、お客様から支持を受ける接客のポイントや、自身の独立に関するお話を伺いました。
目次
シェアサロンではできない「全員が担当」のサロン。激戦区で磨き上げた経験を活かす
Hair Salon TOHは、どのようなコンセプトを持つサロンでしょうか

Hair Salon TOHには、サロン全体でお客様を接客するというコンセプトがあります。
通常、美容室の接客は、お客様と担当美容師の間での個々の接客になりやすいですが、当店ではスタッフ全員がお客様の担当者と呼べるような雰囲気づくりを心がけており、2回目3回目の来店でも、スタッフ全員がお客様を知っているようなアットホームな空間を提供しています。
美容師さんのカッコよさも重要かもしれないけど、作るもののカッコよさが1番重要です。そのためお店も、殺伐とした雰囲気ではなく、優しさやあたたかみを感じていただける雰囲気づくりを心がけています。
近年ではシェアサロンが増えて、美容師の働き方は多様化しています。ただ、お客様のライフスタイルに寄り添い、ポジティブな変化をつける仕事は普遍的だと考えています。なので当サロンのコンセプトは、シェアサロンにはない強みだと思います。
スタッフの技術にもこだわっていますが、サロンに技術があるのは当たり前です。
その上で、私たちのサロンは、様々なお客様の要望にフィットできるスタッフが揃っていて、他とは違うアプローチができるサロンであると思います。
技術について詳しく教えてください。どういった部分で違いが生まれるのでしょうか

これまでの美容師としての経験で、持っている引き出しの多さが強みとなっているのがあると思います。
お客様との距離感であったり、技術のアプローチに違いが生まれてきます。
たとえば、付き合いの長いお客様であっても、年齢やライフステージの変化によって、求められるスタイルや、接客のアプローチは変わってきます。
お客様を飽きさせないための、技術や経験は、表参道・原宿で21年間、エリアを変えずにやってきたからこそわかる部分もあると感じています。
このエリアは、昔はもっと勢いがあったかもしれませんが、原宿は今も変わらずカルチャーを発信する場所だと思いますし、そこから何百メートル離れただけで違う雰囲気を持つ表参道にも、ここにしかない空気が流れています。
ここで美容師を続けていくのは、正直大変なことだと思います。時代に合わせて変化をつけていく部分と、変えてはいけない部分のバランスを取りながら、今日までこの場所でサロンを続けていることが、強みと言えると思います。
タイミングの見極めがリピートの要。接客の基本は謙虚で居続けること
石原さんは、長年にわたってお客様から高い支持を受けています。リピート予約を獲得するための秘訣を教えてください

お客様の心理として、若い頃から同じサロンに通っていると、どこかのタイミングでサロンを変えたくなることもあると思うのですが、私のお客様はありがたいことに、何年も前から今に至るまでずっと来てくださっているお客様が多くいらっしゃいます。
長く来ていただくためには、タイミングを見逃さないことが大切です。
お客様が変わりたいと感じているタイミングを見つけて、そこをどうつついて、お客様に満足していただくかが美容師の腕の見せ所だと感じています。
昔と異なり、今は一回の接客でお客様の心を掴まないといけない難しい時代ですが、失客さえしなければお客様は増えていくので、長く来てくれているお客様を大切にすることがリピートを獲得する秘訣だと思います。
別媒体のインタビューで、接客の重要性について触れられているものを拝見しました。石原さんがお客様と接する上で意識している点を教えてください
根本的な人との関わり方は、時代によって変わるものではないと思います。
相手に寄り添い、横柄にならず、謙虚な姿勢で居続けるということは、仕事に限らず対人コミュニケーションで大切な点であると感じています。
美容の仕事は、人がメインの職業です。
美容室という空間も、関わるお客様やスタッフにとって、感じのいい場所であったほうが良いはずです。

よく若いスタッフには、「今後、少子化で人が増えていかない中で、いかにファンを付けていくかが重要」という話をしています。
美容師はお客様が離れるのも早いですが、ファンがつくと離れない職業です。
表参道は簡単な街ではないですが、一度お客様がつくと離れない街だと、長年の経験から感じています。
注目を浴びながら謙虚で居続けるのは大変だと思います
もちろん大変です。ただ、失客に陥る原因は、仕上がりの満足度などの要因もあると思いますが、どちらかというと美容師がお客様と信頼関係を築けているかどうかにあると思っています。
この業界でありがちなのが、美容師が注目を浴びるに連れ、立場が上がったと錯覚してしまうケースです。
美容師は発信が求められる仕事ですし、人気になるとメディアに出る機会もあり、注目を浴びることもできます。
ただ、それで人が変わってしまうと、結局美容師として長く続かないと思います。
当たり前のことですが、今まで支持してくれていたお客様の目線で見ても「あの人は変わってしまった」と感じられて、離れていってしまうのではないでしょうか。
良かった部分が変わってしまったり、時代に適応できずアップデートできていない部分がお客様に見えることで、失客に繋がっているケースはとても多いと感じます。

自らを客観視できているかどうかは、競争の激しいエリアにいる上では特に重要な点だと感じます。
表参道にいると、自分がまだ大したことないのに、一人前になったかのように錯覚してしまいますからね。自分が中心、みたいに感じてしまいがちなんです。
ただ当然ですが、サロンの中心は美容師ではなくお客様です。
我々の仕事はクリエイターであると思うのですが、あくまで接客をし、クライアントがいないと成り立たない仕事ですので、そこは勘違いしてはいけない部分だと感じています。
人気サロンのオーナーの方にお話を伺うと、皆さん謙虚な方が多い印象を受けます

接客が技術の押し売りみたいになってはダメです。そこの距離感が、美容師のうまさだと思います。
技術は確かに上手かもしれないけど、お客様にとっては、技術の細かな部分は関係ないじゃないですか。
こちらから細かい部分の技術を見せることって、あまり重要ではなくて、お客様にとっては仕上がりが良ければその形がベストなんです。
この距離感の測り方、詰め方というのは、経験によって生まれるものだと思います。
充実したキャリアの中で、独立を決意。変わらない支持を集める
石原さんのもとに訪れるお客様は、どのようなサービスを求める方が多いのでしょうか

他のサロンに行ったけど、満足されなかったというお客様に頼っていただくケースが多いです。
傾向としては、わかりやすいものよりも上質なものを好まれて、その上にプラスして個性があるスタイルを求められる方が多いですね。
やっぱり、若いうちはどんなヘアスタイルも似合うし、パっと切ったら終わりでもかわいいしカッコよくなるんです。
ただそこから段々と大人になるにつれて、補正する場所が増えたり、似合わせが難しくなるので、そこに対応するにはスタイリストの経験値が必要です。
たとえば、有名ブランドの服には、身にまとうとパターンが良く、その人の魅力以上のものを引き出せるような形の良さがあると思います。
そのような、お客様の魅力を引き出すスタイルを実現する技術は、スタイリストとして私が前職のサロンから引き継いだ部分であり、自信を持っています。
今は新規顧客をどんどん回していくタイプのサロンも多いと思いますが、それよりも1人のお客さんとどれくらい長く付き合っていけるかを追求するのが自分のスタイルで、そのスタンスはブレないようにしています。
私のお客様も、そういった部分を支持してくださる付き合いの長い方が多いです。
表参道・原宿エリアの有名店で充実したキャリアを重ねる中で、改めて独立・開業を決意された背景を教えてください

たまたま開業のタイミングがコロナ禍となってしまいましたが、かねてから新しいことに挑戦したいということは、当時勤めていたサロンの社長にも話していました。
その上で、やらないよりもやって後悔した方がいいと思い、開業を決意しました。
開業したエリアは表参道で、以前の勤務先とも近いエリアなのですが、これは勤めていたサロンの社長の理解もあってのことで、以前の勤務先とも良い関係性の中で独立することができました。
今になって思うと、独立するのに速さや年齢ってそんなに関係ないと思います。
若くして独立するメリットもあると思いますが、重要なのは時代に合わせたアップデートをできるかどうかです。
年齢を重ねると、それが難しくなってしまう面はあるのですが、私は独立前に変えていく部分と変わらないでいく部分を整理し、線引きした上で独立したので、後から迷うこともなく、うまくいったと思います。
独立後に、ポジティブな変化を感じることはありましたか
考えたことを実行するまでのスピード感は、独立後の方が早いと思います。
以前は大きい組織にいたので難しい部分もありましたが、独立後は、スタッフみんなで今日考えたことを今日できる小回りが利く部分があるなと実感しています。
あとは、お客様のために、サロンが提供できることを柔軟に変更していける部分は強みと感じています。
逆に言うと、元いた組織の良さもあるので、独立の強みを感じた部分は、この2点くらいですね。
オンラインの導線を意識し、予約システムの導入を決定
Hair Salon TOHは店舗もさることながら、WebサイトやSNSも洗練されています。こだわっている部分はありますか
WebサイトやSNSは、導線を意識した設計を心がけています。
継続しているアクションとしては、WebサイトやInstagramでの新規顧客獲得に向けた発信と、既存顧客に向けて公式LINE経由で月1程度でお客様に向けたメッセージの配信を行っています。
現状は、既存のお客様のリピートで予約が埋まってしまうので、ポータルサイトは活用していませんが、ゆくゆくは若いスタイリストが育ってくるタイミングで導入することも視野に入れています。
リザービアを導入したのも、先々を視野に入れて、ポータルサイトと連携がしやすいシステムを導入した経緯があります。
Hair Salon TOH様には、開業当初から予約システム リザービアをお使いいただいています。導入いただいた理由を教えてください
元のサロンでもリザービアを利用していたのが理由としては大きいですが、決め手となったのは他媒体との連動が便利な点です。
特に若手スタッフのことを考えると、クーポンサイトやGoogle、Instagramからの予約をまとめられるシステムを用意しておくことは重要だと感じています。
正直、リザービアに慣れている部分もあるので、予約システムを変えるのは難しいですね。
独立時に慣れているものを使えたので、予約システムを変更するめんどくささがいらなかったのも良かったです。
あとリザービアは、サポートスタッフにチャットで気軽に問い合わせできる点も気に入っています。
最後に、石原様とHair Salon TOHの、今後の展望をお聞かせください

Hair Salon TOHは、育成型のサロンだと考えており、まずは自分がチームに足をつけて、コアな部分を固めて、組織の骨密度を高めていきたいと考えています。
スタッフが徐々に育っていけば、お客様も自然と増えていき、お店もだんだん大きくなっていくと考えています。
そのために、身近なスタッフを大切にし、スタッフみんながいい形でお店にいてもらえることで、お客様も増やしていき、10年20年とお店を続けていければ理想的ですね。
個人的な展望としては、いつまでもお客様とスタッフに信頼される自分でありたいと思っています。
組織って、役職によってピラミッド的な構造にはなると思うんですけど、うちは1,000人規模の組織とかでもないですし、私自身もメンバーもそこまで意識する必要はないと思っています。
それよりも、スタッフに信用されることが重要です。距離感が近すぎてもダメだと思いますが、嫌なことはスタッフにまかせて自分は遊びにいっちゃう、みたいな働き方は一番良くないと思うんですね。一応僕もプレイヤーですしね。
現場に自分がいることで、スタッフに良い影響を与えられるようにしたいですし、お客様からもいずれ求められなくなる時が来るかもしれませんが、ありがたいことに今はたくさんのご指名をいただけていますので、信頼をいただけているのかなと感じています。
何よりまだまだこの仕事が好きなので、続けられる限り続けていきたいですね。
編集後記
今回、Hair Salon TOHに訪問し、圧倒的な経歴を誇りながら、謙虚でいる石原さんの人柄の素晴らしさに感銘を受けました。
流行の最先端である表参道の、洗練された店舗のなかで、アットホームな温かみを感じられる理由は、石原さんを始めとしたスタッフの皆様の心配りや、プロとしての高い接客意識があってのものだと感じました。
Hair Salon TOHでは、現在中途スタッフの募集を行っています。


